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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
十一章・反逆者は『龍』と対峙する

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反逆者は殲滅龍と相対する

 


 ━━━━断続的に続けられていた攻撃が止み、結界越しとは言え視界が確保出来る様になった彼の目にまず写ったのは、荒野となった周辺の光景であった。



 結界にて結果的に守られる事となっていた足元の状態から元々は草原の類いであったのだろう、と予測していたシェイドであったが、実際に彼の目の前に広がった光景としてはそんな牧歌的でも平和的なモノでも無く、焔によって炙られて大地が焼け焦がされ、所々にその残滓が辛うじて散見される程度と成り果ててしまっている、荒野のみが広がっていた。



 しかも、それに加えて辛うじて、ではあったが、元々は人であったのだろう、と思われる『残骸』がある程度固まって存在しており、今も紫色をした残り火がチロチロとそれらを嘗め回して崩壊への一路を辿らせており、放たれた攻撃の威力がどれ程高かったのか、を窺わせるモノとなっている。



 ついで、大きく視線を遠くの方へと投げ掛ければ、ソコには何となく見覚えの在る様ななだらかな地形が展開されている。


 何処で、何時見たのだったか……と記憶を辿れば、数ヶ月前にアルカンシェル王国を後にする際に見た地形と酷似している、と言う事が思い出される事となった。



 そして、視線を前方へと向けて見れば、ソコには見覚えの在りすぎる程に在る人影が、こちらは全くもって見覚えの無い巨大なモノの隣に佇んでいる姿が飛び込んで来た。


 見覚えの在る人影ことズィーマは、以前会った時の冷静な表情とは裏腹に、今回は驚愕の表情を張り付けた状態にてこちらへと視線を送り続けていた。



 もう片方の巨大なモノは、遠目に見る限りでも巨大だと言う事が分かる『竜』であり、確実に先日戦って下した『百年竜』よりも遥かに巨大である事が容易に察する事が出来た。


 しかも、その鱗だけでなく、体表、と呼んで差し支えは無いであろう場所の全てが紫色をしていた為に、恐らくは魔族の類いなのだろうな、とシェイドは当たりを付けて行く。



 そうして周囲を含めて観察し、予め得ていた情報から大体の状況に当たりを付けていると、俄に彼の周辺が騒がしくなり始める。




「…………そ、そんな……!?アレだけの規模の攻撃をしておいて、全く消耗した様子が無いだなんて……!?」



「シ、シェイド!?なんで、アナタがここに!?

 …………いや、そんな事はどうでも良いから、早くワタシ達の為にアレを倒しなさいよ!?アナタ、その為にここに来たんでしょう!?」



「…………そ、そうだ……!

 お前が、どうやってここに来たのか、これまで何処で何を勝手にやっていたのかは、この際不問にしてやる……!

 だから、俺の仲間としてこの戦いに、参加するのなら、俺の指示に従ってあいつらを倒すんだ……!それが、俺の仲間(部下)として参加する為に、過去の行いを水に流す為に必要な事だと思え!!」



「……ちょっ、ちょっと、勇者様もベラ姉も、何言ってるの!?

 お兄ちゃ…………シ、シェイドさんが何でここに来てくれたのかは分からないけど、それでも言って良い事と悪い事が在るの位は、アタシにも分かるよ!?それに、もうシェイドさんはアタシ達にはなんの関係も無いじゃない!

 そんな言い方しなくても良いでしょう!?」



「………………そ、そうですよ!貴方達は、いったい何を言っているのですか!?

 偶々、本当に私が貰っていたネックレスが効果を発揮してしまったから彼を巻き込んでしまったと言うのに、彼が私達に協力するのが当たり前、だなんて恥知らずな事を、良くも言えたモノですね!?

 それに、ベラちゃんも、貴女自分が何を言っているのか理解しているのですか!?これまでの自分の態度を反省している、と言っていたのは、嘘だったと言う事で良いのですね!?

 殿下からも、何か言って下さい!」




 視界が晴れた事により、この場に誰が居て、どうして助かったのか、を知る事が出来た上で、どうしてこうなったのか、と言った事柄についての元凶まで視界に戻って来てしまったが故か、敵対している相手が消耗した様子を見せていない事に絶望する者、突如として現れた彼の事を利用しようとする者、かつて彼へと向けていた態度を一変させて償おうとする姿勢を見せる者、と言った具合に、彼の周囲は混沌とした状態となってしまっていた。


 …………これも、防御結界によって相手方から放たれているであろう魔力圧すらも防いでしまっているが為に、余計な方面で元気さを発揮される事となってしまった、と言う事なのだが、一々そんな事を気にしていなくてはならない程に貧弱な心根をしている訳でも無いし、また気にしてやる時間が勿体無い、と感じていた彼は、それらの声を()()()()()()()()()と、一歩前へと進み出る。



 突然の彼の行動は、手前側へと引き寄せていたシモニワを跨ぎ越えても止まる事は無く、自らが展開した防御結界の縁の部分に至るまで止まる事は無かった。


 その為に、形としては、彼が結界の中へと招き入れた者達を揃って背中に庇う形となってしまっていた。



 それを目の当たりにしたからか、何かしらの勘違いかもしくは自分達にとって都合の良い方へと解釈したのかは不明だが、再び他の連中(シモニワ達)が騒がしくなった為に、彼は応答してやるのも面倒臭い、と言う態度を取りながらそちらを無視して顔見知りであるズィーマへと向けて言葉を投げ掛け始める。




