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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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反逆者と監視者は『百年竜』との死闘を制する《前》

長くなったので前後編に分けました

 


 二手に別れて走り出したシェイドとサタニシスは、それぞれの方法にて一旦距離を取りながら目の前に佇む『百年竜』へと向けて攻撃を仕掛けて行く。



 本来ならば、物理的な防御力を容易く無視する事が出来る闇属性の持ち主である二人は、この手の『頑強な防御力とタフネスにモノを言わせて耐えながら高火力にて焼き払う』と言った相手とは相性が良く、ほぼ一方的にカモにする事も不可能では無い。


 だが、今回ばかりは防御力とタフネスが膨大に過ぎる上に、一撃一撃の火力もバカみたいに高い存在が相手となってしまっている為に、幾分か消極的にならざるを得ない、と言う状況になっている訳なのだ。



 とは言え、先程の『白焔(はくえん)』によって口腔が焼け爛れ、暫くの間は吐息が使えなくなっている、と言う今だからこそ攻めなくては勝機が無くなる、と言う事も事実。


 である為に、『百年竜』が振り回す尻尾を回避したり、展開してきた魔術による弾幕等を防御したりしながら自ら開いた距離を今度は詰めつつ、自身の持つ固有魔術である【重力魔術】を積極的に放って行く。




「そら、喰らえ!

【壊球連弾】!!」




 彼から魔力が放たれると同時に、『百年竜』の体表に幾つもの黒い点が現れる。



『百年竜』の巨体に近しいが故に極端に小さくなって見えてしまっているが、良く良く見てみればその『点』の一つ一つがそれなりの大きさを持った黒い『球』である事が理解出来ただろう。



 そして、それらは言わずもがなかも知れないが、その全てが彼が固有魔術によって発生させた重力球だ。


 一つ一つは、彼が以前にも使用している【圧壊黒点】と同種のモノであり、効果も等しく『発生した黒球の周辺に超重力場を発生させる』と言う単純なモノ。相違点を挙げるとすれば、こちらの【壊球連弾】は【圧壊黒点】よりも瞬間的な出力にて下回る代わりに、文字通りに無数に展開する事が可能である、と言う点だろう。



 展開された黒球は、その一つ一つが放つ重力波によって空間を歪める程の力を持っているのだが、同時展開した複数の黒球を等間隔にて配置する事によって相互に干渉し合い、爆発的にその効果を高める事となるのだ。


 故に、一つ一つは【圧壊黒点】に威力で劣るものの、その制圧範囲と最終的な破壊力に於いては、圧倒的な迄に【壊球連弾】の方に軍配が上がる、と言う事態になっている。



 そんな術式を、まるで最初から素材の事は諦めている、いや寧ろ()()()()()()()()()()とでも言わんばかりの勢いにて複数展開し、『百年竜』の周辺へとばら蒔いて行くシェイド。


 彼の異常なまでの魔力量と圧倒的な処理能力を持ってしてもその負荷は莫大なモノとなっており、流石に耳や鼻から派手に出血を開始するも、ソレに頓着する事無く順次放って行く。



 結果として、自身の周囲をグルリと黒球によって囲まれてしまう形となる『百年竜』。


 流石に、その段に至ればこのまま放置しているのは危険であり、かつソレを行っているのが恐らくはシェイドなのであろう、と言う目測まで立てて見せた『百年竜』は、それまで彼らを接近させない為に周囲へとばら蒔いていた魔術の照準を黒球群へと差し向けると同時に、自らの持つ長大な尾を駆け寄ろうと試みているシェイドへと目掛けて振るって行く。



 下手な大木よりも太く、長く、それでいて金属よりも余程頑丈な鱗が無数に生えている為に、直撃しなくとも掠めただけで肉を削ぎ、骨を穿って来るのであろう事は、容易に予想する事が出来た。


 その為にシェイドは、咄嗟に自らの身体に対して【重力魔術】を用いる事で重力の向きを変更し、自身を()()()()()()()()()()()



 唐突に、かつ有り得ない挙動を取って見せたシェイドに対し、流石の『百年竜』も即応する事は出来なかったらしく、彼の真横、寸前まで彼の身体が在った空間を、凄まじいまでの速度にて貫いて空振りする羽目になる。



 よもや空振りするとは思っていなかった為に体勢が崩れて出来た隙を、彼がむざむざ見逃すハズも無く、より一層自らの脚へと魔力を流し込んで脚力を強化すると、指を弾く事で展開待機させていた黒球群へと合図を出して発動させ、自身も『百年竜』へと向けて肉薄して行く。




『…………グッ、グォウ……!?

