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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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王国は唐突な報せを前にして激震する

と言う訳で閑話です

 


 ━━━━クロスロード交商国、魔族の攻勢によって陥落する。



 その情報を『反逆者』と『監視者』が耳にするよりも数日早く、その報せは隣国であるアルカンシェル王国へと届いていた。



 当然の様に、ソレによって王国の上層部は混乱をきたし、上に下にの大騒ぎとなっていた。



 ソレを、どうにか抑え込んで各方面へとグレンディレイ王が指示を出し、より詳細に情報を集めさせてから半日程度が経った頃。



 アルカンシェル王国の主要人物の殆どが、一つの会議場へと集まって顔を突き合わせていた。



 …………ソコには、必要になる、と予想される勇者パーティーの姿も在った。



 ここ最近は勇者であるシモニワも仕事を積極的にこなしていた為に、アルカンシェル王国内部で発生していた危険性の高い魔物も粗方討伐を終える事が出来ていた。


 その為に、そろそろこちらから魔族側に対して攻撃を、と考えられていたので王城に全員滞在しており、こうして運良く緊急的に招集された会議にも参加する事が出来ていた、と言う訳なのだ。



 …………とは言え、実際の処としてこの場にて必要とされているのは、表向き『勇者パーティーのリーダー』であるシモニワでは無く、実質的なリーダーであり、頭脳面でも優れた手腕を示して既に国家運営の采配にも関わっているレティアシェル王女の方であるのだが、ソレをシモニワ本人が自覚していない事と、最早半ば公認の秘密となっている為に、指摘してやらない方が幸いである、と言えるかも知れないが。



 会議場に集まった上層部の人間達は、一様に不安な様子を表情に浮かべながら口々に『今後どうなるのか?』を議論して行く。


 既にこのアルカンシェル王国は魔族からの宣戦布告を受けている以上、何をしてもしなくても、このままこちらまで攻め込んで来るのは目に見えていたからだ。



 交商国であり、そこまで軍備に国費を費やしていた、と言う訳では無いにしても、それでも国を相手に取ってアッサリとソレを下して見せたのだ。


 流石に、先の様に一人送り込んで来て、それっきりでお終い、と言う事は無く、やはり本気で攻めてきている、と見て間違いは無いのだろう。



 国外に離脱する?徹底抗戦を選ぶ?ちゃんと戦えるのか?勝ち目はどれくらい在るのか?



 そんな、保身から開戦まで様々な意見が飛び交う中で、彼らをこの場に招集した本人であるグレンディレイ王が会議場へと到着し、会議の開催を宣言する。




「…………さて、まずは現状を正しく理解する事こそが肝要である。

 故に、現時点にて判明している事を、まずは行って貰う。宰相、頼んだ」



「はっ!

 では、まずはクロスロードの現状から、ご説明させて頂きます」




 グレンディレイ王から進行を振られた、彼と同年代と見られる中年の男性が複数の書類を手に立ち上がり、一歩前に出てから声を張り上げる。




「既に皆さんもお聞きとは思いますが、先日クロスロード交商国が魔族と接触し、交戦するに至りました。

 そして、その結果としてクロスロード交商国は保有戦力の何割かを消失し、その結果魔族に対して降伏する、と言う選択を成されました。

 それにより、我がアルカンシェル王国は魔族の勢力と隣り合う形となった事になります」



「…………クロスロード交商国の現状と、攻め込んで来た魔族側の状況は掴めておるのか?」



「はっ!

 その二つについてですが、ある程度の情報であれば、入手する事に成功しています。

 まず、クロスロード交商国の現状ですが、どうやらそこまで施設等に対する大規模な破壊は行われてはいない様子です。少なくとも、放った者達が遠目に確認した限りでは、目に見えて地形が変わる、街が無くなる、と言った様な変化は確認されてはいない様子です」



「施設を壊さず、そのまま流用しよう、と言う腹か?

 人員の方はどうなっておる?流石に、王を始めとした上層部の首は、晒される事となったのでは無いか?」



「……それも、未確認、との事です。

 手の者も、ソレを確認しようとしたのですが、以前宣戦布告を行った魔族が現れた事により、僅か数名を残して撃破される事となった様子です」



「………………ならば、魔族側の軍の状況は?

 流石に、幾らかはクロスロード交商国との戦闘で削られる事となっているのだろう?」



「…………はっ。

 それが、その……大変申し上げ難いのですが……そこまで大きな被害は見られていない、と言う報告です」



「……………………何だと?

 余の、聞き間違いか?それとも、ソレは只単に、宰相の手の者による現実には則さない予想、と言うモノでは無いのか……?」



「…………いえ、残念ながら、彼らは至極簡潔な現実主義者です。

 得られなかったのならば『得られなかった』、見付からなかったのならば『見付からなかった』と報告してくる様に、私が教育致しました。

 ですので、恐らくは救護施設の規模や死者の埋葬状況、その他の情報を統合した上で『被害は大きくは無かった』と判断したと思われます。少なくとも、私でしたら、そう判断致します」



「…………何と言う事か……」




 予め多少は耳にしていたとは言え、事実として突き付けられた事により、衝撃を隠せない様子のグレンディレイ王。


 しかし、王たる者がそうやって動揺を周囲に見せてはならない、と言う事を思い出したからか、瞬時に表情を引き締めると、それまで宰相に向けていた視線を別の方向へと向け、未だ若々しいながらも既に厳めしい雰囲気を纏っている鎧姿の男性目掛けて口を開く。




「…………では、将軍。

 先程の宰相からの報告が全て真であった場合、そなたは魔族の軍勢に対して如何に対抗する?