「よぅ、久し振り。

 そうしてる処を見る限りだと、元気にしてたみたいだな?」



「…………うむ、久方ぶり、と言う事に間違いは無いだろう。

 だが、一体どう言うつもりなのか?何故、貴殿はここに居る?我らと敵対するつもりは無い、と言っていたのは嘘だった、と言う事か?」



「ソレに関しちゃ、俺は今でも敵対しているつもりは無いぜ?尤も、ソレには『まだ』って冠が付く事になるがな」



「…………その、意図を問うても?」



「あぁ、構わんよ。

 と言っても、割りと俺の立ち位置は単純さ。

 ただ単に、念のため、と思って渡しておいた魔道具が発動してこっちに無理矢理喚び出された、ってだけだからな。特別こいつらの仲間として参戦する、だなんてつもりは毛頭無い」



「………………だが、大人しく引き渡して貰える、と言う訳でも無いのであろう?

 貴殿がそこに立ち、我らと相対している、と言う時点でそうなのであろう、とは予想出来ているが、な……」



「まぁ、それもそうなんだがね。

 厄介かつ因果な事に、俺は後ろに居る連中の一人と以前『一回だけどんな危機からでも助けてやる』って約束をしてしまっていてな?」



「…………故に、守る、と?」



「まぁ、そう言う事だ。

 もちろん、こいつらの事は諦めて目的地に対して邁進する、って言うのなら話は別さ。そっちは邪魔しなくちゃならない理由は無いからな」



「「「…………っ!?」」」



「…………なれば、その『約束した相手』とやらを指名せよ。

 さすれば、その者だけは見逃す事も出来なくは無い」



「でも、どうせ他の連中は皆殺しにするんだろう?

 流石に、もう既に切れてるとは言え、昔馴染みだったヤツも居るし、約束したヤツからすれば現役の仲間らしいからな。それはちょっと、寝覚めが悪くなりそうなんでね。

 悪いが、お断りさせて貰うよ」



「…………であれば、既に選択肢は一つしか無くなるぞ?良いのか?」



「まぁ、それは仕方無いだろうよ。

 俺も、向こうに残して来てる相手が居る以上、あまり取りたい選択肢じゃ無いけどな」



「なれば、尚更引かれよ!

 貴殿には、既に想う相手が居られるのだろう!?」



「「「えっ!?」」」



「それは否定せんし、ぶっちゃけ今すぐにでも帰りたい位だよ。なにせ、相手を待たせてる訳だからな。

 でも、だとしても、俺はオレが交わした約束は破らない。それが、俺が俺であり、それでいて奴らでは無い、って事の、何よりの『証』だからな」



「「「…………っ!!」」」



「…………だがっ!?」



『…………そこまでにしておけ、ズィーマよ。

 お主も、もう分かっておるであろう?あやつは、自らの意思と言葉を曲げぬ気質の持ち主よ。

 であれば、これ以上の言葉による説得は無意味、と言うヤツであろうよ』



「しかし、翁よ!?

 このままでは!?」



『良い。

 元より、彼のお方に近しい場所に在るこやつは、一度見定めねばならぬ、と思っておったのだ。

 ここで果てるのであれば、やはりその程度、やはりあのお方には人間性なんぞは相応しく無かったのだ、と言う事になろうぞ』



「…………しかし……っ!!」



「…………なぁ、ちょっと良いか?そっちで話を進めてくれるのは有難いし、別段後に禍根を残さないのなら戦う事にも不満は無いんだが、流石に俺はそっちのデカブツとは初対面だからさ。勝手に流れを決められても、少し困るんだがね?

 そろそろ、何処のどなたさんなのか紹介してくれても良いんじゃないのか?」



『………ほっ。

 そう言えば、お主に対しては未だに名乗りを挙げてはおらなんだか。見たところ、既に戦う事に対しての忌避は無く、寧ろ状態としては万全とも見受けられる。

 なれば、戦うに不足無し。名乗りを挙げるに不満は無かろうよ!』



「…………あぁ、もしかして、そう言う文化な訳か?

 戦う前には、自分の所属と名前を明らかにしておくのが礼儀だ、みたいな?」



『かかっ!

 なに、古臭く無意味な事柄だ、と言う事は、嫌でも承知しておるよ。なれど、作法としては未だに廃れてはおらぬでな!

 では、魔王軍殲滅方頭『殲滅龍ミズガルドオルム』参る!

 お主を、あのお方に相応しき者なのかどうか、試させて貰おうぞ!!』



「無所属無名、一応は『英雄』だか呼ばれてるらしいシェイド・オルテンベルク!

 あんたの言ってる『あのお方』とやらが誰かは知らんが、俺には俺が選んで、向こうにも選んで貰ってる相手が既に居るんでな!年寄りのお節介は遠慮願おうか!!」



『抜かせ、若造!!』




 その言葉のやり取りを合図として、ミズガルドオルムを名乗った『龍』は大きくその場から一歩を踏み出して戦闘態勢を整え、シェイドは更に前へと踏み出して自ら展開していた結界から外へと踏み出してしまう。


 それにより、両者が放っている魔力圧が丁度中間にて互いに干渉し始める事で、文字通りに空間が歪み、天が裂ける事となって行くのであった……。




両雄、激突す

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― 新着の感想 ―
[一言] 娘さんをくださいお父さんvs君にお父さんと呼ばれる筋合いはない
[一言] 祝!200ページ!!!!
[気になる点] シェイドの弟子の再登場はあるのだろうか?もしあればシモニワはお役御免確定だろうな。
感想一覧
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