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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
七章・反逆者は『獣人国』にて弟子を取る

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反逆者は冒険者の長から依頼を向けられる

 


 …………暫しの間、そうして一人悶え続けていたラヴィニア。


 その光景は、外見だけで言えば『若々しさと成熟した色気が両立する肉感的な美女が淫靡な表情を浮かべながら身をくねらせている』と言うモノであり、男性からすれば一部の性癖を拗らせた者以外にとっては大変に眼福な状態であったと言えるだろう。



 ……もっとも、ソコに居たのは同性で異性にしか興味の無い(ついでに言えばシェイド以外にも興味が無い)サタニシスと、かつて自身を虐げる様に指示を出していた元凶の一人であり、かつ自身の手で血塗れになるまで暴行を働いた事も在る相手であるだけでなく、実年齢は親とそう変わらない、と言う事を知っている為に『そう言う目』で見る言葉を出来ないし、見ようとも思っていないシェイドしかいなかった為に、ほぼほぼ無駄な一人芝居となっていたのはここだけの話であったりする。



 それから更に時間が経った事により、どうにか現実へと帰還したラヴィニアが、何故か座りが悪そうに肉感的な尻をモジモジとさせて座る位置を調整させながら、彼らへと向けて口を開いて行く。




「…………さて、では改めて。

 久しいな、ご主人様。

 こうして、出先で再会出来るとは、吾としては嬉しい限りだ」



「……俺としては、出来れば二度と会いたくは無かったがね。

 それで?こうして、俺達をこんな場所に引き込んだんだ。何かしらの用事でも在ったんだろう?さっさと吐け」



「…………はて、何の事やら。

 吾は、偶然再会したご主人様と、余人に邪魔される事無くゆっくりと語らいたい、と願っていただけなのだが?」



「なら、わざわざサタニシスまで連れ込んだ理由は何だ?

 お前の事だから、本当に俺にだけ話がしたいと願っていたのなら、最初から彼女の事は眼中にすら入れて居なかったハズだ」



「まぁ、そうなるよねぇ~。

 それに、偶然再会した、ってヤツもお姉さん的には怪しいと思ってるんだけどなぁ~?

 大方、ギルドマスターとしての立場を利用して各地のギルドに連絡でも入れて、秘密裏にシェイド君が訪れたり、離脱した際に情報を回すように仕込んでいたんじゃないの~?」



「…………まぁ、情報収集に関しては否定しないし、ご主人様に頼みたい事が在る、って事も間違っちゃいないよ。

 流石に、吾としても、吾をあそこまで一方的に破壊できるご主人様が、何処で何をやっているのか、程度は把握しておかないとちょっと不味い、って事くらいは、湯だって蕩け掛けていた理性でも判断できていたからね。

 でも、こうして再会できたのは、本当に偶然だったんだよ。そこは、信じて貰いたい処だね」




 若干表情を苦いものへと変えながら、ラヴィニアがサタニシスの言葉に対して反論して行く。


 あくまでも動向を把握しておきたかったが故であり、今回出会したのは行動を予測して先回りした結果、と言う訳では無い、と言いたい様子だが、ソレを信ずるのにはシェイドからは不信感が強く、サタニシスからは信頼感が足りていなかった。



 そんな二人からの視線と表情を受け、苦笑いを浮かべつつ乱雑に頭部を掻き、頭頂部から生えている兎耳を揺らしながら『どうしたモノかねぇ……』とラヴィニアは呟きを溢す。


 どうやら、どうしても……とまでは行かない様子だが、それでも自身では解決する事が出来ないのか、またはそれが難しい事柄をシェイドへと依頼したかったらしく、どうにかしてソレを切り出そうと、何とかして彼に引き受けさせる事は出来ないだろうか、と思考を回転させて行く。



 が、結局上手い具合に言い繕ったりする事が出来なさそうだ、と判断したらしく、何処か諦めた様な表情を浮かべながら再度口を開いて行く。




「…………あ~、その、なんだ……取り敢えず、吾としては適当に言いくるめたり、はぐらかしたりは出来そうに無いから正直に話してしまう事にするよ。

 単刀直入に言うが、吾はご主人様に『とある人物』の育成をお願いしたいと思っているんだ。期限は、来月の終わりまで。

 どうだろうか?」



「…………いや、どうだろうか?って言われてもだな……そもそも、なんで俺がその『とある人物』とやらの世話見てやらなきゃならないんだよ……。

 と言うか、ソレって早い話が『鍛えろ』って事だろ?なら、ご自分でやれよ。あの時だとか、元妹(カテジナ)だとかの時みたいに」




 一応は真剣な表情を浮かべながらそう言ってきたラヴィニアに対してシェイドは、罵声にも聞こえるであろう辛辣な言葉にて応えて見せる。


 ソコに相手に対する思い遣りは感じられず、寧ろ余計な提案をしてくれた厄介な相手に向けられるであろう、ラヴィニア本人もギルドマスターとして活動している間に於いて多大に覚えの在るモノであり、確実に気分を害しているのだろう、と言う事が容易に察せられるモノとなっていた。



 …………まぁ、そうなるだろうなぁ……。



 そんな感想を胸中にて呟くが、それは彼女も予想していた通りの反応であった為に、極一部の獣人族の特性によって想いを寄せる身としては胸が痛む事態となっていたが、我慢して表情には出さずに言葉を続けて行く。




「まぁ、そう言わずに話だけでも聞いては貰えないだろうか?

 まず、鍛えるのなら自分でやれ、と言うご主人様の指摘だが、吾がやるのは些か問題が在るので無理なのだよ。立場的にも、相性的にも」



「…………はぁ?だとしても、何で俺が?