 勝てるだけの見込みは、在るのか?正直に述べよ」



「…………はっ!

 では、恐れながら申し上げます。

 宰相閣下からの報告には、具体的な敵戦力の規模や魔族側の軍勢の数と言った情報が欠けた状態となっておりました。故に、当方としましても、未だ情報が不確かなる現時点に於いて断言する事は危険だと愚考致します。

 例えそれが、存亡の危機に瀕していたとしても、です」



「で、あるが、然りとてこのまま座して何もせず、攻め込まれて国土を(いたずら)に荒らす訳にも行かぬのも事実である。

 故に、今在る情報から判断出来る事柄だけで良い。何かしら、敵情に対しての見識を述べよ」



「…………はっ!

 では、恐れながら申し上げます。

 恐らく、魔族側の軍勢は、そこまでの大軍、と言う事では無いだろう、と考えられます」



「…………ほう?

 その心は、如何に?」



「…………はっ!

 理由としては幾つか考えられますが、まず挙げるとするのならやはりクロスロード交商国の被害に比較して、魔族側の被害が見られない事。それと、クロスロード交商国の首脳部の首を未だに取ってはいないことが主なモノとなるかと思われます」



「…………人手不足、か……」



「可能性としては、低くないかと。

 もし、魔族側が戦力としても十二分で在り、かつ奪い取った土地を確保しておけるだけの人員も確保していたのでしたら、未だにクロスロードに留まっている理由が無くなります。

 更に言うのでしたら、手早く晒す事で支配者の交代を明確にする事が出来るハズの王族を未だに生かし、少なくとも大々的な支配者のアピールは未だに行われてはいない模様となっております。

 これも、旧支配者を排除して足場を固める為に時間を掛けるよりも、ある程度の条件の元に服従を強いている、と見た方が建設的です。とは言え、これらはあくまでも当方の予想でしか無い為に、全面的に信用為さるのは止めておいた方がよろしいかと……」



「良い。

 やれ、と言ったのは余の方だ。そなたは、ソレに従ったに過ぎぬ」



「…………有り難きお言葉でございます……」




 そう言って頭を下げる将軍へと向けて、グレンディレイ王が言葉を繋げて行く。




「…………それで、ここからが本命だ。

 そなたに問おう。此度の魔族の勢力、我らの総力を結したとして、確実に撃破出来る、と見ておるか?」



「…………無礼を承知で申し上げますが、ソレは『総力』の定義に依る、とだけ言わせて頂きます」



「…………と、申すと?」



「…………はっ。

 まず、相手側の戦力の規模が不明である以上、確実に事を成す、と言う事に重きを置いて行動を起こすのであれば、文字通りに『全戦力』を一度に投入する事こそが肝要となります。

 ですので、各地に散らしている特級冒険者や特化戦力だけでなく、王をお守りする近衛隊すらも動員し、かつ通常戦力の全てと共に勇者パーティーすらも一度に動員するのであれば、ほぼ確実に殲滅する事は可能だと思われます。

 …………もっとも、それも敵幹部級の戦力が、確認されているモノ以外に出て来なければ、と言う条件が付きますが」



「だが、それでは他の場所からの攻撃に対して無防備になってしまうでは無いか!?」



「そうだ!

 ソレに、近衛隊まで投入するだと!?

 それでは、最も守るべき貴きお方の回りが手薄になってしまうではないか!?

 到底、その様な事が許されるハズが無かろうが!?」



「そうだ!

 口を慎め、若造め!!」



「しかも、そうまでしても負ける可能性が在る、だと!?

 ふざけるのも大概にしておけ!!」




 彼からの発言が気に入らなかったのか、他の大臣級の参加者から若き将軍に向けて罵声が降り注ぐ。


 が、本人はそんな些事に関わっている余裕は無いらしく、実直な視線をグレンディレイ王へとのみ注いで行く。



 ソレを受けた王は、暫し頭を悩ませる素振りを見せていたが、唐突に乱入してきたシモニワが発した




「王様!一体、何を迷っているんだ!?

 この状況、攻めなければ攻め込まれる事になるのはハッキリしているだろう!?

 なら、攻めるべきだ!

 国土を守る為の戦力が必要だと言うのなら、俺達だけで良い!それで、魔族を蹴散らしてやろう!何せ、俺は『勇者』なんだからな!!」




 との言葉を受け、シモニワ率いる勇者パーティーを主核とした上で、将軍からの意見を部分的に採用し、通常戦力である軍と騎士団とを合わせた『対魔族部隊』を形成すると、その翌日にはクロスロード交商国との国境線にて待ち構える為に、首都カートゥを出立するのであった……。




次回から、皆さんお待ちかねの砂糖マシマシな二人のストーリーが開始されますよ~(既に一部砂糖と化しつつある作者)

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