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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
八章・反逆者は『精霊国』にて己の現状を知る

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反逆者は獣人国を後にする

意外な人物が再登場?

 


 別行動を取っていたサタニシスと合流を果たした事により、先程までの草原に居座り続ける意味を失ったシェイドは、彼女と共に遠目に見えていた関所へと向けて進んで行く。


 …………が、二人の脚を以てしても、その関所へと到着するには、それなり以上の時間を要する事となってしまっていた。



 ソレもそのはず。


 何せ、遠目に見えている、とは言ったものの、ソレはあくまでも『この二人』の場合、と言うだけであって、世間一般的に言えば、遠目を凝らしてギリギリ微かに霞む様にして地平線近くに見える黒点、と言うのが正直な物の見方であり、通常であれば歩いてその日の内に到着を果たす、と言う事は難しいであろう程には離れていたからだ。



 おまけに、あまり獣人国の住人達は使わない関所だからか、もしくは獣人族その者に根差す文化として『そう言う事』をあまり重視しない為だからかは定かでは無いが、彼らが行く草原には人が歩く為の道はまともに整備はされていない。


 なので、通常であればその遠くに微かに見えている関所へは、辿り着くだけでも数日は掛かるであろう、と予想できるだけの距離が開いており、二人がその健脚を駆使して疾走しても、昼過ぎから夕方近くにまで時間が掛かる事となってしまったのだった。



 …………正直な話、二人が合流した時のじゃれ合いの様に、目視出来ている範囲に対する転移魔術(一応高等魔術。普通は唱えたり準備したりする必要が在る為に歩いた方が早く到着する)の連続使用にて大した時間を掛けずに到着する事も出来たのだが、二人は敢えてソレを選択しはしなかった。


 何故か、と言えば、やはり二人は互いに憎からず思っている男女であり、互いが互いの事情により関係を進展させる事が出来ず、せずにはいるものの、それでも離れている間は両者共に寂しい想いをしていなかった、と言う訳では無い。



 なので、一応は急ぐ旅路(彼らは未だにレオルクスから指名手配を受けていると思っている)では在るものの、既に自由への切符として確定している『獣人国からの脱出』と言う現実が目前へと迫っている為に、多少の気の弛みと共に、少しでも一緒に居たい、と言う無意識的な衝動が二人を襲っていた為に、自ずとこうなっていた、と言う訳なのだ。



 …………端から見ていれば、さっさと進むだけ進んでしまえば良かったのでは?と思われたかも知れないが、ソコはやはり離れていた状態から再会したばかりの二人。


 無味無臭な連続転移の行使による時間節約よりも、例えある程度は把握していたとしても、互いの近況を報告しあいながら、穏やかながらも近くに在る時間を過ごしたい、と願ってしまっていたとしても、決して責められる様なモノでは無いハズだ。



 と、そんな訳で、二人としては至極真面目に、端から見れば高速で草原を駆け抜けながらのイチャコラを展開していた二人は、夕暮れが近付く頃合いにて獣人国の関所の一つへと到着を果たす。


 そこで、二人は『これからどうするのか?』と言う選択を迫られる事となった。



 既に時刻は、先述した通りに夕刻目前。


 通常であれば、目的地が間近であるのならば多少強行しても良いかな?と言う程度であるが、そうでないのならば素直に夜営の準備を開始する頃合いだ。



 二人に取って、多少の徹夜は問題にはならないし、夜間の視界が悪い中にて魔物に襲われる、と言う事態にも余裕で対処が出来る為に、このまま移動を続ける事も容易に行う事が出来る。


 とは言え、ソレは急いでいる場合の話。やらなくても良いのであればやりたくは無い、と言うのが正直な話。



 その為に、この場で夜営を行い、関所を潜るのは明日に回すのか、取り敢えず関所を潜ってから夜営を行うのか。


 それとも、関所を潜ってからある程度進み続け、適当な場所を見繕ってからソコで夜営を果たすのか、もしくは今日は夜営を行う事を諦めて取り敢えず進み続けるのか。




「…………取り敢えず、夜営しない、は無しで良いよな?」



「ねぇ~。

 一日二日位は寝なくても大丈夫って言っても、それでも疲れる事には疲れるし、眠いことには眠いんだから、お姉さんとしては別にしなくても良い状況なんだから、したくは無いかなぁ?」



「じゃあ、どうする?

 取り敢えず、関所だけは潜っておくか?」



「まぁ、ソレが妥当じゃない?

 多少手続きに時間を取られるとは言え、それでも明日関所が開くまでここで待ち惚け、なんて事は面白くは無いでしょう?

 なら、取り敢えず今やっちゃった方が良いんじゃないの?」



「そうだな。

 なら、取り敢えず手続きして向こう側に抜けた後、向こう側の関所が開いていればソコも潜って、向こうの国に入ってから夜営する、程度に考えておけば良いだろうよ」



「賛成~!

