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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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仕事を終えた反逆者は、監視者と共に驚愕の事実を耳にする

リザルト回

 



「………………お、お待たせ、致しました……っ!」




 若干処では無い位に緊張に包まれた声が、シェイドとサタニシスの二人の耳を叩く。


 ソレにより、揃って視線をそちらへと向ければ、案の定緊張感を顕にした受付嬢が、身体を強張らせながら大袈裟な仕草にて小袋を両手で掲げる様にして持っている姿が飛び込んで来た。



 ガチガチに強張った表情と、遠目から見ても流れている事を窺う事が出来る程の勢いにて流されている冷や汗は、当然の様に別段手に持つ小袋が異常に重いから、と言う訳では無い。


 寧ろ、ソレが想像を絶する程の価値が在るモノであり、一時的とは言えこうして自身が持っている事に恐怖している、と見た方が間違ってはいない事だろう。



 現に、そうして掲げている受付嬢は、極力失礼が無い様に、とはしながらも、視線にて




『早く受け取りに来て下さい!

 お願いしますから!?』




 と言った様な事を訴え掛けて来ており、当然の様に二人もソレを承知した上で、何となく見ていて面白いから、とわざと半ば放置する様にして観察していたのだ。



 …………そんな、意地の悪いことを二人が揃ってしている理由や、彼らがこうして冒険者ギルドに屯っている事。


 彼らを呼びつつ、受付嬢が冷や汗を滴らせながら小袋を掲げる事態になっているのか、と言った全ての原因は、彼らが依頼を終えて帰還したから、と言う一言に集約される事となる。



 とは言え、特に彼らに取っては特別な何かをした、と言う訳では無い。


 これまでの通りに依頼をこなし、無事に帰還して見せた、と言うただソレだけの事だ。



 しかし、周囲にとっては()()()()()()()()、と言うだけの話だが。



 …………何せ、元々が長い間塩漬けとなっており、時折挑んでも即時に逃げ帰って来る者ばかり、と言う事で有名であった依頼なのだ。


 彼らがギルドにその姿を現した時も、パッと見た限りでは大した負傷も受けた様子が無かった為に、最初に彼らを出迎えたのは罵声と嘲笑の嵐であった、と言えば、出る際にも予想は着いていただろうが、彼らがどの様な扱いを受ける事となっていたのかは、容易に予想できる事だろう。



 だが、そんな冒険者諸君の調子は、彼らが受付へと進み、さも残念そうな表情を浮かべながら受け答えをしようとしていた受付嬢に対して彼が




『取り敢えず、討伐証明としてコレ頼む。

 それと、こいつらの解体と買い取りも同様に頼んだ』




 との言葉と共に、両断された状態の『百年竜』の頭部を取り出して見せた事で一変する羽目になってしまう。


 そう、それまで彼らを罵倒し、そんな若造は放って置いて俺達と呑めよ!とナンパ紛いの事までしてくれていた連中が、寸前までの嘲笑を揃って引っ込め、一様に黙り込んでしまう、と言う事態になっていた、と言えば嫌でも理解出来るだろう。



 おまけに、そうして未だに血の滴る程に新鮮な生首(!?)を取り出して見せただけでなく、それよりもサイズとしては劣るものの十二分に『竜』のソレだと理解出来るモノを幾つも取り出された段階に至っては、逆に『戸惑い』や『怯え』と言った感情が色濃く浮かんでいるざわめきが発生し始めてすらいた。



 事がその段階に至っては、流石に受付嬢も呆然とはしていられなかったらしく、まだ次のモノを取り出そうとしていたシェイドとサタニシスの事を慌てて止めると、ギルドの裏に併設されている解体場の方へと回って欲しい、と懇願する形にて要請したのだ。


 その提案に対して、特に思う処が在った訳でもない二人は別段ごねる事も無く了承すると、連れ立って指示された場所へと回り込み、ソコで在りったけの『炎竜』達の死骸を提出すると、先に申し込んでいた通りに解体と買い取りを希望した、と言う訳だ。



