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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
二章・力を手にした反逆者は復讐を開始する

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目覚めた反逆者は、新しい生の為に行動する

ここから新章

 


 翌日、朝。



 普段彼が起き出す様な、朝靄に包まれた時間帯…………から大分時間が過ぎ去った頃合い。


 一応、未だに『朝』と呼ばれ、開けるのが早い店以外はまだ開店すらしていない時間では在るものの、それでも普段彼が起き出すタイミングと比べれば『遅い』と言わざるを得ない時刻になって漸く、シェイドが潜り込んだベッドに動きが見られる事となる。




「………………っ、あぁ……クソッ、ちと寝過ぎたか……だりぃ、と言うか、身体中痛てぇ……」




 ベッドから身体を起こし、布団から抜け出した彼の身体を部屋へと射し込んだ陽光が明るく照らし出す。


 ……が、しかし、そこに在ったのは、昨日までの痩せ細った矮躯の少年の姿、とはとても思えないモノであった。




「…………あ?なんだ、こりゃ……?」




 身体が訴える各所の痛みと、何故か視線が違う様な感覚に喉が訴えてくる違和感とが合わさり、寝起きでハッキリしない頭でありながらも『何かおかしい』と判断したシェイドは、ベッドから降りると部屋に備えられた姿見へと視線を向ける。


 するとそこには、以前から毎日良く見知っていたハズの己の姿は、存在していなかった。



 何故なら、それまでは同年代の平均的な身長を持つイザベラと同じ位か少し低かったハズの身長は大きく伸び、軽く彼女よりも頭一つ分は高くなっている事が目測から予想出来た。


 それに、今まではギリギリ筋と肉とで骨が浮かずに済んでいる、と言う程に痩せていたハズの身体に、未だに太く大きく逞しく、とは言えないながらも確りとした筋肉が付いて体格を一回り程大きくしてくれている事が見て取れた。


 更に言うのならば、先程漏らした呟きにより、それまでは声変わりが訪れることが無く高いままであった声が、若干ながらも低く掠れて来ているのが感じ取れた。



 ……まさに、彼がこれまで嘱望し、それでいて決して与えられる事の無かった『成長した肉体』が、彼の目の前に突如として現れる事となったのだ。



 それに驚愕しつつ、かつ全身を襲う痛みに耐えながら、彼は一つ納得する。




「…………成る程。いきなりこうなった、った事は、俺の魔力があの糞親共に封印されていたから、一緒に成長も阻害される事になっていた、って訳か。

 道理で、背も伸びないで身体もでかくならない訳だよ。成長するのに必要な基が奪われてたんだから、そりゃでかくなるハズも無いわな。

 …………となると、今感じてるのが、所謂『成長痛』ってヤツか?今まで来た事無かったから新鮮な感覚では在るが、流石にちと不快だな……あと、腹減った。無性に」




 グゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウッ、ギュルギュルギュル!!!




 彼が納得の呟きを溢すと同時に、餓えたキマイラの唸り声さながらの重低音が部屋の中へと響き渡る。



 それもその筈。



 何せ、最後に食事をしたのは、昨日の昼過ぎ。


 しかも、それもキマイラとの戦闘で消耗した体力や、回復によって消費した分の体力を補う為のモノであり、元より食が太くは無かったシェイドが精一杯腹に詰め込んだと言っても、実の処そこまで大量に採った訳でもない。精々、二人前が良い処だろう。



 なのにも関わらず、魔力が解放された事で一気に成長する事になった彼の身体は、当然の様にその程度では到底足らず、強烈に血肉と成す為の栄養を求めて彼の腹を盛大に鳴らす羽目になった、と言う訳だ。



 自らの腹から発せられた轟音により、寝過ぎる程に寝た事でぼやけていた彼の頭も完全に覚醒を果たすが、昨日の昼にて保存庫の肉類は殆んど食い尽くしてしまった事を思い出し、取り敢えず服を着て行動を開始するべくクローゼットへと向かう。



 …………が、ここで一つ問題が発生する。




「………………やべぇ、今まで極度にチビガリだったから、今まで着てた服が入らねぇ……」




 ……そう、辛うじてシェイド本人だと判断出来る程に急速な成長を遂げた彼の身体では、以前来ていたズボンは丈が足りなくなってしまっているし、シャツもパツパツで着ていると不恰好で仕方無くなってしまっていた。



 流石に、下着の類いはまだ一応は大丈夫だったが、流石に外へと着て出られる様な格好にはとてもではないがなっていなかった為に、舌打ちを一つ漏らしてからとある部屋へと向かって行く。



 ……そして、その部屋を漁る事暫し。


 そこには、若干ブカブカながらも、取り敢えずは外を出歩いても大丈夫だろう、と思われる程度には服装を整える事に成功したシェイドの姿が在った。




「…………ちっ!最低だ。

 なんで、俺があの糞親父の服なんぞ着なきゃならねぇんだよ!クソッタレ!

