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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
二章・力を手にした反逆者は復讐を開始する

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反逆者はギルドへと赴き、そこで復讐を開始する

 


 台所へと汚れ物を運んだシェイドは、脂汚れがこびりつく前に手早く皿を洗ってしまう。



 そして、水切りに皿を立て掛けてから、今まで口にした事も無い量を納めながらも、特に張り出したりした様子の無い自らの腹部を見下ろして軽く撫で擦る。



 ……特に、彼の主観として吐き気の類いは感じておらず、また食べ過ぎて苦しい、動き辛い、と言った類いの不具合も起きてはいないし、瓶一本空けているにも関わらず、全く以て酔った様な感じもしていなかった。


 寧ろ、まだ量が残っており、それも食って良い呑んで良い、と言われていたのならばまだ食事を続けていただろう、とも言える。ただ単に、もう無くなったから止めただけ、と言うのが正直な彼の状態と表現出来るだろう。




「我が事ながら、あの量が何処に収まったのやら……。

 と言うか、まだ暫くこんな食欲が続く、とかじゃねぇだろうな……?下手しなくても、毎食こんなに掛かってたら破産する事間違い無いぞ……?」




 自身に起きている事ながらも、半ば呆れる様にそう呟いたシェイドであったが、撫でた腹部が地味に割れていた事を嬉しく思っているらしく、その口元には苦笑以外の意味を含められた笑みが浮かべられていた。



 ……とは言え、何時までもその事実に浸っている訳にも、また感触や食後の余韻に浸っている訳にも行かない彼は、取り敢えず今後どうするにしても必要となるであろう先立つモノを手にするべく、行動を開始する。




「……まずは、二階で『アレ』を探さないと、な……。

 ……と言うか、『アレ』って在るの二階なんだろうな……?」




 そんな呟きと共に台所から移動し、設計の関係上途中でリビングを通り抜ける事となりはしたのだが、その際に完全に絶縁を宣告されたカテジナは茫然自失としており、先程と同じく床に座り込んだままとなっていた。


 が、特にそれに構う事はせず、放置してその横を通り抜けると、階段を使って二階へと上がり、またしても両親が使っていた部屋へと足を踏み入れる。




「…………えっと……確か、この辺りに……しかし、予想していたけど、やっぱり埃っぽいな…………は、ハックショイ……ッ!!」




 時折くしゃみや咳を溢しつつ、部屋の中を探して行く。


 暫しそうして漁っていると、漸く目的としていたモノを発見したらしく、膝やら肩やらに着いた埃を叩き落としながら部屋を出ると、階段を降りて裏庭へと向かって移動する。



 ソコに在るのは、昨日彼を食らおうとして襲い掛かり、そして結果的には彼の力を目覚めさせる事になって返り討ちにされた、真っ二つとなっているキマイラの死体。


 断面から内部に蓄えられていた血液は抜け落ち、内臓も幾らか溢れてはいたが、未だに腐臭を放つ事は無く、また蝿の類いが集る事にもなってはおらず、多少の血生臭さと元より纏っていた獣臭のみが周囲に漂っていた。



 が、特にそれらの臭いに怖じ気付く様な事はせず、かつ特に感動の類いを見せる様な事もせず、ただただ淡々と放置していた死体へと歩み寄り、右側の半身を蹴り飛ばして引っくり返すと、直接手を突っ込んで心臓の付近に存在している魔石を掴んで引きずり出す。



 魔物の持つ強さによって大きさを変える、と言う特性(?)を持つが故か、今回キマイラから引き出したモノは彼の拳よりも一回り程大きく、色合いも濃く在りながらも濁り無く透き通っている状態であった。



 分類すれば、まず間違いなく『極上品』に分類されるであろうソレを、無感動に井戸の水で洗って汚れを落としたシェイドは、わざわざ持ってきたソレの口にキマイラの死体共々近付ける。