 オノレ……ッ!?小癪ナ真似ヲ……!!』




 急激に増した重力の奔流に、思わず呻き声が『百年竜』の口から溢される。


 普段のソレとは異なり、縦方向のみでは無く、不規則かつ強弱すらも一定とはなっていない重力場に囚われ、時に内臓が凄まじい迄の速度にて横方向へと引っ張られ、時に急速に脳天へと血液が集められて行く感覚が襲い掛かって来て、思わず意識を手放しかけて身体がグラリと揺らされてしまう。



 が、その次の瞬間には持ち前の莫大な魔力を身体の内外へと循環させ、半ば強引かつ擬似的にとは言え自身の身体を強大な魔力の塊へと変貌させて見せる。



 …………基本的に、魔術や魔法と言った魔力によってもたらされる現象は、属性間の相性の他にソレその物が持つ効果や発動・展開に費やされた魔力によって強弱が決まる。


 多少の相性差や効果の強弱、また消費された魔力の大小と言った要素のみで優劣が決まる訳では無いにしても、ソレを決める為の重要な要素の一つである事は間違いない。



 そして、ソレは言い換えれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事にもなるのだ。



 例えそれが、本来ならば如何なる干渉も跳ね除けて見せる『空間隔絶』であったとしても、物理的な抵抗が不可能なハズの【重力魔術】に対しても、理論の上では同様に対抗が出来る、と言う事に他ならないのだ。


 …………そう、例えば、自身の周囲から干渉してくる魔力による重力場に対して、ソレが放つ以上の魔力出力を以てして対抗し、一時的にとは言えその(くびき)から逃れて見せる、だなんて事も、可能では在るのだ。



 そんな、理論の上では可能だが普通そんな事をする位なら普通に逃げるか避ける、と言う方法を、最早『力ずく』意外に表現が出来ないであろうやり方にて実現して見せた『百年竜』の爪が、シェイドへと迫る。


 流石の彼も、これは予想外であったらしく、咄嗟に術式を展開する事も出来ず、同様に魔術を行使する事も出来なかった為に、半ば反射的に手にしていた得物でその爪撃を受け止める。




「…………ぐっ!?ぐぉぉぉぉぉおおおっ!?!?」




 周囲へと響き渡る甲高い金属音と、硬質なモノ同士が激突する事によって発声する轟音が周囲へと響き渡って行く。


 それと同時に、苦鳴にも似た彼の叫びも、森の中へと響き渡る。



 自身の身体へと直撃させる事無く、シェイドは攻撃を受け止める事に成功していた。


 が、それでも圧倒的な質量差と超筋力を持つ『百年竜』相手には何のリスクも無く受け止めきる事は出来なかったらしく、構えられた両腕は極限まで隆起し、両足は重量を受け止めて地面へと沈み込んで行く。



 その上で、彼の身体の各所からは直撃を受けた訳でも無いハズなのに、まるで間欠泉もかくや、と言う勢いにて出血し、全身を紅に染め上げて行く。


 先の一撃を受け止めた事により、彼の全身の筋繊維や関節が、幾ら魔力で強化された上で保護されているとは言え、通常出力のそれでは耐えきる事が出来ず、破壊されてしまった結果、である。



 攻撃を受け止めた際に受けた衝撃だけでなく、断続的に身体が訴える激痛により、一瞬とは言え意識が遠退きかけるシェイド。


 ソレを、僅かとは言え拮抗していた力が揺らいだ事を手応えから察したのか、その隙を見逃すつもりは無いらしく口許をニヤリと吊り上げながらその口腔に再び赤光を宿し始める『百年竜』。



 彼とは正反対の位置に展開しており、かつ自身に向けても相変わらず無数の魔術が展開、射出されている状況下に於いても彼の現状を把握し、どうにか助けようと手を伸ばすサタニシス。


 彼女の目から見ても、かなり生存は絶望的な状況に在る、と断言出来るであろう状態に在った彼だが、その瞳は未だに絶望に包まれてはおらず、彼女へと向けられ交わった視線は勝利を確信した者が宿す眼光が秘められていた。



 ソレを目の当たりにしたが為に、瞬時に思考を切り替えたサタニシスは、彼を救助する為では無く、彼を真実味目の前の敵を打破する為に魔力を高めて術式を構築し始める。



 一方、それを持ち前の感覚により、視界に納める事もせずに察知していた『百年竜』は、口腔に魔力を集めて再び『白焔(はくえん)』を放たんとして準備を進めながらも、その胸中には驚愕が満ち溢れていた。


 幾ら片方は人間では無いにしても、雰囲気から番となっているか、もしくは仲間であるハズなのだから、この様な状況下になれば助けようとして行動するのが当然であり、ソレが意味を成さずに死んで行く姿を目の当たりにすれば一発で心が折れる事になるだろう、と予測していたからだ。



 とは言え、既に状況は『だからどうした?』と言えてしまう段階に移っている。



 このままでは、確かに手痛い攻撃を受ける羽目になるかも知れない。が、それよりもこうして抑える事に成功している雄の方を抹殺する方が先決。


 そうすれば、未だに自身の周囲に展開している、驚異的でありながら非常に鬱陶しいモノも解除される事になるだろうし、そうすれば残った雌の方に注力する事が出来る様になる。


 魔力の高まりも察知できているが、どうせ単体では自身に対して致命傷を与える事は出来ないのだし、この雄を確実に片付けてからゆっくりと始末してやろう。



 そんな考えと結論とを出した『百年竜』は、半ば背後のサタニシスを無視する形にて、自らの前足で抑え込んでいるシェイドへと向けて、前足ごと巻き込む形にて準備を終えた吐息を解き放って行くのであった……。



決着は後編で

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