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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
十一章・反逆者は『龍』と対峙する

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反逆者は殲滅龍と競り合う

 


 奇しくも、空中にて対峙する事となったシェイドとミズガルドオルムの両者は、対照的な状態となっていた。



 片や、『龍』としての特徴である、常時莫大な量が産み出される魔力を全身へと纏い、巨体を加速化してその身を一つの『砲弾』へと変化させて相手へと突っ込みながら、自らの最も頼りとしている牙とあぎとによって対峙しているシェイドの事を噛み砕こうとしている、大きな動きを見せる二段構え。


 もう片方のシェイドは、そうしたミズガルドオルムのやり方を知ってか知らずか、もしくは本能的に悟っているのか空中に作った足場から動くことはせず、その場で巨大な魔法陣を展開し、持ち前の膨大な魔力を遠慮も呵責も無くソレへと注ぎ込んで行き、自らの持つ固有魔術である【重力魔術】を、普段ならば省略する手順すらもそのまま踏んで強制的に威力を増大させる方向性にて術式を構築し、静かにミズガルドオルムを待ち構える。



 そんな、両極端な迄に対照的であった二人の拮抗状態は、当然の様にミズガルドオルムの手によって崩される事となる。


 とは言え、そう特別な事をした訳では無い。



 ただ単に、予備動作や取った作戦の関係上、先に動きを見せたのがミズガルドオルムのほうであった、と言うだけであり、先手を取って動きを見せたから、と言って今の処はどちらが不利な状況へと傾きつつ在る、と言う訳でも無いだろう。


 とは言え、通常の『竜』を遥かに上回る体長を持つミズガルドオルムが、その巨体を翼によって空中を駆けさせている、と言う光景は中々に荘厳にして見応えの在るモノとなっていたが、同時に『龍』として普段は秘めたる獰猛さと巨体を過不足無く緻密に操作する事を可能としている圧倒的なまでの筋力も同時に感じさせるモノともなっており、見る者に『感動』と『畏怖』と言った二つの感情を強制的に励起させるであろう光景となっていた。



 が、そうであったとしてもやはり魔族、と言うべきか、いざ準備さえ出来てしまえば一瞬にして優雅な遊覧飛行は取り止めとなり、後は如何にも『好戦的』な雰囲気を纏った巨体を魔力で覆いながら、大きく顎を開いた状態にて咆哮を挙げながらシェイド目掛けて突っ込んで行く。




『グオオオオオオオッ!!!!』




 最早大人と子供、だなんて生温い表現では適切に説明出来はしないために、敢えて「象と蟻」と言った方が正誤としては正しいのであろう程に体格差の生じており、その差は圧倒的な迄であった。



 ミズガルドオルムが敢行しようとしている『喰らい付き』も、自身と同等の大きさを誇る相手であればまだ見応えも喰らい応えも在ったのだろうが、今回は仮に見事に命中したとしても、確実に一口以下にしかならない為に、大した腹の足しにもならない、とも言える事だろう。


 もっとも、仮にそうなったとしても、食い付かれた時点で何かしら大きく身体が欠ける事になるのは間違いは無い為に、基本的には『その後』の事を心配する必要性は無い、と言えるだろう。何せ、大体の場合はソレで絶命に至るのだから。



 そうして一気呵成に攻勢へと転じて見せたミズガルドオルムに対してシェイドは、視線だけは相手から外す事無く固定しつつも、変わらずに魔力を背後に展開した大規模魔法陣へと注ぎ込んで行く。


 が、流石に時間が掛かりすぎるからか、それまで長々と唱えていた呪文の詠唱を取り止め、力強く、かつ主要な要素のみをその口へと登らせる、謂わば『無詠唱』では無く『短縮詠唱』とでも呼ぶべきモノを行使する。




「【(つぶ)れよ、(ひしゃ)げよ、()れよ、(こわ)れよ!

 我が手に在りしは、万物に抗う事を赦さざる力なり!等しく、平伏し、頭を垂れよ!!

【圧壊尖球】!!】」




 彼の放った言霊に従う形にて、彼の前方へと黒紫色の巨大な球体が出現する。


 ソレは、圧倒的なまでの魔力圧を放ちながらも、射出される事無く彼の目の前に浮かぶのみであり、まるで突っ込んでくる予定であるミズガルドオルムを待ち構えている様ですらあった。



 当然の様に、突撃体勢へと移行し、既に加速しているだけでなく、攻撃体勢へも至っていたミズガルドオルムにもソレの事は目に見えていたし、ソレが放つ魔力圧が自らの背筋が凍える程のモノである、と言う認識も持っていた。


 しかし、だからと言って加速を止める事も、攻撃を取り止める事もせず、依然として加速を続けて突っ込んで行く。



 最早左右に軌道を変える事が出来る速度域は超えてしまっているし、ブレーキを掛けたから、と言って容易く止まれる様な速度域でもまた無い。


 また、ソレに怯えて無理矢理止まったとしても、確実に数瞬は機敏な動作を取る事は叶わなくなってしまうだろう。そうなれば、既に準備されてしまっているモノが、自身に対して飛来する事になるだろう、と理解しているからだ。



 止まっては、一方的に攻撃される事となる。


 なれば、ダメージ覚悟でそのまま突っ込み、相討ちに近い形で在ったとしても、相手へもダメージを与える形に持っていった方が余程良い。



 そんな考えからミズガルドオルムは攻撃を中断する事無く突撃を敢行し、その(あぎと)にてシェイドの事を噛み砕かんと迫って行く!