 すると、不思議な事に、確実にそれらが通るハズも無い口の大きさしか無いハズであり、かつそれらが収まるハズも無い大きさの『小袋』でしか無いハズなのに、その両方が瞬時に姿を掻き消してしまう事となったのだ。



 目の前で起きた摩訶不思議な現象に驚く事はせず、手にしていた小袋へと感心した様な呆れた様な視線を向けて嘆息するシェイド。




「…………なんと言うか、知ってはいたが、何度見ても不思議な現象だこと。

 あの糞野郎共の事は、殺しても足らない位だけど、この『道具袋(アイテムバッグ)』を残しておいてくれたのには、感謝してやっても良いかね?何せ、今すぐに入手、って訳にも行かないブツなんだし、ね」




 彼が手にしている一見小汚ない袋にしか見えないモノは、『道具袋(アイテムバッグ)』と呼ばれる、『外観よりも大きな容量を持つ袋』だ。


 中に入れるモノは、それに納められるモノであれば大きさは関係無く、また納めたモノの重さも外部には伝わらない為に、長い間狩場へと遠征する事もある冒険者や、長い距離を移動する商人にとっては必須のモノであり、垂涎の的となっているモノでもある。



 ……が、当然、そんな物理法則の外側に在る様なモノがまともなモノであるハズが無く、当然人の手で製作する事は不可能と言われている。


 一般的に魔道具として流通しているそれらとは、一線を画する能力を持つ『発掘品(アーティファクト)』と呼ばれるモノであり、入手するには市場に流れてきたモノを買い取るか、もしくは自身で狙って『迷宮(ダンジョン)』に潜る必要が在る。



 だが、当然の様にソレだけを狙って潜っても早々に手に入る保証は無いし、何より魔物が犇めく『迷宮(ダンジョン)』に『ソレだけを目当てにして潜る』なんて暴挙は、一部の人間を辞めた様な冒険者以外がそうホイホイ気軽に出来るハズも無い。


 なので、大概は運良く浅目な階層で手に入った者が市場に流すか、もしくは深層にまで遠征した際に偶然手に入ったものの、既に持っているモノの方が性能が良かったから、と下位互換の品が流される程度。



 そんな事情の中に在っても、彼が今手にしているキマイラの巨体を収用出来る程の容量を持つモノは、それなりに貴重でありそうそう市場には流されない様なモノであった。




「…………まぁ、本当はあの糞親共が持ってた最上品が残ってたら最高だったんだろうけど、あいつら自分達で戦場に持ち込んで、中身として納めていた最高ランクの武具防具に魔道具の類いごと自爆した、って話だからなぁ……コレもアレ入れてもまだ余裕が在る位には良いモノみたいだけど、どうせ遺すんだったら、そっち遺しておけってんだよ、まったく……」




 …………が、その二人によって今の今まで辛酸を舐めさせられて来たシェイドにとって、この程度の遺産で恨みを相殺出来るハズも無く、換金する目的でギルドを目指して移動する最中も恨み節全開で呟きを溢される事となるのであった……。






 ******





 そこまで時間を掛ける事無く冒険者ギルドのカートゥ支部へと到着したシェイドは、今までとは異なり特に躊躇う事もせずに入り口を押し開けると、真っ直ぐに買取り受付のカウンターへと向かって行き、そこで時間帯の関係上暇そうにしていた受付嬢に向けて話し掛ける。




「……今良いか?買取りを頼みたいんだが」



「承りまし…………って、なんだ、君か。

 悪いけど、『無能』の君が倒せる程度の魔物を持ち込まれても、解体料金まで届かないだろうから寧ろ出して貰う事になるけど、構わないよね?」



「……ご託は良いから、買取りするのかしないのか、ハッキリしろ。

 ついでに言えば、出すのはここで良いのか?多分、このカウンターには乗らないし、乗ったとしてもアンタじゃ動かせなくなると思うが?」



「…………はぁ、私は、君の為を思って言って上げたんだけど?それでも、買い取れ、って言う訳?

