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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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監視者は反逆者の扱いに唖然とする

 



「…………で、取り敢えず何でそんな事になっているのか、説明して貰っても良いかな?

 そうでないと、シェイド君が何時大暴れし始めるかお姉さんにも分からないからね?だから、手短にお願いするよ?」




 シェイドから職員を引き剥がす事に成功したサタニシスが先ず初めに行ったのは、職員である彼に対しての説明であった。


 何故、真っ先にソレなのか?と言えば、理由は簡単。



 再起動を果たしたシェイドが、取り敢えず何も考えずに目の前に迫って来ていた仮定敵対存在(ギルド職員)に対して、殺気全開での迎撃行動に移行しようとしていたから、だ。



 …………普段であれば、彼も流石にそこまで過激な行動に出る事も無かっただろう。


 何せ、力を得てはっちゃけているとは言え、根は善良でお人好しな部分が在り、状況や環境や感情やら、と言った面で拒絶反応や『コイツは無理!』と言う生理的嫌悪感から来るアレコレやらが無ければ、本来ならば拳骨の一つも脳天に叩き込むだけで済ませる事となっていたと思われる。



 …………が、今回ばかりはそうも言ってはいられない。



 何せ、彼が固く口を閉ざす様に釘をさし、その上で『ギアス』の魔術まで行使して念入りに口封じをしたハズの情報が何故か漏洩し、あまつさえ自身の知らない間に『英雄』だなんて言う大層かつ厄介な地位へと押し上げられてしまっている、と言うのだ。


 流石に、そんな事を知らされてしまえば冷静で居る事は難しいだろうし、何より『どうしてそうなったのか』を必ず聞き出し、必要と在ればその対策を講じなくてはならないのだ。彼で無くても、そうなってしまうのは当然の事だ、と言えるだろう。



 そんな、個人的な事情により荒れ狂い、ある種の破壊装置や災害と化そうとしていたシェイドをどうにか押し留めたサタニシスが、そうなる切欠となった職員に対して、彼を宥める事も兼ねて問い質している、と言うのが事の成り行きだった、と言う訳だ。



 実際問題として、本当に戦闘が在った訳では無いし、もちろん魔術が放たれる事になったとか、死人が出る事態となってしまった、と言う訳では無い。


 が、その寸前まで行った際の地獄の様な空気感や、周囲へと放出された魔力等によって当てられ、半ば腰を抜かしながら顔色を青ざめさせつつも


『コレが『英雄』の実力なのか……!』


 と興奮した様子すらも見せていた職員である『アルバース』(名札によって判明)に、言葉だけではなく視線によっても『早く説明する様に!』とサタニシスが急かす様にして促して行く。



 ソレを受けたアルバースは、流石にここで口をつぐむ事は自らの安全を投げ捨てる様なモノだし、何より箝口令の類いが敷かれている情報でも無いのだから、と促されるがままに口を開こうとする。




「…………え、えぇと、その……どの様に説明すれば……?」



「…………じゃあ、私が一通り質問するか、ソレに答えて貰えないかしら?

 その後で、貴方が説明しておいた方が良い、と思った事が残っていたら、そこも説明して貰う。ソレで良いかしら?」



「…………わ、分かりました。

 では、何から?」



「……そうね。

 取り敢えず、貴方が『英雄』と呼んだシェイド君だけど、本当に彼が『英雄』と呼ばれているのかしら?何を以てして?」



「…………失礼ですが、私は貴女の事を良くは知りません。ですが、シェイド様と共に在る、と言う事は、それなり以上に親しい間柄なのだろう、とは思います。

 ですが!彼の、シェイド・オルテンベルク様の名声を!『英雄』としての地位を疑われるのは、流石に見過ごせません!!

 今すぐ、謝罪して頂きたい!!」



「…………あのね?

 私は、あくまでも『ソレが本当なのか?』と聞いているのよ?

 私も、シェイド君本人も、そうやって彼が『英雄』扱いされている、って事が信じられないから聞いているの。

 だから、もう一回聞くわよ?貴方が言っている『英雄シェイド』は、本当に彼の事なの?」



「………………間違いはありません。

 現在、冒険者として登録され、カードを交付されている者の中で、フルネーム『シェイド・オルテンベルク』が重複している、と言う記録は在りません。

 なので、ギルドカードにその名前が存在していれば、即ちその方こそが、『英雄』であるシェイド様である、と言えるのです」



「…………そう、じゃあ、次ね。

 なんで、彼の事が『英雄』として認定されているのかしら?

 こう言っては悪いけど、私達そうならないようにちゃんと処理して来たハズなのだけど?」



「………………そうだ。

 少なくとも、俺達は公的には只の中級冒険者でしか無いハズだ。何故、そんな事になっている?」



「は、はいっ!

 その、ソコに関しては、貴方が救われたマーレフスミスのギルドマスターが、貴方の功績を世間へと公表した事に起因しています!

 それにより、シェイド様の健闘と気高い行為を国が『彼の行いである』と認め、ギルドの方もソレを事実だと容認し、その結果レオルクス工匠国を端に発してシェイド様を人々が『『英雄』に相応しい』と承認したが故の現状となっています!」



「…………何で、だ……?