 しかも、あの野郎。今の俺より背丈も高くて、ガタイも良かったみたいじゃねぇか。スゲェムカつく!」




 そう、彼が入って行った部屋こそ、彼の亡くなった父親であり、かつ彼の魔力を封じ込めていた実行犯の片割れであるグライスが使っていた部屋だ。



 …………かつて、彼の両親が僅かな肉片として帰還し、ソレを墓穴へと納めた後、彼らはまだ二人の死を受け入れる事が出来ずにいた。


 その為、二人の部屋を片付けたり他人が奨める様に家を売り払ったりする事は、二人の死を認めた様であった選択する事が出来ずにいたのだ。



 尤も、そのお陰でこうして、服の丈が足りずに無様な姿を衆目に晒す事を防げたのだから、良しとするしか無いのだろうが。


 まぁ、流石に服のデザインは流行りからは外れているし、数年間仕舞いっぱなしであった為に多少埃やカビ臭くなってしまっているのはご愛敬、と言うモノだろう。



 とは言え、最低限の格好は整った為に、なけなしの金貨を貯えから財布へと放り込んで家を出るシェイド。


 行き先は、両親が生きていた時からの行き付けであり、妹には良い顔をし続けて来た肉屋。



 彼の家からそこまで離れている訳では無いその肉屋は、一応は店を開けている様子であったが、店主である親父はやる気無さそうに欠伸を漏らしながら気怠そうにカウンターの内側に立っていた。



 そんな親父も、近付いて来る影を見れば愛想良さそうな笑みを張り付けてそちらへと顔を向けるが、それがシェイドだと気が付くと途端にやる気無さそう雰囲気に立ち戻り、まるで野良猫でも追い払う様に『シッ!シッ!』と彼に向かって手を振る。




「…………はぁ、なんでまた、カテジナちゃんじゃなくて『無能』のお前が来るのかねぇ……。

 何のつもりで来たのか知らねぇが、お前に売ってやるつもりはねぇよ。ウチの肉が買いたきゃ、カテジナちゃんにお願いするこったな」



「……はっ!客相手に、随分な態度取ってくれるじゃねぇか、あぁ?

 だが、そう言う態度とる相手は、少しは考えて選んだ方が良いぞ?()()()()()()()()()()()、な」



「…………あ?てめぇみたいな『無能』が、人様に偉そうな口叩いて良いとでも思ってんのか…………って、え……?」




 なに抜かしてやがんだコイツ?と言わんばかりの態度で、それまで頬杖を突きながら視線すら寄越さずにいた肉屋の親父だったが、彼の生意気な一言(親父視点)に釣られる形で視線を向けると、そこには分厚い一枚板にて作られていたハズのカウンターを無音のままに素手で握り潰しているシェイドの姿が在った。



 本来ならば、到底成し得ないであろう事を難なく成してしまっている、自身が『無能』と呼んで蔑んでいた存在を前にして呆然としていた肉屋の親父だったが、その胸ぐらを掴まれて上半身がカウンターの上に乗り出す形で引き出される事で、どうにか自分を取り戻す事になる。




「……で?いい加減、テメェの立場は理解出来たかよ?あ?

 出来てるんだったら、さっさと仕事しな。コレで買えるだけ、さっさと肉包め」



「…………と、と言われても、お前さんも知ってるだろう!?

 ウチは、肉の仕入れは昼前だ!一応は開けちゃいるが、この時間だったら昨日の売れ残りしか残っちゃいないぞ!?」



「それで良いって言ってんだよ。

 良いから、在るだけさっさと出しやがれ。でなきゃ、テメェをこのカウンターと同じ状態にして、俺が直々に店の中漁ってやっても良いんだが?」



「ひっ!?

 わ、分かった!分かったから!ちょっと待っててくれ!」




 掴まれていた胸ぐらを突き放された事により解放された親父は、カウンターの中で尻餅を突くと転がる様にして店の奥へと引っ込んで行く。



 そして、店の奥に在る冷蔵の魔道具から肉の塊を引っ張り出して来ると、作業台の上に下ろして彼へと窺う様な視線を送って来た。



 その為、シェイドは先程カウンターに叩き付けた金貨を指で弾きながら一言




「ステーキ。極厚で」




 と注文を出す。



 銅貨二枚も在れば小さなモノならパンが買え、銀貨一枚在れば四人家族が一日過ごすのに不足する心配は無い、と言うこのご時世に於いて、金貨を得られるのは中々に大きい商いと言える。


 その為に、それまで恐怖に駆られていたハズの親父も、その黄金の輝きに魅了されたのか視線を逸らさずにゴクリと唾を飲み込んで見せる。



 しかし、そんな親父に対してシェイドが軽く殺気を出して作業の続きを促しつつ、視線を集めている金貨をその手の内に握り込んでしまう。



 さっさとしなけりゃ、お前を潰して他に行く。



 無言のままに込められた言葉を感じ取っていたのか、冷や汗を流しつつ肉の塊に向き合うと、下げられていた巨大な包丁を振るって巨大な塊からステーキ用の肉へと分厚く切り分けて行く。



 そして、切り出したステーキ肉が二十枚近くに達した頃、シェイドの機嫌を伺う様にしながら彼へと問い掛ける。




「……と、取り敢えず、金貨一枚だとこの位の量になる。

 だ、だが!別に吹っ掛けてる訳じゃないぞ!?他の客もこの位だし、寧ろ幾らか割り増ししてる位だ!

 悪いが、これ以上を、と言われるなら、ウチじゃ無理だぞ!?」



「…………ふん、まぁ、良いだろう。

 そらよ。代金だ。

 別段、押し込み強盗に来た訳じゃねぇんだから、あんまビビってんじゃねぇよ。アホらしい。

 ほら、さっさと寄越しな」




 そう言って、必死に言い訳している親父に向かって手にしていた金貨を投げ付けると、包まれた肉が詰め込まれた紙袋を引ったくる様に奪い取ると、店に背を向けて去って行くのであった。





因みに硬貨は百枚で上の種類に上がる計算です

(銀貨一枚=銅貨百枚)(金貨一枚=銀貨百枚)

出て来てませんが金貨以上の硬貨も在る設定です

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― 新着の感想 ―
[一言] 前に暴力振るったときは証拠を出せとか信じてくれないとかで後々面倒そうだけど殺されかけたわけだしいいのかな?って思いましたが、ただの買い物で一応危害は加えられてない相手にこんな脅すようなことし…
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