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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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反逆者は最奥にて信じ難いモノを目にする

 


 …………サタニシスに促されるままに、共に森の奥へ奥へと進んでいたシェイドは、遂に最深部の中でも『最奥』と呼ぶに相応しいであろう場所へと辿り着く事に成功する。



 不気味な程に魔物の襲撃を受けず、動物の類いの気配も無いままに進み続けた二人は、鬱蒼と繁っていたハズの森の中に在って不自然に拓けた広場に到着する事となる。


 当然、こんなに森の奥深くに人の手がそうそう入っているハズも無く、その上で居ると思われていたモノにも遭遇する事が無かった為に、警戒心が半端無く上昇し、その上でその広場から()()()()()を察知していた為に、特に手振り等にて打ち合わせる事もせず、自然と揃って気配を殺してそちら側へと忍び寄る形で移動していた。



 そして、広場を形成している最外縁の大木の影へと恙無(つつがな)く移動する事に成功した二人は、引き続き気配を殺した状態のままで、ソッと『嫌な気配』の出所へと視線を投げ掛ける。



 すると、その先には━━━━





『『『『『ゴルルルルルルッ……』』』』』



『『『『『ガァ、ギャァ…………ッ!』』』』』



『『『『『…………キィ、ピキィ……ッ!』』』』』





 …………その先には、彼らが先程倒したのとほぼ同等の大きさを誇る紅い鱗をもった『炎竜』が複数頭広場の中を闊歩していた。


 それだけでなく、それよりも一回り二回り程度小さいながらも、人と比較すれば十分な巨体を誇る『炎竜』がこれまた複数頭広場の中央付近にてじゃれあったり陽光を浴びながら昼寝をしていたりしている上に、中央部に佇む小山の近くではまだ産まれたばかり、とも見える卵の殻が着いたままの小さな個体も確認する事が出来ていた。



 とは言え、やはりソコに在るのは(すべから)く『炎竜』である。


 未だに尻に卵の欠片(と思われる)を着けながら地面を転がるソレとて、遠目に見る限りでも人の身の丈と同じ程度の大きさは在る事は、周囲に転がる獲物と思われる魔物の残骸から比較する事で視て取る事が出来ていた。



 そう言った多少の血生臭い要素を無視すれば、ソコに広がっていたのは平穏に暮らす『竜』の一家の団欒の光景、と呼べたかも知れないが、ほぼ最悪に近く最早『悪夢』としか表現の出来ない光景に、思わず顔をひきつらせながら木陰に頭を引っ込めると、隣で自身と同じ様に覗き込んでいたサタニシスへとシェイドが問い掛けて行く。




「…………なぁ、コレが、お前さんの言っていた『有り得るかも知れない可能性』ってヤツか?

 この、悪夢みたいな、と言うか悪夢その物な光景が?」



「まぁ、そうと言えばそう、かなぁ?

 私が想定していた『最悪』には届いていないみたいだけど、取り敢えず予想通りの光景であるのは、間違い無いよ」



「…………おいおい、まだ上が在るのかよ……。

 と言うか、コレのクソッタレな光景が、お前さんの言う処の『予想通り』だなんて、一体どんな予測を立てて予想していたんだよ?

 こいつらが自然発生出来る程に、ここの魔力濃度は高くは無いみたいだぞ?」



「まぁ、そうでしょうね。

 ソレに、私もここで偶然、同じ種類の『竜』が大量発生していた、だなんて風に思ってる訳じゃ無いからね?

 多分、こいつらはここで『殖えた』んだと思うのよねぇ」



「………………殖えた、だと……?

 確かに、魔物が魔力溜まりから自然発生する以外にも、普通の動物みたいに雌雄で番って子を作る、みたいな話は聞いた事が在るが、ここがそうだ、と言いたい訳か?」



「えぇ。私の見た限りでは、ね。

 シェイド君が知っているかは分からないけど、貴方達人間が『百年竜』と呼ぶにまで至った『竜』って、子を産んで殖えるのよ。番う事も無く、単独で」



「…………じゃあ、何か?

 お前さんの予想だと、そもそもここで目撃されていたヤツが実は『百年竜』レベルのヤツで、そいつがここでしこたま卵を産んで数を増やしていた、って言いたい訳か?

 少し前に俺達に対して喧嘩を売ってくれた二頭は、同じ様に親である『百年竜』に産み落とされた卵が孵って、ソレが成長した姿だった、って事か?」



「えぇ、多分、だけどね?」



「…………えぇ、マジで……?

 でも、だとしても辻褄が合わなく無いか?

 流石に、お前さんの言う処の測定法とやらで年齢の概算を出すのなら、大体『百年竜』レベルになると全長が二十mに到達するんだろう?

 十年前にはまだそこまで行っていなかった、としても、大体ソレに準ずるだけの体格だったハズなのだから、過小評価して報告するにも程があるんじゃないのか?」



「ソレに関しても、一応説明は出来るわよ?

 例えば、ここに住み着いた時点で既に、大元の一頭は『百年竜』レベルにまで成長していて、ここで産み落とした個体が人間と接触するまでその存在が露見しなかった、とか。

 もしくは、他の場所で産んで孵化、成長を遂げた個体と共にここに移住して来ていて、人間と遭遇したのはその子供の方だった、とか?

