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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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反逆者は今後の対策を練り始める

 


 唐突に重力場でも発生したのか?と思いたくなる程の圧力と存在感を放ち始めたそちらへと、思わず慎重に視線を向ける事となってしまったサタニシスとアルバース。


 二人の視線の先には当然の様に、部屋の中へと共に入り、かつ二人以外の存在と言う意味合いでは、ソコに居て然るべき存在であるシェイドの姿が在った。



 居ることそれ自体は、不自然でもなんでも無いシェイド。


 しかし、彼の放つ気配や雰囲気は、到底『人』として許容出来る範囲のソレを遥かに超えたモノとなっており、最早ソレ以上の何か、と言った様相を呈する迄になっていた。



 それでいて、彼が浮かべている表情が、二人の背筋を更に冷たくする原因の一つとなる。



 …………怒りを浮かべているのであれば、まだ良かった。それならば、まだ理解できていただろうから。


 同様に、憎しみや殺意と言った好戦的な表情や、怒りを通り越して笑みを浮かべていたとしても、恐らくはまだ理解出来る範疇の物事である、と判定する事も出来てはいたハズだ。



 …………しかし、彼が表情としてその顔に浮かべていたのは、怒りでも、憎しみでも殺意でも、それらを超越した笑みでも無く、ただただ何も浮かべられていない、まるでお手本の様な『無表情』であった。



 人間、生きていれば、何かしらの感情や温度を顔に出すのは当たり前の事。


 訓練を積む事でそれらを隠す事は可能であるし、相手に自身の内心や表情の変化による感情の機微を悟らせない様にする、または覆い隠して相手に読み取らせない様にする、と言った様な事柄は、広くは無いが確実に確立されている技術の一つである事は否定は出来ない。



 だが、だとしても、そうした場合には、その表面だけとは言え()()()()()()()のだ。


 何かを覆い隠しているのであれば、そうして隠すために使っている『笑顔』なり、『真顔』なりが何かしらが在るし、そうでは無く内心を悟らせない様に異なる感情を浮かべていたとしても、そうして表に出している『何かしら』が相手の目に飛び込んでくる事にはなるハズなのだ。



 …………しかし、彼には、今の彼にはソレすらも無い。


 文字の通りに、彼の表情には一切の感情や衝動が乗せられてはおらず、ただただ『ソコに在るモノ』として何を考えているのかが一切感じ取る事が出来ないままで、異様なまでの存在感と威圧感を周囲へと放っているのだ。



 ほんの少し前に初めて彼の威圧感に晒されたアルバースは当然として、彼の人となりを幾ばくか理解した上で幾度も直近で浴びる経験の在ったハズのサタニシスでさえ、言葉を失いその場に固まる他に無くなってしまう程の重圧感。


 文字通り、彼の放つ魔力が無意識的に周囲へと干渉し、彼の持つ固有魔術である【重力魔術】を発現させる事により、周囲の重力を引き上げているのだろうが、彼が本気でソレを行っていればサタニシスはともかくとしてアルバースが人の形を保っている事は不可能である為に、恐らくは『故意的に』と言う訳では無いのだろう。



 だが、それでも周囲に与える物理的・魔術的な影響は計り知れない為に、サタニシスはどうにか近付いてソレを止めさせようと試みる。


 ………………が、その前に、当の本人であるシェイド自身が、まるで温度の見えない程に平坦な声色にて口を開いて行く。




「………………なぁ、一つ聞いても良いか?」



「…………は、はいっ!

 自分に答えられる事でしたら、何なりと!!」



「………………俺の事を広めたのは、マーレフスミスのギルドマスターであるフレスコバルディなんだったよな?

 なら、アイツが今どうなっているか、何か知っているか?具体的に言えば、何かしらの感覚を喪失したらしい、とか」



「………………?

 い、いえ。自分はそこまで耳聡い訳では在りませんので、確かな事は言えませんが、ソレであってもその様な事態は過分にして聞いた覚えも無く……。

 それに、彼のギルドマスターは、貴方の立身の立役者ですので、そう言う意味合いから考えますと、もしそうなっていた場合には確実に何かしらの噂や情報が流れて来ているハズですが……?」



「………………と言う事は、アレか?

 ヤツが『ギアス』を解除する手段を見付けたか、もしくはソレが発動している事をひた隠しにしているのか、はたまた結んだ『ギアス』その物に不備が在ってその穴を突かれたか、って事か?」




 その問いに確たる答えを出せる者が居なかった為に、室内は暫し沈黙に支配される事となる。


 が、問いを発した本人であるシェイドは、恐らく答えは最後のソレであろう、と言う確信が在った。



 …………ああして問い掛けはしたが、彼が自身で掛けた『ギアス』だ。


 発動するか、もしくは解除された、なんて事になれば、嫌でも気が付く事になる。流石に、そこまで術師として未熟では無いのだから。



 では、次の可能性が無い、と言える理由は何なのか?


