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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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反逆者は目的地へと到着し、そこで目当ての獲物と遭遇するが……

 


 ギルドにて依頼を受理する事に成功したシェイドとサタニシスは、建物を後にすると依頼に在った場所へと向かって早速移動を開始する。



 討伐するべき目標は、その一種類にて『人類の脅威』としての認定を受けている『竜』だ。


 その為に、特別緊急性が高い案件、と言う訳でも無い事もあり、一度は『何処かで一泊して十分な休息を取ってから行けば良くないか?』との意見も二人の間で交わされる事となったりもした。



 が、そこはシェイドによる




『確かに疲労が無い訳じゃ無いが、それなら休んでからまた疲れるより、全部終わらせてから休んだ方が気持ち良い(?)だろう?

 それに、一応共通貨であるアルカンシェルの硬貨は持ってるけど、まだここアルベリヒの現地通貨は持って無いから、資金の方を先に稼いでおきたい、って事情が無いでもないんだがね』




 と言った、ヤる時はヤる、休む時は休む、と言うスイッチをハッキリさせたいシェイドの言葉と、彼が敢えて言葉にはしなかったものの、彼が何を指して『資金』と言ったのか、を察したらしく瞳をキラキラと輝かせながら嬉しそうにしていたサタニシスもその方針に従う事を決めた為に、結局の処碌に休息を取る事もせず、旅装を解く事もせずに現地へと向けて出発する事に相成った、と言う訳なのだ。



 当然の様に、出る時の門番からは訝しむ様な視線を受ける事にはなった。


 何せ、入った当日に出るだけでなく、ほぼ滞在時間が数時間も無い内に都市の外に出ようとしている、と言うのだ。



 明確に『何時入った』と言う記録は取られていないとは言え、そんなに直ぐに出ようとするからには、何かしら怪しげな事をしようとしているのでは無いのか?と疑われるのも当たり前だと言えるだろう。



 とは言え、一応処では無い位に『お仕事』での出入りを行おうとしている訳なので、そこはカードと依頼書(受諾済み、のサイン入り)を提示してゴリ押しし、多少無理矢理だったかな?と言う感じが無いでもなかったものの、取り敢えずは無事に通過する事に成功する。



 そして、当然の様に、馬車や馬(の様な騎乗用の四つ足の生物)を使う事もせず、自らの足にて駆けて行くシェイドとサタニシス。


 元来恵まれた身体能力を持つサタニシスと、封印されていた魔力が解放された事によって急成長を遂げたシェイドの持つ高い身体能力に加え、二人ともに純粋な魔力操作による身体能力強化を扱える為に、下手な乗り物に乗るよりも、疲労度の面でも速度の面でも効率良く移動できる為に、それらを必要としていない、と言うのが実情であるのだろうが。



 現に、時折すれ違う馬車や彼らと同じ様に自らの足にて移動している人々からは、背後からすれ違えば『何事か!?』と言う視線を向けられ、正面から行き違う人々からは『アレは本当に人間か?』と言った驚愕に満ちた視線を向けられる事となったりもしたが、特に気にする必要は無い、と割り切っている二人は足を緩める事はせず、ひたすらに街道を駆け抜けて行く。



 そうして駆け続ける事一時間程。


 二人の姿は、既に街道の上では無く、目的地として定めていた森……と思われるソレの前へと到達していた。




「…………地図の感じだと、多分この森で間違ってはいないハズだ。多分だがな」



「そこは、お姉さん的には断言して欲しかったかなぁ~」



「いや、寧ろ断言される方が不味いだろうに。

 事前情報も碌に無く、土地勘も何も無い俺が断言したとして、ソレが本当に信頼の置けるモノだと言えると思ってるのか?」



「まぁ、それを言っちゃえばお終いなんだけどさぁ~。

 お姉さんとしては、女の子的にそこはズバッ!と断言して、男らしい面を見せて欲しかったなぁ~、ってね?」



「…………逆に、いい加減な事ばかり言って碌に確認しないのは、不誠実で男らしく無いんじゃないのか?」



「あっ!?

 それ、確かにそうかも!」




 なんて会話を繰り広げながらも、特に別の森へと移動しようとする素振りを見せないシェイドとサタニシス。


 端から見れば、特に何もせずに会話を交わしているだけにしか見えないかも知れないが、その実としては既に魔力による探査を行っており、この森の中心付近に大きな魔力の反応が在る事に気が付いていた為に、移動せずここがそうなのだろう、と判断しての行為だったりする。



 …………が、そうして探査を行い、その反応からこの森に潜む魔物がどの程度の力を持っているか、どの程度の数が居るのか、までざっくりと把握する事には成功していたシェイドであったが、一つだけ懸念すべき点が残されていた。


 それは、大きな魔力の反応が見られた最深部、森の中心付近の詳細な情報が彼には得られなかった、と言う事。



 一応、その辺りに大きな魔力の反応は確認できた為に、その周辺を詳しく調べてみよう、と彼が改めて魔力の波を放ったのだが、その時には既にその周辺の情報を探る事が出来なくなっていたのだ。


 まるで、魔力の波を吸収する結界にでも覆われているかの様に、その場に放ったモノのみが綺麗に返って来なくなってしまった為に、追加で情報を得る事が出来なくなってしまっていたが、それは逆説的に『そこにはソレが出来るだけの存在が居る』と言う何よりの証拠と情報をもたらしてくれた為に、ある種の『痛み分け』と言える状態にはなっているかも知れないが。



