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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
十一章・反逆者は『龍』と対峙する

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反逆者は唐突に戦場へと喚び出される

 



「必ず、ここに戻ってくる。

 だから、ここで待っててくれ!約束だ!」




 そう、目の前で心配そうにしていたサタニシスへと向けて告げたシェイドは、次の瞬間には目を焼き貫く閃光に包まれる事となってしまっていた。



 大概の事象に於いて、既に人間を辞めつつ在る彼であったが、未だに許容量を超える様な光の類いにて目を貫かれたとしても平素と変わらぬ視界を確保する、だなんて事は事前の準備無しには叶える事が出来ていなかったらしく、素直に目を手で庇う形で翳す他に取り得る行動選択肢が存在せず、暫しの間同じ姿勢で固まる事を余儀無くされてしまう。



 そうしている間にも、こうなった原因の心当たりが在った彼は、どうせ何処ぞに強制連行されたのだろう、と当たりを付けて周囲へと魔力を放って探知を行ったり、気配を探って周囲の情報を集めようと試みる。


 …………が、そうする必要が無かった、と言える程に近しい場所に幾つかの覚えの在る気配を感じると共に、然程離れてもいない場所から極大の魔力圧が発せられている、と言う事を察知する事となってしまう。



 それは、つい先日サタニシスと共に討伐する事となった『百年竜』よりも更に強大なモノであり、これまで外敵として察知した事も経験が無い程に巨大なモノであった為に、思わず彼の背筋を冷たいモノが駆け降りて行く事となり、半ば反射的に防御用の結界を意識的に展開する事となってしまう。




(…………あ、やべっ……)




 咄嗟に展開した、と言う事と、未だに視界が回復しきらない状況、と言う焦りから、普段であれば最低限自身を守る程度の範囲に留めて展開する結界を、今回ばかりは普段よりも広く大きく発動させる事となってしまう。


 流石に、多少広く張ったからすぐ疲れてしまう、と言う事は無いし、かと言って敵対する意思を持っている、敵意を向けて来ている相手を内側に入れ込んでしまう、と言う間抜けをやらかすハズも無く、精々が視認できていないから『これは○○(誰々)だ』と認識している訳では無いにしても、取り敢えず覚えの在る気配のみが内側に入る様には展開されている様子であった。


 その事に内心でかいていた冷や汗を、恥を掻かずに済んだ、と安堵しながら心の腕で拭っていると、次の瞬間にはそれまで以上に魔力圧の高まりを感じ取ると同時に、展開した結界へと凄まじいまでの衝撃がもたらされる事となってしまう。




(…………おい、おいおいおいっ!?マジかよ!?)




 つい先日、『百年竜』の吐息を受け止めた時と遜色の無い程の強烈な衝撃に、思わず息を呑みながらも、半ば反射で結界へと向けて追加で魔力を注ぎ込んで強化を施すと同時に、様々な耐性を大急ぎにて付与して行く。


 以前、と言う程の時間は経っていないが、同じ様な事をしでかしてくれている相手と戦っていた経験が在ったが故か、今回は結界を破壊されるよりも先に有用な効果を複数付与する事が出来た為に、後は結界の強化と維持とに魔力を注げば良いだけであったので、今回は比較的楽、かな?と思うシェイド。



 そうして『竜』の吐息と思われる『何か』を受け止めている間に、どうにか焼かれてしまっていた目がその機能を回復させる事に成功したらしく、徐々にではあるが視界が白濁した状態から元のクリアな状態へと変化し始めて行く。



 すると、それに従う形にて、彼に最も近い場所に在った気配の持ち主の姿が、彼の視界の中へと写り込み始めると同時に、その豊満な胸元を首から掛けていたのであろう見覚えの在るネックレスと共に握り締めている、これまた見覚えの在る人物へと状況確認の意味も込めて言葉を掛けて行く。




「………………で、いきなり呼び出しておいて、この状況ってどうなってる訳なんだ?

 最低限、説明位はして貰えるんだろうな?」



「……………………え?シェイド、君……?」




 間の抜けた様な、幼さを感じさせる様な声色にて、彼からの問い掛けに応えるナタリア。


 その視線には、まるで『有り得ない光景を目の当たりにしている』と言わんばかりの驚愕と動揺とが強く滲み出している様でもあった。



 …………恐らくは、渡した本人であるシェイド同様に、あのネックレスが『本物である』とは思っていなかったのだろう。


 で、あるのならば、当然の様にその効果を期待して身に付けていた訳でも、万が一の場合に備えて準備していた訳でも無く、純粋に『御守り』の類いとして胸元に下げていたのだろうと思われる。



 恐らくは死の恐怖を目の当たりにしてすがる様に強く握り締めた際に、無意識的に魔力を流し込む様にしてしまい、その結果として渡していたネックレスが魔道具としての効果を発揮し、最終的に設定されていた効果(対になっているネックレスの持ち主を呼び出す)に沿って自身がこの場に召喚される事となった、と言う流れなのだろう、と言う推測を立ていた。



 間違っている可能性も無くは無いが、もしそうでないのであれば、ここまで呆然としつつも自身の登場に喚び出した本人が驚く事は無いだろうし、そこまで大きく間違っている事では無いだろう、と結論付けたシェイドは、ナタリアからの返答を待つ間に追加で魔術を発動させる。