 ソレに対してシェイドも、それまでは只の巨大な球体、と言った風であった魔術を変形させ、常にミズガルドオルムの方へと向いていた一点を垂として尖らせると、その突撃を受け止めて逆に撃滅してやろう、と待ち構える!



 ━━━━そんな両者の激突は、意外な程に静かに行われた。


 …………いや、より正確に表すのであれば、静か、と言うのは些か表現としては適切では無かった、と言えるだろう。



 何せ、二人が激突した衝撃によって半死半生の状態にて放置されていた魔族側の軍勢はその大半が吹き飛び、絶命に至ってはいないもののその殆どが文字通りに『戦闘不能』となっていた。


 それだけでなく、そうしてもたらされた衝撃波に遅れる事数瞬の後に周囲へと響き渡った耳をつんざく轟音は、よもや天上の神々による最終戦争でも勃発するに至ったのか!?と言わんばかりのモノであり、耳にした者に対して強制的に心理的な重圧を掛けてくる程のモノでもあった。



 …………では何故二人が激突し、剥き出しにされた牙と、円錐形へと形を変え世界に孔を開ける程の超重力を一点へと集約させている元球体がぶつかり合っている中心地に於いては寧ろ無音に近い状況となっているのか?


 ソレは、両者の激突によって生じた衝撃波が凄まじすぎて、彼らの耳にまで音が届く事が出来ずに弾かれてしまうから、だ。



 静かな水面に一滴、二滴の水滴が垂れただけであれば、その美しい波紋は誰の目にも明らかなモノとなるだろう。


 しかし、ソレが十滴、二十滴、いや百滴、と増えてしまえばそれらの波紋は互いに干渉し合って部分的に打ち消し合い、波紋が歪み果てるだけでなく、その果てに平素と変わらぬ静かな水面を見出だす事も出来るかも知れない。



 が、ソレはあくまでも『多重干渉の果てに凪いでいる』と言うだけであり、実際に水面が静まっている訳では無いのだ。


 その証拠に、と言う訳では無いが、シェイドとミズガルドオルムの両者の鼓膜は確実に音としては捉える事が出来ない『何か』によって叩かれており、その耳穴からは両者の回復力を上回るだけのダメージを受けている証拠として鮮血が流れ落ちていた。



 …………もっとも、そうやって受けたダメージから流血しているのは共に耳からだけ、と言う訳で無い。寧ろ、流血していない場所を探す方が難しい状況となっている。


 更に言えば、彼らがダメージを受けているのは発生した衝撃波を浴びているから、と言う訳では無い。割合で言えば、ソレで受けているモノなんて本当に『些細なモノ』であると言えるだろう。



 それほどに、今なお続く両者の激突は、二人に対して大きなダメージを与え続けている、と言う訳だ。



 何度も言う様だが、ミズガルドオルムは、自身の身体を使って直接体当たりをする様な形にて、攻撃を敢行している。


 であれば当然、幾ら莫大な魔力によって身体を覆い、攻撃としての威力を上げると同時に防備している、とは言え、歴とした意志と術式によって編まれている魔力の塊であるシェイドの魔術にその身を突っ込ませて、無事でいられるハズは無く、自慢であった鱗は割れ砕け、皮や翼膜と言った部分にも多大に裂傷が確認できてしまっている。



 反って、ではシェイドの方はどうなっているのか?と言えば、やはり彼も少なくない影響とダメージを受けている。


 何せ、自身で編んで放っているとは言え、かなりの量の魔力が注ぎ込まれた大規模術式相当の魔術が間近で発動し、その上でソレと互する程の魔力圧を放つ存在と鍔迫り合いを行っているのだ。その余波を浴びずに済むハズが無いし、浴びて無事で居られる程にまだ人間を辞めている訳でも無いのだから、当然の様に全身を焼かれて鮮血で赤く染め上げる羽目になってしまっていた。



 物理的な存在であれば問答無用で粉砕したであろう速度と質量を持つ砲弾突撃と、超重力をその矛先に集約させて次元の壁すら貫いて孔を開ける事を可能とする死の円錐。



 どちらも決まれば下手な街ならば一撃で消し飛ぶだけの破壊力を持ち、ほぼほぼ『絶死の一撃』と呼べるだけの威力を込められた攻撃が一点とは言え競り合いを続ける事は、互いに込められた魔力と言う名のエネルギーの量からして長く続けられる事は難しかったらしく…………




『…………くっ、ぐぁぁぁぁあああああっ!?』



「くそっ!?がはっ!?!?」




 …………最終的には、両者によってもたらされた莫大な魔力は『暴発』と言う形にてシェイドとミズガルドオルムの至近距離から周囲へと吹き荒れる事となり、周囲へと解放されて吹き荒れた魔力は最も近くにいた二人の身体を引き裂いて行く事となるのであった……。




ROUND1・draw

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