 じゃあ、早く行っちゃおうか!」




 取り敢えずは関所を抜け、反対側の関所がまだ開いていればソコも抜けて向こう側の国へと入る。閉まっていたのであれば、関所前にて夜営する。



 暫定的かつこれからの状況に左右されるであろう選択肢ながらも、取り敢えずの方針としては定める事が出来た二人は、目の前の関所へとその足を踏み入れて行く。



 国によって形式に違いは出るものの、その国であれば大体は同じ様な造りになっているらしく、二月近く前に通った別の関所と瓜二つな構造となっており、二人は容易に手続き用の受付を見付ける事に成功する。


 既にソコには他に手続きを行っている者は無く、誰も並んではいなかった為に、自分達もさっさと終わらせてしまおう、とシェイドとサタニシスもそちらへと向けて歩いて行く。



 そして、到着した流れにて受付の内部を覗き込み、職員に手続きを頼むべく視線を向けたのだが…………




「…………なぁ、サタニシスさんや」



「…………何かな?シェイド君」



「………………俺、疲れてるのかな?

 何だか、見た覚えの在るオッサンが居る気がするんだけど?」



「………………じゃあ、私だけが見てる幻覚、って訳では無かったみたいね?

 私にも、少し前に見た覚えの在る中年が見えてるから、これって何かしらのトラップか、もしくは精神に干渉する類いの魔術による幻術だったりしないかしら?」



「………………おい、こら。

 さっきから聞いてりゃ、人の事を勝手に幻覚だとか、トラップの類いによる投影だとかと好き勝手言ってくれやがるじゃねぇか。

 幾ら、阿保みたいに見覚えの在る二人組とは言え、そろそろオジサンキレそうなんだが?

 どうしてくれやがるつもりよ?んん??」



「………………うわぁ。

 この中年、いきなりキレたんだけど……」



「………………やっぱり、近付かないでおこうかなぁ。

 こうして離れてるだけで、何だか加齢臭がしてくる気がするのよねぇ~」



「すみませんその辺で勘弁して貰えませんかねぇ!?

 幾ら事実とは言え、その言葉はオジサンの胸に刺さりすぎるんですけどぉ!?」




 そう言って、胸を押さえながら受付のカウンターへと倒れ込む職員。


 その際にシェイドとサタニシスの目の前に躍り出る事となった彼の胸に着いていたプレートには、彼の名前であるのだろう『ウォルフェン』と言う文字が刻まれていた。



 …………以前、レオルクスとの国境近くの関所にて、初めて二人との邂逅を果たしていた彼が、何故ここに?


 位置的に言えば、ここはあの関所から決して狭くは無い軍事国家であるビスタリアを挟んで反対側に在る為に、かなりの距離が在るハズなのだが……?



 二人から向けられる疑問の視線を受け取ったウォルフェンは、特に隠しだてする様な事でも無いし、と軽い口調にてこの場に居る理由を語り出す。




「まぁ、なんだ。

 驚いてる処悪いけど、別段俺がここに居るのに『特別な理由』なんて何もありゃしないからな?

 ただ単に、仕事で居る、ってだけに過ぎない訳だしな」



「…………いや、仕事で、って言うのなら尚の事、ここに居られると不思議で仕方無いんだけど?

 あんた、あそこの職員として就職していたんじゃないのかよ?」



「もしかして、勤務態度が悪すぎて馘になったとか?

 それで、こっちに再就職でもしたんじゃないの?

 でも、ソレだったら距離と移動時間的に考えて、私達が立ち寄った直後位に馘にされてるハズなんだけど、その辺って何か関係あったりするのかしら?」



「馘になんざなってねぇし、あんたらも関係ねぇよ!?

 ただ単に、俺の就いてる職務の中に、定期的に異動になる、って事が含まれてるだけだってんだよ!?」



「………………あぁ。

 もしかして、関所の人員が固定になってると、そいつと通じてアレコレと禁制品を流し放題になりかねないから、ってヤツ?」



「そう言うこったよ。

 だから、俺達関所関連の職員は、定期的に勤務場所が異動になるって訳よ。

 で、偶々あの後その時期が来て、少し前にここに移って来てた、って訳さ」



「へぇ~。

 あっ、じゃあ取り敢えず手続きお願いしちゃって良いかしら?

 まだ向こう側が開いてるなら、さっさと渡っちゃいたいのよねぇ~」



「…………なぁ、この件聞いてきたのって、あんたらの方からだったよな?

 その割りに、俺への対応雑じゃねぇか?なぁ?

 ……まぁ、やるけどさ?」




 特に興味を引かなかったのか、話の流れをぶった切る形にて、サタニシスから手続きの申し込みが差し込まれる。


 ソレにより、半ば納得の行ってはいない様な表情をしながら一言二言文句を溢したウォルフェンであったが、根が真面目だからか差し出された諸々を受け取り、取り敢えず手続きを進めるべく奥へと入って行くのであった……。




意外と好評だったオジサン再登場


次回が在るかは……どうでしょうね?(本当に未定)

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