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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
十章・偽りの勇者は魔王軍との決戦に挑む

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偽善者達は真なる強者と激突するが……

 



「うおおおおおおっ!!!」




 大地を揺るがす咆哮によって幕が切られた戦闘に於いて、真っ先に先手を取る形で仕掛けたのは、案の定、と言うべきか、それとも意外な処で、と言うべきかは微妙であるが、『勇者』である、と自認しているシモニワであった。


 先程まで、ズィーマ相手にヘタレてナタリアの背後に隠れる事になっていたのを都合良く忘れてしまっているのか、それとも出会い頭であるにも関わらず完全に見下されている事が感じられる言葉を投げ付けられたからかは不明だが、その身体から『スキル』によって発生している光の粒子の様なモノをたなびかせながら、ミズガルドオルムと名乗った『竜』へと向かって突っ込んで行く。



 ソレに続く形にて、炎を纏ったイザベラと、光の翼を生やしたレティアシェル王女が駆け抜け、一同の中では最後尾に当たる場所をナタリアが進んで行く。



 以前では、自身の保有している魔力量の関係上、発動からそこまで長持ちしなかったイザベラの『纏身魔術』だが、ここ数ヵ月の間に於ける魔物の討伐任務をこなして来た事によって、大きく進歩と改善とを見せる事となっていた。


 何せ、半ば自ら志願する形で選び取っていた上に、属性的な相性は比較的良い相手を優先していたとは言え、自身の実力と同等か、もしくはソレ以上の階級に分別されているモノとの死闘を繰り広げて来たのだから、その実力は飛躍的に上昇していたのだ。



 否応なしに極度の消耗を強いられた魔力はその最大量を増やし、死を垣間見る程の戦闘は彼女の戦闘時に於けるテクニックを鍛えるだけでなく、魔術を扱う際に必須とされる技術の類いやちょっとしたコツを、文字通りに『命懸け』で『身体に刻み込む』レベルにて習得させる事となった。


 故に、現在のイザベラは、以前の様に数分で魔力が切れる、だなんて事になる心配は無く、少なくとも数時間程度であれば発動させたままで戦闘行為を継続する事すらも可能となっていたのだ。



 …………とは言え、そうやって力を手にしようと足掻いて、もがいていた理由はたったの一つ。


 力を手にして変わり果てた(とイザベラは思っている)シェイドとまた相見える事になった際に、以前の様に無視させないだけの力を手に入れ、殴ってでも以前の彼を取り戻したい、と考えていたからだ。



 ソコに、国の為だとか、力無い人々の為に、だとかの綺麗事やお題目も存在してはいない。


 純粋に、自らの欲望に従って都合の良い妄想(力を手にしてしまったが為に変わってしまったが、目を覚まさせてやればまた自分の事を好いて従うかつての彼が現れる、と思っている)を抱き、ソレを実現出来る様に力を求めた結果、こうなっていると言うだけでしか無いのだ。



 そんな、この場に於いて最も純粋であり、同時にシモニワ以上に不純な動機にてこの場に立っていたイザベラは、先に駆け出していたシモニワを自身の身体から噴き出させた炎によって得られている推進力によって追い抜き、同様に空を駆けているレティアシェル王女すらも置き去りにして、一人ミズガルドオルムへと突っ込んで行く。


 戦端が開かれる前は、以前とは打って変わってオドオドとした様子を見せていた上に、先程までミズガルドオルムが無自覚に放っている『圧』によって気圧されて身動ぎ一つ取る事が出来なくなってしまっていたが、いざ戦いが始まってさえしまえば、以前の様に勝ち気で押しが強い性格へと変貌を果たす様になっていた為に、ほぼ一人で最前線を突っ走る、と言う形になっていた。



 とは言え、そんな事はミズガルドオルムには関係無い事であり、単独で突っ込んで来る様な猪武者であれば闘争の相手としても愉しいモノでも無いらしく、呆れと落胆を隠そうともせずに鼻を鳴らすと、無造作にも見える動作にて右前足に生え揃っている五本の爪を広げながら、イザベラへと目掛けて迎撃する為に振りかぶる。


 そして、その巨体からは考えられない程の速度にて振り抜き、カテジナの身体を五条の斬閃にて寸断してしまう。




『………………む?』




 …………が、その手応えに違和感が在ったのか、爪を振り抜いた状態にて額にシワを寄せ、訝しむ様な呟きをミズガルドオルムが溢して行く。


 ソレと同時に、先程己の爪が切り裂いた事によって無惨な骸が晒されている状態となっているハズの場所へと視線を向けるも、ソコには死体処か血痕の一つも残されてはおらず、ただ草が踏み荒らされた地面のみが残されていた。




『っ!?よもや、残像……いや、蜃気楼の類いか!?』



「大正解!!」




 驚愕、と言う程の大きさでは無いにしても、それなりのレベルにて驚いたらしいミズガルドオルムが声を挙げると同時に、その耳元にて若々しくも勝ち気な少女の声が響き渡る。


 それと同時に、ミズガルドオルムの巨体へと、その背後から紅蓮の炎が襲い掛かり、全身を炎で覆い尽くしてしまう。



 自身の纏っている炎を利用し、その場に急速な温度変化をもたらす事で発生させた蜃気楼を囮にしながら自身は蜃気楼を発生させた技術の応用によってその姿を隠しつつ、相手の背後へと回り込んで攻撃を仕掛ける。