 ギルドにその手の事柄が大好きな変人の類いも少なくないんだから、そいつらに頼めよ。

 それに、そもそも期限が短すぎる。例え鍛えたとしても、大した成果なんざ出ないぞ?」



「それに、私達をそれだけの期間拘束しておく理由としては、大分弱いよねぇ~?

 少なくとも、何らかの依頼として向けられて、その結果として報酬でも払われるのなら考慮するかも知れないけど、どうせそうじゃないんでしょう?

 なら、私達がそんな事をして上げなきゃならない理由は無いよねぇ?」



「ソコに付いては申し訳無いけど、期間が終わるまではここに留まって貰う事になるね。

 ソレに、ギルド内部の人員を使う、って事は、流石に()()()()()()でね。カートゥか、最悪アルカンシェル内部ならどうにかなったんだろうけど、ここビスタリアじゃ、吾の立場も『他国のギルドマスター』でしか無いから、流石にそこまで無茶が利かないのさ」



「なら、尚の事何でまた俺にそんな案件を投げてくれやがるよ?

 そこまで面倒な条件ばかり連なるって言うのなら、お前自身がやってやれば良いじゃねぇかよ。あれだけ自信満々に『鍛えてやる』とか抜かしてくれていたんだから、多少相性が悪かったとしてもどうにでもなるだろうがよ?」



「いや、流石に今回は吾の手に余る案件でね。

 より具体的に言えば、『彼』は吾の様に超接近戦を主体とする立ち回りをしない類いでね。しかも、吾と違って得物を常用するタイプなんだ。

 だから、と言う訳でも無いし、吾としてもある程度で良ければ扱い方も分かるから教える事も出来なくは無いが、やはりそこは似た様な立ち回りを主としている者に教えを乞う方が良いだろう?

 それと、さっきも言ったが、『彼』の事を吾が鍛えるのはちょっと立場的にも問題が在ってね。出来れば、ギルドマスターである吾と繋がりが無いか、もしくは出来るだけ薄い相手であるのが望ましいんだよ」



「…………だから、実力が確かで、その上で敵対しつつも話は通し安そうな俺に対して、白羽の矢を立てる事になった、と?」



「そう言う事。

 吾としては、今回の案件は、吾個人としてどうしても達成してやりたい事でね。出来るなら、確実に成し遂げられるであろうご主人様に頼みたいと思っていたんだよ。

 で、こうして偶然再会出来たんで、折角だからこうして依頼している、って訳なのさ。

 だから、どうか引き受けては貰えないだろうか?この通りだから」




 そう言って、頭を下げて見せるラヴィニア。



 公的な話となるが、冒険者ギルドのギルドマスターと言えば、魔物を狩って日々の安全を守る冒険者達の代表である、と認識されている為に、並みの貴族は当然として、下手な小国の国王に匹敵するか、もしくは一歩劣る、程度の地位と尊敬を集める立場に在ると言える。


 そして、以前からの武辺に傾倒し、その上で自らの力に自信を抱いていたラヴィニアがその頭を下げて見せるだなんて事は、それなりに付き合いの在った、と言えるシェイドも殆んど見たことは無い光景となっていた。



 その為、この様な事をされてしまえば、一も二も無く『引き受ける』と返事をするのが普通の反応なのだろうが…………




「………………だが、なぁ……?」



「…………でも、ねぇ……?」




 …………と言う、どうにも芳しくは無い、どちらかと言えば否定的なモノとなっていた。



 何故か?と言えば、理由としてはかなり単純。


 依頼を引き受けた場合、それなりの期間この場所に拘束される事になりかねないから、だ。



 ぶっちゃけた話をすれば、それが無くともシェイドとては引き受けるのは気が進まない状況に在る。


 かつて自身を虐げてくれていた相手が、ある程度改心している風に見えるとは言え、こうして出して来た依頼なのだから何かしらの裏が在るのだろう、と思えてしまう為に、進んで引き受けようとはとても思えない。



 それに加え、二人は一刻も早く隣国のレオルクスから離れなくてはならない(と思い込んでいる)のだ。


 依頼の期限である『来月の終わり』までの滞在となると、まだ月の初めである現在からは丸々一月と半分程になってしまう。流石にそこまで長く滞在してしまえば、容易く捜査の手が回ってくる事になりかねない。



 そんな事情から、取り敢えずは悩んでいる、と言うポーズを取るだけは取って見せた二人が断りの言葉を口にしようとする。


 が、ソレを察したからか、ラヴィニアが慌てた様子で




「…………わ、分かった!

 取り敢えず、報酬は吾の権限で特級相当の額を約束するし、()()()()()()()()()は確実に防がせて貰おう!

 だから、先ずは『彼』に会っては貰えないだろうか?依頼を断るのは、彼から直接事情を聞いてからにして貰いたいのだが、ダメだろうか……?」




 と加えて来たが為に、二人揃って困惑から視線を交わらせる事となるのであった……。




次回、『弟子』登場?

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― 新着の感想 ―
[一言] 覚醒を経てからは性格がグレてしまったシェイド君ですが、復讐や絶縁、そしてサタニシスとの旅のおかげで少しずつ丸くなってきたんですね。 今の所、僕のイメージでは二人は革ジャン系チンピラとヤンキー…
[一言] 受ける受けない以前にこうして大人しく話し合いのテーブルに付いてやってる事からもう理解出来ない 虐げられてた元凶に対してなんでこんな甘々対応なんだ? 主人公の心情はどうあれ、ここまでのコイツへ…
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