 アイツは、フレスコバルディのヤツは、自分から発信する事は出来なかったハズなのに……!」




 余りにも想定外な事態と情報の数々に、思わず正気に立ち返って聴取に参加するシェイド。


 しかし、更に予想外な方向性の情報を叩き付けられる事により、今度は彼の方が顔色を青ざめさせながら立ち眩みにも似た状態へとなってしまう。



 相棒としてそれなりに長く旅路を共にしていながらも、初めて見る彼の弱った様子と足元の怪しさに、思わずサタニシスが慌てて彼の事を支えようとするが、そんな二人の様子なんて知った事では無い!と言わんばかりの様子にて、誰に聞かれるまでも無くアルバースは言葉を一人言葉を続けて行く。




「えぇ、確かに人々から認められ、国から認められ、更には巨大組織であるギルドから認められたとしても、本来ならば容易に人は自ら『英雄』である、と名乗る事は出来ません。

 ですが、シェイド様だけは話が別です!何せ、ほぼ単独でスタンピードを壊滅させただけでなく、悪逆に堕ちた稀人の悪手から人々を救い出し、その前にはたったの二名のみにて『迷宮』を完全踏破せしめて見せる、と言う偉業に加え、生国であるアルカンシェル王国では魔族すら単独で退けて見せた、と言うでは無いですか!」



「………………」



「ソレだけの功績が在れば、最早規定による『特級冒険者相当の地位』や『複数国による認可』『一定の発言力の在る権力者からの承認』等を軽く飛び越え、市勢の人々の間やギルドの一般職員と言った者達の間にて、自然と貴方の事を『英雄』と呼ぶ様になっていったのです!」



「…………なら、正式な『英雄』としての認定?的な事は、まだされていないって事になるのかしら?」



「それも、時間の問題です!

 何せ、ギルドも巨大とは言え人が運営する組織の一つ。周囲からの突き上げや、求める声に何時までも耳を貸さない、と言う姿勢は有り得ません。また、国の方からも、シェイド様の功績を鑑みればほぼ確実に認可は降りるハズです。

 まぁ、そうなったらそうなったで、確実にシェイド様の事を巡っての政治的な暗闘が始まる事となるでしょうけど」



「まぁ、確かにシェイド君程の戦力なら、一人抱き込めば居てくれるだけで諸々の問題が消滅する事になるからねぇ……」



「でしょう!?

 ですので、ここだけの話になりますが、シェイド様は特例として現在と同じ扱いとして『特級』に昇格させよう、との話も出ておりまして……」



「…………?

 あぁ、そう言えば、上級以上になる場合、ちゃんと所属する先のギルド支部を決めないとダメなんだったっけ?」



「はい。

 本来ならばそうなのですが、そうなれば彼が所属する国が決定してしまった様なモノとなってしまいます。

 また、既存の特級冒険者達を軽く上回るだけの実力と功績を叩き出しておられるシェイド様を、居場所を確定させる為だけに一ヶ所に縛り付ける様な事は、ギルド全体の損失に繋がる、と見なされている訳です」



「それなら、前例となりうる事態ではあるけど、取り敢えず『特例』として所属先を固定せずに特級扱いにしてギルドの総力を以て国と彼との双方を保護する代わりに、何処にも確固として所属はさせない様にする、って事かしら?」



「概ね、その様な処です。

 何せ、シェイド様の所属先を決めてしまえば、依頼によっては他国に攻め入る様な事を擬似的にさせる事も不可能では無いですし、逆に国内の防備をシェイド様に押し付ける事も可能ですからね。

 そうなってしまえば、その国が他国よりも大きく差を付ける事になってしまう、と言うのは、間違いない事実でしたので」



「………………まぁ、随分と彼の都合を考えないで、その上で彼の存在そのものを都合良く解釈してくれた考え方だ事……」




 アルバースからの話を一通り聞き終えたサタニシスは、呆れの感情を隠そうともせずに肩を竦めながら溜め息を吐いて見せる。


 そんな彼女の行動と言葉に説明を終えたアルバースは眉を潜める事となるが、こればかりは彼女の言動の方が正しい、と言えるだろう。



 …………何せ、彼は、シェイドは根の部分は善良であり、お人好しな部分が在る為に、今まで人助けの様な事をしたり、その功績を隠そうともしてきたりした。


 が、だからと言って、彼が権力者から『正義とは斯くあるべし!』と定められたモノに従って行動したり、全くもって関係の無い者達の声に従って救いの手を容易く差し伸べる様な、そんな()()()()()()()()()()()()()では、断じて無い。



 寧ろ、彼の事は極力関知せず、時折互いに利益の在る形にて取引を持ち込む程度が丁度良く、自らの腹の中に抱え込んで良いように動かしてやろう、だなんて事を考えていた場合、まず間違いなく些細な事を切欠として内側から喰い破られて身を滅ぼす事となるだろう。


 ソレを、一欠片として理解もせず、まるでお伽噺の中に登場する、一片たりとも非の打ち所が無い、完璧な『救世主』こそが彼である、と言う様な口振りで語られてしまっては、彼女でなくとも溜め息の一つも吐きたくもなる、と言うモノであろう。



 …………とは言え、そんな事情やら考え方やらを見ず知らずの相手に推し量れ、と言われてもそもそもが無理な話と言うモノ。


 現に、そこまで同行者であるサタニシスに言われても、自らの抱く『英雄像』を揺るがせるつもりが無かったらしいアルバースは再度言葉を彼女へと向けてぶつけようとしたのだが、正にその時。






 ━━━━………………ゴッ……!!!






 二人の直ぐ側にて、凄まじいまでの圧力が一気に高まり、けっして狭くは無かったハズの部屋が、途端に兎小屋にでもなったかの様に、狭苦しくして息が詰まる様な程度の広さにまで狭まった様な錯覚を、二人に与える事となったのであった……。




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