 後は、例外的に小柄な個体で、『百年竜』に近しい時間を生きてきたけど、そこまで身体が大きくはならなかったが、その後に卵を産める様になったからこうして殖えている、って感じかも知れないわね」



「…………どれも、最悪に近しい予想をどうも。

 …………しかし、どうするよ、コレ?

 駆除しない、って選択肢は実質的に無いとは言え、どうやるのか、って点は熟慮の必要性が在ると思うが?」



「って言っても、倒すしか無いんじゃないの?

 私達以外だったら、流石に撤退して戦力を整えて~、みたいな事になるかも知れないけど、倒すだけなら楽勝じゃない?」



「そりゃ、さっきのアレで俺の魔術も通る事は分かってるから、倒すだけなら適当に乱射すればどうにかなりそうだが、それじゃアカンでしょうよ」



「…………え、ダメなの?

 ソレが一番手っ取り早くて確実だと思ったんだけど……?」



「だって、ソレしちゃったら素材もナニも無い位にグチャグチャのバラバラで、実にスプラッタな状態になるんだぞ?

 幾ら数が居るからって、流石に勿体無くないか?幾らになると思ってるよ?」



「いや、相場知らないから分からないけど、理由ソレ?

 もうちょっと、何か無かったの?物欲全開じゃない??」



「いや、そう言うがお金は大事よ?

 無いなら無いでどうにでも出来るが、無ければほぼ何も出来なくなるからな?

 ついでに言えば、ここで稼げた分が後日の買い物資金になるって事は、勿論承知しているよな?」



「よしっ!なら、頑張って皆殺しにしましょうそうしましょう!

 出来るだけ傷付けずに、綺麗な状態で!!」



「ちょっ!?バカッ!声がデカイ!!」




『『『『『ガァァァァァアアアアッ!?』』』』』




「ヤベッ!?気付かれた!?」




 広場にて群れていた『竜』の鳴き声が変わった事により、自分達の存在が発見された、と判断した二人は、咄嗟にそれまで隠れていた木陰から飛び出して行く。


 すると、その次の瞬間にはそれまで彼らが隠れていた場所へと目掛けて無数の魔術が降り注ぎ、あっという間に人が容易に隠れられるだけの太さを持った大木を、呆気なく削りきってへし折って見せた。



 一撃一撃が重く、少なくともシェイドであっても意識的に結界を張り、ソレで受ける事をしなくては無事では済まされないだけの威力が在る攻撃が、少なくは無い頭数によって弾幕めいた密度にて放たれる事となっている。


 その事実に、思わずシェイドも表情を苦々しいモノへと変化させながら、無意識的に流れて帰宅中冷や汗を指先で弾きながらサタニシスへと指示を飛ばす。




「取り敢えず、数を減らせ!

 どうせこれだけ頭数が居るんだ!何体かなら、グシャグシャになったって構いやしねぇだろうよ!!」



「了解っ!

 なら、まとめて吹き飛べっ!!」




 彼の指示により、それまで弛く円を描くようにして回避に専念していたサタニシスも、その両手に魔力によって編まれた魔法陣を展開すると、ソコから無数に闇属性の魔力によって構築された、無数の魔力の弾丸を射出して行く。



 直接空間に干渉する事を可能とする闇属性の魔力によって編まれ、ある程度までの物理的な防御力ならば無視してダメージを与える事の出来る凶弾が、弾幕、だなんて言葉が陳腐に思える程の密度にて、さながら文字通り『雨の様な数』が群れる『炎竜』に対して降り注ぐ!




『『『『『ガァァァアアアアッ!?』』』』』



『『『『『ギャアッ!?ギャアッ!?』』』』』




 それにより、未成熟体(推定十年前後の個体)と幼成体(見るからに子供な個体)が大きな被害を受け、周囲に悲鳴が轟いて行く。


 …………が……





『『『『『グルルルルルルルッ!!!!』』』』』





 が、しかし、既に身体が出来上がっている成体(推定で十mを超えている個体)は、その分厚い鱗と筋肉によって十分な防御力を発揮し、その上で咄嗟に張り巡らせた結界によって後続や周囲の個体を守ったり、余剰魔力による超回復等によって負傷を修復し始めていたりもした。


 更に言うのであれば、幼成体こそ地面にて弱々しく鳴いたりもがいたりするのが精一杯、と言った感じの重症となってはいるのだが、未成熟体にしても大きな負傷こそ受けてはいるものの地面に倒れ込んだりしている個体は多くは無く、殆どの個体は脚を震わせながらも立ち上がって二人に向かって牙を剥き出しにて威嚇行動を取っていたりもする余裕が在る程であった。



 そんな『竜』の群れに対して苦々しげな感情を隠そうともしていないながらも、同じ様に弾幕を張り続ける事で全体的な消耗を狙おうとサタニシスが企んでいる時、彼らが辿って来たのとは別の方向から、今度は別の個体群が広場へとその姿を顕にし始める。



 他の成体と比べても一回り以上大きく、最初に出会した二頭と比較しても体格や戦意と言ったモノがより大きなそいつらは一瞬で状況を把握したらしく、威嚇する様な事もせず、即座にシェイドとサタニシスの二人を排除するべく魔術を展開すると、躊躇い無く放ち始めるのであった……。




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