 まぁ、この場で恥を掻くのは君だって決まってるんだから、私は別に構わないけど?

 ほら、じゃあ買取り希望のモノを出して。ソコのカウンターには乗らない、って話だけど、どうせ法螺でしょう?良いから、早く出してくれない?」




 どうやら、彼が昨日キマイラを返り討ちにした、と言う事はこのギルドにはまだ伝わってはいないらしく、何時もの通りに彼を『無能』として蔑みながら対応してくれる受付嬢。


 そんな彼女に対して最後の確認を取ったシェイドは、皮肉によって促されるままにカウンターの上へと半身となったキマイラの上位種(もしくは変異種)と思われる死体を二つ放り出す。




「……………………え……?」



「そら、お望み通りに、出してやったぞ。

 さっさと解体するなり、査定するなり早くしろよ。それが、お前の仕事だろう?」




 突如として出現した巨体と、ソレが周囲へと放つ獣臭と血生臭さに加え、乗せられたカウンターが上げる軋みによる悲鳴を耳にしながらも、呆然として惚けた様な呟きを漏らす受付嬢に対し、自分は言ったハズだが?と言うスタンスを貫くシェイド。



 そんな彼へと、コレをここまで持ってきたのだからもう少し移動させる事位はしてくれるよね?と言う救いを求める視線を受付嬢が向けて来たが、予め警告した上での事態であった為に、我関せず、との態度を変える事無く立ち去るべく背を向ける。



 …………が……




「……よう、クソガキ。

 聞いたぜぇ?おめぇ、どうやったか知らねぇが、随分な大物仕留めたみたいじゃねぇか、おぉ?」




 ……が、そんな彼の肩へと無理矢理に腕を回し、酒臭い吐息を吹き掛けながらそう宣ったのは、以前にも彼に絡んで暴力を振るってくれていた中級冒険者であるカスグソだった。



 大方、何処ぞで噂を聞き付けて、何時もの様に脅し付けて殴り付ければ全部自分に渡すだろう、と言う酒精にまみれたが故に出された愚劣な考えに突き動かされての行動なのだろう。


 現に、自分では到底敵いっこない相手を倒した、と言う事になっているシェイドに対し、以前と同じく『自分の言うことを聞かなければどうなるか分かってるよな?』と言う雰囲気を醸し出しながら絡んでいるその様は、丸っきり彼が自らの力を振るって相手を倒した、と言う事実を忘れ去り、どうにかして卑怯な手を使って倒した、と言う自らの妄想こそが真実なのだ、と信じて疑っていない、と言う事の何よりの証左だと言える。




「まぁ、テメェは知らねぇだろうけど、このギルドには一番最初に大物を仕留めたら、その功績も売却金も全部一番世話になった先輩に譲る、って風習が在るんだよ。

 だから、テメェが仕留めたアレは全部俺様が貰ってやるから、感謝しろよ?今の今まで、散々可愛がってやった、そのお礼だと思えば、安いモンだろう?なぁ、おい?

 当然、文句なんざねぇだろうな?おぉん?」




 普通に考えれば、文句処の話では無いその要求に応える事もせず、自らの肩に回されている腕を握るシェイド。



 そして、わざとゆっくりと握る力を強めつつ、徐々にその表情を歪めて行くカスグソへと向けて、逆にこう囁いて見せるのであった。





「…………へぇ?

 じゃあ、自称『世話してやった』アンタに、一つお願いが在るんだけど、聞いてくれるよな?

 いい加減、アンタみたいな真性のクズ野郎に何時までも絡まれてるとウザったくて仕方無いから、そろそろ殺しても構わないよな?

『弱いヤツは強いヤツに逆らう事は許されない』

 これは、アンタ達が俺に強制してきた、この冒険者ギルドに於ける絶対のルールだったよな?なら、俺がアンタ達をどうしようが俺の勝手、って事で良いわけだよな?

 なら、もう、いい加減、死んでおけ」





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