 ソレには、一応『依頼』と言う形にて出していたものの、本当に『達成』と言える形にて成し遂げて見せるとは冒険者ギルド側も想定していなかった為に、一時は上層部も巻き込んでの大騒ぎとなったりもした様子だが、ソコにシェイドの熱狂的なファンでもある職員のアルバースが顔を出し




『取り敢えず解体の実行と、依頼の達成報酬は即座に行うべきです。このギルドが無くなっても良い、と言うのでなければ。

 買い取りに関しては、予算と相談して決めれば良いのでは無いですか?』




 と発した言葉が切っ掛けとなり、ソレを全面的に採用する運びとなったので、解体(ソレ)が終わるまでギルドのロビーに二人して待機していた、と言うのが事の全容とその流れである。



 そして、ここまで言えば、彼らの目の前で小袋を掲げながら滝の様な冷や汗を受付嬢が流している理由も察して貰えているかも知れないが、敢えて説明すれば至極簡単な事。



 …………そう、その小袋には、二人が成し遂げた、ほぼ不可能だと思われていた依頼の達成報酬だけでなく、ギルドの側が転売が可能だと判断したか、もしくはギルドの内部にて必要としている者が居る、と言うモノを厳選し、その上で予算と相談して決定された素材の買い取り金額が上乗せされたモノが入っているのだ。



 概ね、そうなるだろう、と予想を立てていた冒険者の内、その小袋の内部に秘められた黄金の輝きや白金の煌めきを想像して生唾を呑み込む者も存在していたが、何故かソレを横からかっ拐ってやろう、と言う方面にてやる気を出す者は居なかったらしく、皆視線は向けながらも正気を失って飛び掛かって行く、と言った様な行動に出る者は終ぞその姿を現す事は無かった。



 とは言え、そうなるかどうかは関係無く、極度の緊張にて震えながら小袋を掲げて見せている受付嬢が、何となく愛らしい姿に見えていた、と言う事もあり、依頼についての情報が曖昧であった、と言う事への意趣返しも兼ねて本人が直接取りに行く事をせずに受付嬢に渡させようとしている、と言った事情(?)が在ったり無かったりしているが、ソレはあまり話の大筋には関係無い事なので割愛しても大丈夫だろう。多分。



 …………そうこうしている内に、受付嬢の表情が本当に悲惨なモノへと変わり始めた事や、彼らの実力を今更ながらに知り、その上で罵声や嘲笑を浴びせた覚えの在る冒険者達が逃げる様にその場を後にしてもなお残っていた冒険者達の目が血走り始めた為に、もうそろそろお仕置きとしては十分だろう、と判断した二人は重い腰を上げて受付へと向かって行く。


 そして、漸く肩の荷を下ろせる、とホッとした様子を見せる受付嬢の前へと移動すると、手振りにて報酬金の内訳と説明を求めて見せた為に、最後の一仕事!と言わんばかりに表情を引き締めてから口を開く。




「…………では、ご説明させて頂きます。

 まず、こちらは正規の依頼料であり、かつ『様子を見てくる』と言う方の報酬である白金貨十枚になります」



「まずは、って事は、依頼の報酬が他にも在るのか?」



「勿論です!

 では、続きまして、実際に『竜』の討伐を成し遂げた、と言う事で発生した討伐報酬としまして同じく白金貨十枚になります」



「………………ねぇ、実際に倒したから、って言うのなら、ちょっとばかり少なくないかしら?」



「ご安心下さい。それは、通常種の『竜』の討伐報酬です。

 で、こちらが『百年竜』と認定された個体の討伐報酬白金貨百枚となります!」



「「百枚!?」」



「はい!

 本来、『百年竜』クラスともなれば国を挙げて抗う事になる相手となります。

 ソレを、未だに具体的な被害が出てはいないとは言え、たった二人で討伐せしめて見せたのですから、報酬額が青天井になるのは当然の事です。

 更に、次は━━━━」



「…………え?まだ、在るの……?」



「…………そう言えば、買い取りの方がまだだったな……」



「はい!こちら、当ギルドが買い取りを希望する素材となります!