 既に『防御結界』と言う形にて意図的にそこそこの規模で魔術を発動させている為に多重発動と言う形になり、多少なりとも負担は増える形となってしまっていたが、特に気にしなくてはならない程のモノでも無かった為に、離れている二つの気配を対象とし、手元へと引き寄せる形にて力場を発生させて行く。



 唐突に、かつ急速に引き寄せられる(当人達に取っては『引っ張られる』になるだろうが)事となった為か、戸惑いと混乱とが入り交じった様な短い悲鳴が聞こえてきた様な気もしたが、特に気にする事無くナタリアも居る周辺へと引き寄せて容赦無く地面へと転がすと、それに伴う形にて展開していた結界の範囲を縮めてしまう。


 これは、未だに掛かり続けている敵(恐らくは)からの『竜』の吐息めいた攻撃による負荷を減らす為の行動であり、また『万が一』の事態に備えての行動でもあった。



 現時点に於いて、攻撃を防ぐことには成功しているが、コレが広範囲攻撃だから防げているのか、それともピンポイントにて繰り出されている攻撃であっても防げているのか、彼には判断が付かない為に、取り敢えずより強固に守れる様に、という判断を下した為である。


 尤も、こうして展開している範囲を縮めてしまった方が実際に掛かる負荷も少なく、受け止めなくてはならない攻撃の規模も小さく出来る為に魔力の消費も少なくて済むし、何より同じ量の魔力を注ぎ込んだ場合、広く大きく展開している結界よりも、狭く小さな範囲に限って展開している結界の方がより強固なモノとなる、と言う事も無関係では無いと言えるだろう。



 そうして、彼が大きく展開しなくてはならなかった原因を引き寄せ、必要最低限の広さへと調整し終えた段階にて、自ら引っ張って来た対象である『三名』へと視線を向けるシェイド。


 その先には、背中に大きな傷を負って激痛に呻いているらしき何処かで見た様な黒髪の稀人と思われる青年と、何処かで見た覚えの在る様な、無い様な茶髪で『有り得ないモノを見た』と言わんばかりの視線を注いで来ている傷だらけの少女。それと、見た覚えは特には無い、重武装で重傷を負った騎士と思われる男性の三名が、彼の視界に入り込んで来ていた。



 …………正直な話をすれば、この三名に関しては、何となく覚えが在る気配の様な気が……?と言った感じがした為に助ける形となっていたのだが、シェイド本人としてはこうして視認した今であっても



『何となく見た覚えは在る気がするが、こいつら誰だっけか……?』



 と言った感想しか浮かんでおらず、正直誰なのかを特定できていない状態に在った。



 ……ついでに言ってしまえば、騎士っぽい人物(シュワルツ将軍)に関しては、直ぐ近くに『知っている様な気配』が在った為に一緒に保護しておいた、と言うだけであり、ハッキリ言って気配の段階でも既に『知らない誰かさん』と言う程度の認識しかされていなかったりする。



 そんな訳なので、取り敢えず自分をこの場に喚び付けたであろうナタリアを相手に問い掛けているのだが、イマイチハッキリとした応答が得られていない。


 恐らく、前述した通りに『本当に出てくるとは思っていなかった』と言った処であり、シェイド本人なのかどうか、と言った事への確証が無い事と、突如として姿を顕にした事に対しての混乱が解けていない為に応答が失くなってしまっている、と言った処なのだろう。



 …………自分が想定していなかった事に突然直面すると、混乱して固まってしまうのは昔から変わっていないな……。



 そんな風に昔を懐かしむ様な思考を飛ばしたシェイドであったが、取り敢えずの情報だけでも得ておかないと大変な事になる、と言う確信が在った為に視線をナタリアから外し、近くに居た膝を突いた状態にて固まってしまっている王女様へと声を掛ける。




「…………って訳で、嫌でも聞こえていただろうから再度問うつもりは無いが、何でまたこんな状況になってる訳だ?

 悪いが、最低限だけでも教えて貰うぞ」



「…………そ、それは構いませんが……その、別段気にせずとも良い、のでは……?

 敵は敵、こうして攻撃してきている相手こそが、妾達へと向けて敵対している存在なのですが……」



「なに、こっちにはこっちの事情、ってモノが在ってな。取り敢えず皆殺しで、って訳にも、もう行かんのさ。

 それに、こうして喚び出された以上は『約束』の通りに守ってやるが、別段あんたらの敵を皆殺しにする、って訳じゃ無いんだから、そこの処誤解してるんじゃ無いぞ?」



「なっ!?

 そ、それは、どう言う!?」




 何故か彼の言葉に驚愕を隠せない様子となってしまっているレティアシェル王女だが、そんな彼女に対してシェイドが言葉を返そうとした正にその時。


 それまで彼の防御結界へと掛かり続けていた攻撃が唐突に弱まる気配を見せ、実際に徐々にその勢いを弱める事となって行く。



 そして、その結果として、結界の周囲を覆っていた光はその強さを弱め、強烈な光、として周囲からの情報を彼からの覆い隠していたモノが取り除かれた事により、彼は漸く自分が何処に居るのか、相対する事になる相手はどんな存在なのか、を知る事が出来る様になるのであった……。




久方ぶりに、主人公登場

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