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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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反逆者は監視者と共に『百年竜』と死闘を繰り広げる

 


 シェイドが放って見せた、まだ属性も乗せていなければ魔術としての体裁すらも整ってはいない様なモノでありながら、それまで遭遇した『竜』であれば十全に即死に至らしめる事が出来たであろう魔力弾を受けておきながら、ソレを平然と耐えて見せた『百年竜』の口腔に眩い光が収束して行く。



 その色は、鈍いオレンジからあっと言う間に鮮やかな赤へと変化しただけでなく、更に滅多に見る事の無い青を通り越して色が抜け、白い煌めきを宿してなおその圧力を高めて行く。



 自然界では、全くもって目にする機会が無いであろう、超高温に至った焔のみが持ちうるその発色。


 通常であれば、ソレが如何に危険なモノであり、本来ならば目にした瞬間にはどの様に防御するべきか、どうやれば回避する事が出来るのか、を全力で検討し実行する必要性が在ったであろう程の危険性を秘めた、美しくも残酷な光景だ。



 …………だが、普通であればそれらを目にしても、その危険性は普遍的に広く知られている類いのモノでは無い為に、危険性から瞬発するよりもむしろその美しさに見惚れて動作が遅れる事が多々在るのだが、ソレを目の当たりにした瞬間、幸いにも二人は即座に行動を起こし、力を合わせて()()()防御へと意識と力を集約させて行く。


 彼は、血縁上の母親の遺した研究資料の中に在った火属性の術式資料を見ていたが為に、彼女はソレまでに積み上げて来た『竜』との戦闘経験から、その危険性を瞬時に理解して見せたが故に、だ。



 まず最初に、二人は同時に魔力による結界を展開した。


 普段彼が行っている、無意識的に垂れ流している魔力が勝手に作用して防壁として作用している、と言った様なモノでは無く、明確な意思と確固たる術式によって発生させられている、敢然たる存在として展開される障壁としての結界だ。



 ソレを、手を変え品を変え、一枚毎に付与する効果を変更しながら次々に展開する事十数枚。


 更に、念には念を、と言う事で、二人が居る結界の中心点を、何をされてもその影響を受けない様に、と空間支配の権能を持つ闇属性の魔力を用いて、結界一枚を隔てた場所とは『異なる空間』として定義して隔離して行く。



 周囲の結界はともかくとして、最後の『空間隔絶』は大魔術一歩手前の所業であり、個人の資質によって行使できるかどうか、が大きく別れた為に『魔術』として編纂される際に取り零されたモノであったが故に階位指定は受けていないものの、編纂を受けて『魔術』として認識されていれば間違いなく『第九階位』認定はされていたであろう程の絶技である。


 そんな大魔術を、咄嗟の事であり意思の疎通が難しかったとは言え、ほぼ同時に二人それぞれで展開し、結果的に二重に展開する事になったのは異常の一言に尽きるであろう難易度の事であったが、この二人であれば仮に出来てしまったとしても何ら不思議な事では無いと言えるのが不思議な処。



 そうして防御を固める事に成功した二人の元へと、文字通り『白熱』する程の高温となった焔にて口腔を満たしていた『百年竜』が、その驚異的なまでの破滅の力を解き放つ。




 ━━━━まず、ソレが放たれた時、周囲を白い光が包み込んだ。




 見るモノの瞳を焼き焦がすであろう程の閃光を放ちながら解放された『白焔(はくえん)』は、真っ直ぐにシェイドとサタニシスが展開した結界群へと向けて殺到する。


 真っ直ぐに進むだけで周囲へと衝撃波を撒き散らすその『白焔(はくえん)』は、その輻射熱と衝撃波によって接近するただそれだけで張られた結界を数枚吹き飛ばしながら、直撃と共にまるで紙切れでしか無い様に幾枚もの結界を食い破って進んで行く。



 途中、耐熱性に極振りされたモノ、耐火属性に特化したモノ、破壊不能属性を付与されたモノ、と言った結界が多少持ちこたえたりもしたが、基本的には数秒程度の接触によって意図も簡単に破壊されて突破されてしまう。



 照射から僅かな時間により、展開した結界の殆どを破壊され、残るは僅かな数枚、と言う状態になるも、その時初めて結界が『白焔(はくえん)』と拮抗した状態となる。


 ソレは、二人が僅かな時間にて弾き出した、放たれている『白焔(はくえん)』に対して有効的なモノだ、と思われる属性や特性を後から複数付与したモノであり、今も大量の魔力を注ぎ込まれて存在を維持されると同時に、現在進行形にて新たな付与を受けて更に強固なモノへと変化を続けていた。




『…………小癪ナリ、不遜ナリ。

 ()ガ血族ト同様ニ、理不尽ニシテ避ケ得ヌ死ヲ受ケ入レヨ!』




 そんな事態を不快に思ったからか、未だに吐息を放ち続けていながらも、どうにかして発声した『百年竜』は放つ吐息の出力を更に上昇させた。


 ソレにより、それまでどうにか拮抗する形を見せていた特性の結界は、僅かな時間のみどうにか抵抗を示して見せたものの、接している場所の中心に皹が入り始めると、あっと言う間に全体へと伝わって行き、結果的に粉々に打ち砕かれる事となってしまう。



 未だに何枚かの結界が残されているとは言え、まさかそこまでの耐性や特性を付与した上で、とんでもない量の魔力を注いでいた結界が破壊されるとは思っていなかったらしく、二人の目が驚愕によって見開かれる。


 が、そうなったからと言って相手が手を弛めてくれるハズも無く、最外周となっていた結界が砕かれた事によって残されたモノへと吐息が激突して行く。



 …………当然の様に、二人は他の結界に対しても、有効だと判明していたモノを予め大量に付与してはいた。


 何せ、結界とは砕かれるモノ、と相場は決まっている上に、ソレを過信して準備を怠る様な事をしてしまっては、下手をしなくても死ぬことになる、と理解していたが故に、だ。



 その為に、残された数枚の結界には、先程砕かれたモノと同等か、もしくはソレ以上の強度と耐性を得られる様に無数の付与と強化が成されていたのだが…………




 ━━━━バリッ、ババババッ、パンッ!!!




