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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
七章・反逆者は『獣人国』にて弟子を取る

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反逆者は国境を越えて『獣人国』へと足を踏み入れる

今回少々短めですm(_ _)m

 



「…………ほい、これで手続きはお終いだ。

 ご苦労さん、通って良いぞ」




 そんな言葉と共に戻されたギルドカードを受け取り、懐へと仕舞い込むシェイドとサタニシス。


 彼ら二人は、レオルスクの国境線に在る関所の一つに到着しており、そこで出国の為の手続きを行っていた。



 ドワーフ族が主導して治めている国の側の関所である以上、当然の様にソコに勤めているのもドワーフ族であり、彼らに共通した『豪快』とも『大雑把』とも呼べるであろう対応にて手続きの終了を告げた後、彼の腰に差した得物へと視線を向けながら口を開いて来る。




「…………しかし、あんた随分と良い買い物したみたいだな?

 見るからに、並みの造りじゃねぇ業物の逸品だって分かるぜ、そいつ。

 さぞや、名の在る鍛冶師に依頼出来たみたいじゃねぇか。あんた、本当に運が良いよ」



「……あぁ、そうだろうな。

 こいつが並みの逸品じゃねぇって事も、運良く腕の良い鍛冶師に出会えたって事も、何一つ否定はしないさ」



「…………へぇ?そいつは、珍しいこった。

 大概、そう言う奴等は『運も実力の内』『縁を手繰るのも自身の力』だとか抜かして怒りだすんだが、あんたはそう言う類いの輩じゃねぇんだな。

 ……処で、こっち側からレオルスクを抜けるって事は、やっぱりアレかい?得物を手にした後は腕試し、って事かい?」



「…………まぁ、否定はしないさ。否定は、な」



「まぁ、ソレしか無いわな。

 何せ、ここから抜けるって事は、向かう先だなんて『()()()』しかねぇものな。

 やっぱりアレかい?例の大闘技場で定期的に開催されるって言う、国を挙げての大武闘会に参加でもするつもりかい?」



「さぁ、どうだろうな?」




 そう言って肩を竦めて見せるシェイドに対して関所の職員は、その髭まみれな顔を歪めて豪快に笑い飛ばしながら『そりゃそうか!』と言いつつ彼の肩をバシバシと叩いて見せる。



 それに対し、特に痛がる様な素振りを見せる事も無く、苦笑を浮かべながら片手を掲げて別れの挨拶の代わりとしながら、関所の手続き台から離れて行く。


 それから大して時間を空ける事をせず、隣の手続き台にて手続きを進めていたサタニシスが合流し、二人で連れ立って関所の大門を潜り抜けてレオルスクの国境線を踏み越える。



 肩を並べて道を進み、今しがた通り抜けて来た関所の大門と相似形を為す関所への道を歩んで行く二人。


 その距離感は、少し前までと比べると以前のソレへと近付きつつ在ったが、それでも以前のソレと等しい状態になっている、とはとても言えない様なモノとなったままであった。



 何処かぎこちなく、さりとて会話のテンポは近しい者同士のソレにてリズム良く交わされながら歩く事早数分。


 彼らは、目指していた『獣人国』への国境線を踏み越えると、目前へと迫っていた関所へと向けて進んで行く。



 とは言え、別段こうして関所へと寄り、手続きを確実にしなくてはならない、と言う訳でも実は無い。


 何せ、ある程度は見晴らしが利くとは言え、基本的に関所が立てられているのは、ただ単に野原に近しい地形の場所でしか無い。



 特に塀で仕切られている訳でも無ければ、物理的に壁等にて往来を分断している訳でも無い為に、その気になれば多少大回りして関所の見張りの目が無い処から侵入し、何食わぬ顔で回り込んでしまっても構いはしないのだ。


 別段、そこまでガチガチに管理しているというよりは訳でも無いし、ソレをする事で罰せられる、と言う決まりが在る訳でも無い故に。



 が、ソレをしてしまえば、身分証を提出した時に怪しまれる(入国の記録が無い、と言う事がバレる可能性が在る)かも知れないし、出国の際にも同じく関所を通る事無く回り込む必要(入国の記録が無い、と言う事が流石にバレる為)が出てくる。


 それと、彼らの様な冒険者であればまだしも、商人等の職に在る者にとっては、その様な『関所抜け』は仲間の間での信頼を損なう事になりかねない(決まりを守れず好き勝手に行動される可能性が在る、と見られる形になる)し、何より商品を公的な手段で売り捌く事が出来なくなってしまうので、基本的には行われる事は無い。