 ソレは、流石に言わずもがなであろうが、人が自らの持っていた感覚を一つ唐突に喪失したのであれば、大なり小なり支障が出る事になる。幾らひた隠しにしたとしても、必ず無理が出るし、その綻びから情報は内部へと拡散して行く事になる。



 更に言えば、それらを元々覚悟しており、その上で周囲に不自然だと思われない様に準備を整えた状態にて行った、と言う事も恐らくは無いだろう。


 仮にそうだとしたのならば、代役、とまでは行かなくても、少なくともフレスコバルディの仕事を幾らか受け持つ事の出来る幹部クラスの人員の補充が行われ、その際の人事や人の流れ等が情報として何処かしらに流されるハズだ。それが無いのであれば、やはりそちらも無い、と言う事になる。



 可能性の話をするのならば、人質等を取られて無理矢理『ギアス』の誓約を無視する形で第三者が公表させた、と言う事も有り得なくは無いのだろうが、シェイドが知る限りで、と言う事になるが、フレスコバルディと言う人物はそんな隙を見せる程に間が抜けている訳でも、鈍い訳でも無いと思っていた為に、やはりそれも無いのだろう、と判断していた。



 …………故に、彼の中で残された可能性として挙げられている『契約の穴を突かれた』と言う事が正しかったのだろう、と言う結論に至っている訳なのだ。



 とは言え、今更どうにも出来はしないのだろう、と言う事は嫌でもシェイドには理解できている。



 既に訪れた事の在る場所である以上、今すぐ空間跳躍の魔術によって強襲し、事の首謀者であろうフレスコバルディのバカタレに拳骨を振り下ろす事は容易く出来る。


 また、口外しない、と言う約束を破られた代償に、とマーレフスミスのギルドをペシャンコにしてやる事も彼にとっては容易い事だ。



 別段、手が届かない場所に逃げ込まれている訳でも無いのだから、報復するのに不可能は無いし、否やも無い。


 …………が、そうしたからと言って、何かしらの意味が在る、と言う訳でも無いのが非情なる現実、と言うヤツだ。



 何せ、既に事の次第は情報として表に出てしまっている。


 彼の目の前で顔面を青ざめさせているアルバースが、アレだけ事の詳細を承知している段階で、ソレは明白な事実である、と周知されてしまっていると考えて然るべき事であろう。



 …………例えそれが、限定的な場所でしか流布されていない事柄であったとしても、既に広まってしまっている以上は文字通り発信源を叩いても意味はないのだ。



 それこそ、大本であるフレスコバルディを叩き潰し、マーレフスミスのギルドを壊滅させ、周辺の民衆を故意的に自身の存在をアピールしながら虐殺を敢行する事により、ソレまでの評価をひっくり返す様な所業を行うと同時に噂を知っている者を皆殺しにする、位の事をする必要性が出てしまう。


 流石に、勝手に流布された報復に、とやるにはやり過ぎであるし、何より実行可能であるが面倒に過ぎるし確実性も保証は出来ていない。



 しかも、そこまでヤってしまえば今度こそ確実に指名手配を食らう羽目になるだろう。


 追手の手に掛かって果てるなんて事は有り得ないだけの自信は在るシェイドだが、流石に人類の文化圏での生活を手放してまで行う必要性は感じていないのだから。



 が、だからと言ってこのままで済ませる、と言う事は有り得ない。


 何せ、このままでは『英雄』と言う名目で『使い勝手が良くて使い潰せる戦力』として国や組織から目を付けられ、使い潰される事になるのは目に見えているのだから。




『『英雄』なのだからこの程度無償でやって当然。寧ろ、何故自発的にやらない?』『人々に認められて初めて『英雄』となるのに、その人々に奉仕し返すつもりは無いのか?』『『英雄』と呼ばれて調子に乗っている様子だが、少しは立場と言うモノを弁えたらどうなのだ?』




 この先掛けられるであろう、数々の権力者からの自身にとって都合良く彼を動かそうとする詭弁の数々に、内心で憎悪感を膨らませつつ、そうならない様にするにはどうすれば良いのか?を考えて行くシェイド。



 …………上手い具合に都合良く転がされる、と思われなければ良い。


 だが、そうするにはどうすれば良いのか?


 ………やはり、政権に対して非協力的であり、その上人情の類いで動かせる存在でも無い、と知らしめるしか無いだろう。要するに、嘗められなければ良いのだ。


 しかし、そうなるとどの様な対応を取れば、使い勝手の良い駒、だなんてバカにされなくても済むのだろうか?


 アレか?やっぱり王宮や王城の一つでも爆破するなり、叩き潰してやれば良いのか?


 …………なんだか、そうするのが正当解である様な気がして来た。


 そうだ。そうすれば、嘗められる様な事にはならなくなる。


 仮に、そう言う風に事を運ぼうとされたのなら、こちらもそうしてやれば良い。そうだ、ソレが良い!




 ━━━━と、そんな感じで、内心にてグルグルと考え事を続けていたシェイドは、彼が無意識的に放つ重圧を止めさせる為にサタニシスから肩を叩かれるまで、一人で過激な反撃方法を考え続けて行く事になるのであった……。




コロナワクチン、二回目打ち終わったのですが、発熱は無い代わりに打った腕が上がらない程に痛くなったでござる……(--;)

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