 通常個体の内、体躯の大きなモノの骨や革と言った需要の大きなモノを中心として、基本的に鱗の類いは全て買い上げさせて頂きました!

 …………ですが、流石に『百年竜』の素材は流通量の関係上非常に高価になりますので、可能であれば残されていた魔石を除いた心臓部と眼球の片方、それと二本生えていた主角の片方と牙を数本程度、となっております」



「…………と、なると、幼成体のほぼ全てと通常個体の鱗以外、大型個体の肉やら内臓やらと、『百年竜』の方は殆ど残っている状態、って事で良いのか?」



「そうなります!

 …………本当は、通常個体の魔石なんかも買い取りに回せないか、と言う話も出ていたのですが、流石にそこまでやってしまうと他に回す分の予算が無くなってしまうので……」



「…………お、おう……そうか。

 で、総額で幾らになるんだ?

 流石に、討伐報酬は超えるよな?」



「…………いや、流石にソレは無いんじゃないの?

 だって、アレよ?白金貨百枚よ?

 そうそう、そんな事は無いんじゃ……」



「あ、そうでした!

 取り敢えず、解体費用や保存用の加工料等の諸々を差し引かせて頂いて、残りのお支払するのが白金貨で八百八十枚となります!

 ですので、今回のお支払は計で白金貨千枚となりました!」




「「…………は……?」」




「そして、大変勝手ながら、流石にソレだけの資金を一度に持ち出されますと当ギルドとしましても大変な事になってしまいますので、使い勝手が良い様に、と即座に現金として白金貨百枚のお支払と、残りの九百枚をお預りしている、と言う証明の品である会員証をお渡し致します。

 どうぞ、お納め下さいませ」




 そう言って受付嬢が差し出して来たのは、白金貨が百枚納められた小袋と一枚のカード。


 小袋の方は大きさから大体の量が察せられていたが、カードの方はシェイドも初見であった為に、意識はそちらの方へと傾いて行く。



 見た目からしても金属で作られている事が分かるそのカードは、身分証としても広く活用されているギルドカードとは(おもむき)が異なり、表面には所有者の名前のみが刻まれ、階級や所属、と言ったモノは書かれていなかった。




「当ギルドか、もしくはこのアルベリヒに在る支部にて提示して頂ければ、お望みの金額を引き下ろしする事が可能となっております。

 …………まぁ、とは言え、一度に持ち出せる金額にも各支部に於ける事情によって限りがございますので、その辺はご配慮頂きたく……」



「…………そりゃ、ねぇ……?

『現金の手持ちが無くは無いけど一気に無くなられると困るから』ってこんなモノ渡されてるんだから、他の処でも同じ事になりかねん事はしやせんよ。流石に」



「…………ありがとうございます。

 では、コレにて今回の清算は終了とさせて頂きます。

 何か、ご質問等はございますか?」



「いや、俺は特には、お前さんは?」



「…………千枚……白金貨が、千枚……?

 となると……アレも、アレも、アレも、買えちゃう?

 アレ……?アレレ……?」



「………………無さそうだから、大丈夫だな。

 ご苦労さん」



「畏まりました。

 では、次回のご利用をお待ちしております。

 ………………あ、そう言えば……」




 断りを入れて背を向けようとしたシェイドの耳へと、受付嬢が溢した呟きが届いて来る。


 ソレが、何となく気になった為に視線だけ肩越しに戻し、まだ何か在ったのか?と問い掛けると、受付嬢は特別重大そうな事を口にする様子も見せずに、とんでも無い爆弾発言を繰り出してくれたのであった……。





「あぁ、いえ。

 そう言えばシェイド様は只人族だったなぁ、と思いましてね?

 そこからの連想で、そう言えば今朝届いた情報の中に、アルカンシェル王国の隣のクロスロード交商国が魔族に攻め落とされた、って言うのが在ったなぁ、と思った次第でして。

 追加で言いますと、アルカンシェル王国側は攻め込んで来ると思わしき魔族を撃退するべく軍を動かした、とも聞いたなぁ、と。ご存じ無かったですか?」





&最終局面へのカウントダウン開始~

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