 なので、余程大きな傷が脛に在るか、もしくは余程後ろめたい心当たりが在る者でない限りは、素直に通っておく方が良いのだ。



 故に、逃亡犯(予備軍)を自称して憚らない立場である二人も、多少面倒で痕跡を残す事になってしまったとしても、こうして素直に関所を通り抜けよう、としている訳なのである。



 そうこうしている内に、『獣人国』の側に設けられた関所へと到着する二人。


 当然の様に、大門を潜って関所内部に設えられている手続き台へと向かって行く。



 すると、ソコにいたのは、頭頂部から狼の様な耳を生やし、腰から耳と同色の毛に覆われた尻尾を生やした、気だるそうな様子を隠そうともしていない『獣人』の氏族の一つである『狼人族』の特徴を持った…………中年のオッサンであった。



 如何にもダルそうに、眠そうに大あくびを溢しつつも、彼らが立っている事に気が付いていないらしいそのオッサンに向けて、呆れの視線と共に軽く殺気を放って見せるシェイド。


 すると、如何にだらけていたとしても、弛んでいたとしても、世間一般的には『戦闘民族』として語られる事の多い『獣人』であったらしく、彼の放った微弱な殺気に反応し、その場で飛び上がる様にしながら腰に差していたらしい短剣を引き抜くと、逆手で構えながら爪先立ちに近い姿勢を瞬時に整えて見せた。



 その後に、殺気の出所を探す様に、寝惚け眼にて周囲をキョロキョロと眺め回すと、自らの本来の職分であり、かつそれまで自身がサボっていた手続き台の前で腕を組んで額にシワを寄せているシェイドと、その隣で苦笑いを浮かべているサタニシスの姿を目の当たりにする事となる。



 数瞬の間、目を見開いたままで固まってしまう中年職員。


 暫しの間、なんとも言えない沈黙が三人の間に横たわるものの、多少は長く生きているが故に『こう言った場面』に対しても若干ながら耐性が在ったらしい中年職員が咳払いをしながら手にした得物を腰に戻し、まるで『何事も起きなかった』と言わんばかりの様子にて蹴り倒していた椅子を起こして腰掛ける。



 そして、表情を引き締めてから二人に対して




「………………まぁ、その、なんだ。

 取り敢えず、手続きしちまうから、向こうで出したのと同じ身分証出して貰っても良いか?」




 と、若干ながらも顔面を赤らめながら声を掛けて来る。



 それに対して二人は




「…………うわっ。

 このオッサン、無かった事にしようとしてやがる……正直、ちょっと引くんだが……」



「…………ね~、マジで有り得ないよねぇ~?

 せめて現実くらいは受け入れてくれないと、流石に見苦しいと私思うんだよねぇ~」




 と、煽っているのか、それともガチでそう思っているが故に言っているのか良く分からない口調にて、あからさまに呆れが混じった引いている表情にてそう溢して行く。



 すると、流石にそこまで言われてしまっては、例えソレが事実であったとしても中年職員には受け入れる事が出来なかったらしく、涙を流しながら手続き台に突っ伏して拳を振り下ろす。




「ちくしょう!?

 そんな事、若い連中に言われなくても分かってるよ!?

 と言うか、俺が頑張ってどうにかしようとしていた空気を、無理矢理元に戻そうとするの止めて貰えないか!?オジサンいたたまれなくなっちゃうから!?」



「……そうやって、取り繕おうとして失敗すると開き直る、みたいな部分が見苦しい、って言われてるんだがね。

 とは言え、そんな事はどうでも良いから、さっさと手続きやっちまってくれよ。どうせ、暇してたんだろう?なら、手早く済ませちまってくれよ?」



「だから、そんな事分かってるって言ってるだろうがよ!?

 それで?入国の目的は?

 仕事か?観光か?それとも、時勢外れの新婚旅行とか何かか?」



「…………そんな、お似合いのラブラブ新婚夫婦だなんて……♪♥️」



「…………いや、誰もそんな事言って無いし、そもそも新婚でも夫婦でも無いから……」



「………………お、おう、そうか。

 悪いな?適当な事言って……」




 オッサンの不用意な発言により、何故か顔を赤らめつつ両手を頬に当てて嬉しそうにしながら身体をくねらせるサタニシスと、そんな彼女の誤解を招きそうな反応に対して半眼になりつつ訂正しようとするシェイドに、二人の反応を見て若干引きつつも軽く謝罪して見せる中年職員。



 その後も、暫くの間サタニシスは一人で色々と未来予想図(と言う名の妄想)を垂れ流しにしながらクネクネし続けていた為に、二人分の手続きの殆どをシェイドが一人でする羽目になるのであった……。




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