 …………のだが、それらでさえも、出力を上昇させられた『白焔(はくえん)』を前にしては然したる抵抗を示す事すら出来ず、僅かな時間を稼ぐのが精一杯であり、殆どが接触とほぼ同時に破壊されてしまう。



 そして、ソレにより張っていた結界の全てが破壊されてしまい、とうとう『白焔(はくえん)』は彼らが展開した二重の『空間隔絶』へと激突する!




 ━━━━━……………………ッ!!!




 物理的な障壁では無く、ただ単に『位層の異なる空間』を展開している状態である為に、着弾による衝撃波も輻射熱による熱波も、発生はしなかった。


 それだけでは無く、文字通り『隔てられた空間』に居る状態となっている二人には、それらの影響も余波も届く事は無く、安全は確保されているかの様にも思われた。



 …………しかし……




 ━━━━………………ピシッ……!




 …………しかし、一見何も無い様に見える空間に、僅かながらも、確実に存在している事が見てとれる『皹』が出現したのだ。




「…………おいおい、マジかよ!?

 理論上は可能で、闇属性で空間攻撃をする以外の唯一の攻略法とは言え、普通はそんな事しやしねぇぞ!?」



「………………まさか、魔力で構成された存在である、と言う事を逆手に取っての、出力で上回る事で無理矢理突破する、だなんて手に出てくるだなんて、予想外に過ぎるんだけど……!?」




 完全に予想外の事に、流石に言葉の端々に焦りの色が浮かぶ二人。


 先程まで周囲に展開していた結界とは異なり、既に術式として完成しているモノに後から色々な要素を追加する事は『ほぼ不可能』『出来ない事は無いんじゃないの?』と言われる程度には難易度が高いモノであり、二人も『空間隔絶』程の術式に対して後から干渉する事が出来る程の技術は持ち合わせていなかった。



 故に、絶対の自信を持って展開した防御術式が、目の前で予想外の方法にて突破されてようとしている、と言う事態を見ているしか無い、と言う状況に、思わず言葉に焦りが滲んだ、と言う事だろう。



 とは言え、そんな彼らの事情に『百年竜』が頓着してくれるハズも無く、暫しの間拮抗して見せた一枚目の『空間隔絶』の防壁は、音もなく透明なガラスが砕けた様な光景を展開しながら突破されてしまう。


 そして、彼らが展開していた二枚目の『空間隔絶』へと『白焔(はくえん)』が激突し、その中心部へと皹を入れる事に成功したのだが、何故か唐突に照射されていたソレが細って行き、最後には消滅する事となる。



 唐突な事態に、思わず視線を突き合わせる二人。


 視線にて、何かやったか?いや、寧ろシェイド君の方じゃ無いの?と言ったやり取りを挟んでいた二人であったか、その耳を『百年竜』が放ったと思われる苦鳴が叩く。




『…………グッ、ガァ……オノレ、ヨモヤココマデノ出力デ、ココマデノ時間使ワサレル事ニナリナガラ、ソレデモナオ仕留メキレヌトハ……ッ!!』




 苦々しい色だけでは無く、確実に『苦痛』の色が滲んでいるその言葉に、釣られる形で視線をそちらへと差し向ける。


 すると、その先には、口腔周辺から白煙を棚引かせつつ、苦痛にあからさまな迄に表情を歪めている『百年竜』の姿が在った。



 …………既に、シェイドがそうであるように、膨大な内包魔力によって徐々にでは在るが修復は開始されている。


 が、ソレを以てしても、自らの放った吐息による輻射熱によって割れ砕けた鱗は未だに元には戻っていない様子であったし、遠目に見えるだけでも口腔内部や口周辺は無惨な迄に焼け爛れている事が見て取れた。



 吐息を照射し始めた時にはその様子は見られなかった事から鑑みると、恐らくは途中で出力を上昇させた時か、もしくは最終的に『空間隔絶』を破壊するべく魔力によるゴリ押しを行った事が原因となり、自身の耐性をも貫通する程の熱量を放ってしまった事によって自傷するに至ったのだろう、と思われた。



 とは言え、そんな損傷は見ている間に修復が進んでいるし、消耗していた魔力もこうしている間にも生産されて補充され始めている。


 …………故に、どの様な形であれ、こうして消耗している状態にて矛を交える事は、最早無い、と言えるであろう『好機』であった。




「…………やるぞ!

 今なら、ダメージも抜けて無い。自傷が残ってる内に、押し切るぞ!」



「…………了解!

 そうでもないと、手痛い反撃を貰っちゃいそうだし、悪くは思わないでよね!!」




 半ば叫ぶように言葉を交わした二人は、最後まで残されていた『空間隔絶』を解除すると、それぞれ左右に別れて飛び出しながら、各自で攻撃を放ちながら駆け出して行くのであった……。




対『百年竜』は一応次話にて完結予定


果たして、どうなる?

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