 言ってしまえば、ただソレだけの事である。


 が、同時に、ソレを思い付けたから、技術的には不可能では無かったから、と言っても容易に再現できる様な手法では無いし、また考え付いたから、と言っても容易く実行出来る様な難易度でも無い。



 ソレを、実戦にてミズガルドオルムと言う『強者』相手に実行して見せると言うただそれだけで、カテジナは周囲から称賛されて然るべき技量を身に付けている、と言えるだろう。



 とは言え、そんな事は本人にはあまり関係の無い事であるらしく、シモニワの様に誇る訳でも傲る訳でも無く、突如として全身を炎が覆った、と言う事態の本質を見極めようとしていたミズガルドオルムの背後から、彼が思考を回していたが為に彼女から発せられた声に反応する事が出来なかった刹那の時間の間に、自身の身体に纏った炎をより猛らせながら、次なる行動を開始させて行く。




「…………喰らいなさい!【業火閃乱】!!」




 ミズガルドオルムの正面にシモニワが到着し、全身から光の粒子を溢しながら得物である刀を構えて見せた事を切欠として、そんな言葉を溢して見せるカテジナ。


 ソレと同時に、それまでミズガルドオルムの背中に立っていたイザベラの姿が掻き消え、次の瞬間にはその全身にて突如として業炎が巻き起こり、周囲へと向かって断続的に発生する火花が派手に撒き散らされる事となってしまう。



 流石にその事態には、目の前にて得物を振り上げながら迫りつつ在るシモニワよりも、より大きな関心を引いてしまったらしく、そちらを迎撃してやろう、と準備されようとしていた注意や爪牙の矛先は、自身の周囲を飛び回っているらしい羽虫(イザベラ)へと向けられる事となる。


 が、そうして意識を向けられはしたものの、相変わらずミズガルドオルムの全身から飛び散る火花は絶える事にはならず、同時にイザベラもその姿を現す事にもならなかったのだった。




『…………ちっ!えぇい、鬱陶しい!!

 圧縮した魔力によって発した高密度の炎による高速機動と、同様に成した魔力によって覆った四肢による連続攻撃とは考えたモノだが、それでも効かねば意味なぞ無いと言う事が何故分からぬ!?

 その程度の攻撃で、儂の鱗を貫く事なぞ、不可能であるわ!!』




 苛立ちを隠そうともせずに吼えるミズガルドオルムの言葉の通りに、イザベラが行っていた【業火閃乱】とは圧縮して濃度を上げた魔力による高速機動と、ソレを生かしての一方的な連続攻撃がその正体である。


 通常であれば、シェイドであっても素手で触れれば焼かれる程の温度の武器にして防具である炎を纏っている状態に加え、高濃度の魔力によって得られた目にも止まらぬ速度を生かして対象の周期を絶えず高速移動し続けながら、同様の魔力によって形成した炎の刃によって相手を切り刻む、と言う事を可能とする文字通りの『必殺技』であったのだ。



 が、今回は使った相手が人間や通常の魔物では無くミズガルドオルムと言う巨体の『竜』であり、かつ全身を強固な鱗にて覆い防備を固めている存在であった為に、本来の破壊力を発揮する事が出来ていなかったのだ。



 …………本来ならば、シェイドと再会した際に披露し、自らが得た力を誇示する為に編み出した必殺技であり、この様な場面と相手に対して使用するには不適格な技と魔術である、そのハズであった。


 が、そうして派手な見た目と、鬱陶しいまでの動作を行う事によって自らへとミズガルドオルムからの意識と注意とを引き付ける、と言う事を実行するのには、成功していた。



 その為に、真っ正面にいたシモニワがその手にしていた刃に対してそれまでよりもより大きく、強い光を集める事に成功していたし、その頭上にてレティアシェル王女が特大の魔法陣を展開すると同時に、ソレに魔力を充填させる事に成功しており、後は放つだけ、と言う状態となっていたのだが、ソレを最後までミズガルドオルムへと覚らせない事に成功していたのだ。



 間髪入れること無く、準備を整えた二人がミズガルドオルムの巨体へと攻撃を放って行く。


 片や、光で形作られた巨大な飛ぶ斬撃を、片や、今迄に見たことも無い、それこそミズガルドオルムの巨体すらもスッポリと入ってしまう程の巨大な柱を、それぞれで目の前の巨竜へと向けて炸裂させる。



 それは、端から見ていれば、確実に命を奪い去る事が出来るであろうだけの威力が込められたモノとなってはいたのだろうが、ただ二人、側で見ていながら全く焦った様子を見せていないズィーマと、当の本人であるミズガルドオルムはそうでは無かったらしく




『…………なんじゃ、この程度か』




 と言う、落胆の様子を隠そうともしない言葉と共に、彼の身体へと降り掛かろうとしていたそれらが()()()()()()()()()()()()()()


 しかも、それだけでなく、ソレと同時にミズガルドオルムの周囲を飛び回って攻撃を続けていたイザベラも、まるで何かに吹き飛ばされた様にして纏っていた炎を吹き散らしながら、シモニワ達の方へと弾き出されてしまう。



 …………結果的に、たった一度の攻撃を仕掛けただけであり、その上まだ負傷らしい負傷すらも負ってはいないながらも、弾き飛ばされて受け止められる形で合流を果たしたイザベラや、上手く回避して無傷のままで合流したレティアシェル王女を含めた全員が、その瞳に絶望の光を宿す羽目になってしまったのであった……。




あら、まぁ……

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