 …………実を言えば、この方法にて自らの存在を隠せるモノ、と言うのはそこまで多くは無いし、言う程には容易くも無い。


 寧ろ、技術的な事を言うのであれば、魔術を用いて自らの姿を相手の目に映らなくしたり、地面に潜ったり空を飛んだりして探って来た相手をやり過ごす方が余程簡単な事だ、と言えるだろう。



 だが、この森の最深部に居座り、かつ彼をして『侮れない』と思わせる程に大きな魔力を持つソレは、あくまでもその場を捨てて『逃げる』事では無く、あくまでもバレていると分かった上で『隠す』事を選んだのだ。


 例えそれが、こちらの興味を掻き立てる事になり、縄張りとして設定されているであろう場所の奥深くへと踏み込まれたとしても、その果てに戦闘へと発展する可能性が高い、と言う事を理解した上で。



 そうなったとしても、相手を踏み潰し、打ち破ってしまえばソレで良い。


 そんな風に思っての行動かも知れないが、その裏には確実に『戦いになったとしても捨てられない『何か』』がソコには在る、と自ずと語る事になってしまっているのを承知の上で、だ。




「…………そうしてまで隠したいモノ、手元に持ち続けていたいモノって、一体何なんだ?

 まさか、物語みたいにお宝でも溜め込んでいる訳でも無いだろうし……」



「…………ん?

 あ……っ!そう言えば、人間って『竜』が強欲で、宝物を沢山巣に溜め込んでいる、とか思い込んでいるんだったっけ?

 あの子達、頭が良い事は認めるけど、流石にそこまでじゃ無いと思うよ?流石に、夢見すぎなんじゃ無いかしら?」



「…………そうなのか?

 俺としては、直に見るのはこれからが初なんでな。まだ、遭遇した事は無いんだよ」



「そうなの?

 普通に受けてたから、てっきり何頭か殺ってるんだとばっかり……」


「いや、初めてだよ。

 だから、実際にどうなっているのか、に付いては全然でな。口振りからすると、ソコソコ詳しそうに見えたから教えて貰えると助かるけど、そこら辺どうだろうか?」



「別に構わないけど、言う程私も詳しい訳じゃ無いわよ?

 一応、身内、って呼んでも構わない程度には親しい間柄の魔族の中に、私達が『竜』や『龍』って呼ぶ存在の源流に近しいヒトが居るからある程度は知ってるけど、言い換えればその程度でしか無い、って事だからね?」



「…………え?なにソレ、初耳。

 その人……人?って、魔族なんだよな?魔物じゃ無くて?」



「あ、これも人間は知らなかったんだったっけ?

 魔族って魔物の中で産まれた特異個体、知能が高かったり言葉を話せたりした個体の集まりが源流だから、旧い世代でまだ生きているヒト達なんかは、外見が私みたいに人間寄りじゃ無くって魔物寄りの見た目をしていたりするのよ」



「………………それって、世代交代の過程で進化が進んで、人に近い外見を獲得した、って事か?

 それとも、世代交代の途中で人の血を取り込んで……とか?」



「………………ふふっ。

 さぁ、どっちでしょうね?」




 何故か艶然とした笑みと共に、はぐらかす様な言葉にて会話を打ち切るサタニシスに対してシェイドは、内心にてモヤモヤとした感情を抱きながら森の中へと足を踏み入れて行く。



 中途半端に出された情報に、思わずアレコレと考えさせられる羽目になりはしているが、『それはそれ』として自らの内で暴れる好奇心をどうにか宥め透かしてソレなりに険しい森の中を、一路奥へ奥へと進んで行く二人。



 割りと方向やその他は適当であるし、特に気配や姿を隠そうと工夫している訳でも無い為に普通に他の魔物からも襲われているが、その手の雑魚は軽く鎧袖一触に蹴散らしながら、どうせ逃げはしないのだろうから、と真っ直ぐに最深部へと目掛けて突き進んで行く。


 すると、彼らの健脚であれば当然の事として、あっという間に目的地である森の最深部周辺へと到着する。



 特に、ここからが最深部である、と言う明確な仕切りが在る訳でも無い。


 が、その奥には、目に見えないながらも強大な存在感を放つ『何か』が、明確に『己の領土(居場所)である』と主張しているのだろう、と言う事を窺わせるモノとして、抉られた大岩や薙ぎ倒された大木と言ったモノ転がされて背景へと溶け込んでいるかの様であった。



 が、元より『竜』を倒す事のみを目的として訪れている二人からすれば、明確に居場所を示してくれている、と言う事で微塵も怯えを顕にする事も無く、転がされているモニュメントも意に介した様子も見せずにズンズンと突き進んで行く。



 そして、その結果として、縄張りと思わしき場所に踏み込んでから直ぐに『竜』と相対する事となる。



 …………バキバキと音を立てながら木々を薙ぎ倒し、魔物の王、とも呼称される『竜』が彼らの目の前へと、自らその姿を晒して行く。


 その全身を包む鱗の色合いや、大体の年齢を体長によって予測した場合の分類として『まだソレなりに若い』と判断できる年頃であったので、依頼書に載せられていた個体と判断した為に、迅速に相手を無力化させる、と決断を下した彼が、腰に差していた得物を抜き去ろうとしていたのだが…………。




「…………おいおい、流石にこれは聞いてねぇんだけどなぁ……」




 …………していたのだが、その個体の後ろからもう一頭、先に姿を現したソレと同程度の大きさが在る『竜』が、彼らへと向けて縦長に裂けた瞳孔を細めながら、シェイドとサタニシスの二人を上空から睨み付けて見せるのであった……。




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