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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
七章・反逆者は『獣人国』にて弟子を取る

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闇に胎動する影は、遂に本腰を入れ始める

はい、と言う訳で今回から第三部開始となります


どうかお付き合い頂けます様お願い致しますm(_ _)m

 


 …………人類が己の生存圏だと認識している場所より遥かに遠く。


 未だに人々が『秘境』だと認識を持つ処か、そもそもの認識として『そんな場所は存在していない』と思われている程に『人』の生存圏から離れたとある場所にて、幾つもの異形が集まっていた。



 ソコに集まる影の数々は、角の在るモノ、翼の在るモノ、腕が多いモノ、脚が多いモノ、と言った風に、一目で『人類』として括られる枠の内側に存在するモノでは無く、寧ろ魔物だとかの敵性生物である、と結論付ける事の方が、容易く理性的に行えるであろう程に、多種多様な外見をしていた。



 しかし、そんな影達にも、共通している点が二つ。



 一つは、例えどれだけ『人類』とかけ離れた見た目をしているモノであっても(殆んど魔物にしか見えないモノもいた)共通の言葉を発してコミュニケーションを取っている事。


 もう一つは、必ずと言って良い程に、身体の一部が()()()()()()()()と言う事だろう。



 影それぞれにて場所や頻度は異なるものの、ソレは角にしろ翼にしろ肌にしろ髪にしろ瞳にしろ、何処かしらは必ず『紫』と言う色を帯びた状態となっており、その共通項によってその場に集まっている影達がどのように存在であるのか、を如実に物語っていた。



 …………そうして集った影達の内の一つ。


 一際巨大であり、その上でこの場にいずれかの人類が存在していたのであれば、先ず間違いなく絶望による叫びを挙げていたであろう異様は、『紫』を宿すモノ達の集うこの場に於いても更に際立って異質なモノとなっていた。



 …………そう、その影こそ、全身を金属光沢を帯びた鱗で覆い、背に翼と長大な尾を備えた二足二腕の巨駆を晒しているのは、魔物に於いても『最強種』と名高い『竜』のソレであった。



 人類の認識に於いて、ある程度は知性が在り、その上で強大な力を頑強過ぎる巨駆にて振るう存在こそが人類にとって最も厄介な存在である、と認識されていた。


 が、ソレはあくまでも『多少の知性』と言う程度に留まっているが為であり、獣の延長線上にその身を置いていたが故の認識であった。



 …………その為━━━━




「…………さて、そろそろ頃合いであろうよ。

 陛下から、何かしらのお言葉は頂けたのだろうか?」




 ━━━━その為、こうして流暢に言葉を扱う程に高い知性を示して見せる個体が、人類に対して敵対的な立場に在る、と言う想像だにしていなかった事態を受け入れざるを得ない事となってしまう。



 ……とは言え、ソレを未だに人類が知るよしも無く、影達の間での会話が続いて行く。




「…………一応は、な。

 未だに、陛下は例の一点張りよ。他のお言葉は、我ら幹部連と言えども頂けてはおらんさ」



「…………『現状を維持して監視を継続』『『特異点』に対しては敵対行為を厳禁とする』のみ、か……」



「なれど、既にこちらの準備は整っているのだぞ?

 宣戦布告も、もう済ませてある。なれば、もう始めてしまってもよいのでは無いのか?」



「だが、どうする?

 未だに陛下からの号令は下されてはいない上に、ここから一直線に攻め込む、と言う訳にも行かないぞ?何せ、軍勢として送り込むのであれば、精々が国複数を挟んだこちら側、と言うのが限界だぞ?」



「そんなもん、構わずに平らげちまえば良いじゃねぇかよ!

 陛下からの許可だって、別に待つ必要なんざねぇだろう?こっちが攻撃されました、って建前だけ整えてやりゃあ、別に構いやしねぇだろうが」



「だから、ソレをどうするのか、と言っているのだ!

 流石に我らと言えど、複数の国をたったの軍勢一つで叩ける程では無いのだぞ!それに、此度の『特異点』の様な規格外の存在も確認されている!

 今は、例の『特異点』こそ監視が付いて位置が割れているが、ソレ以外が途上に在ったらどうすると言うのだ!?」



「…………確かに、それは憂慮すべきであろうなぁ。

 我らが一度出撃した、となれば、ソレは即ち陛下に取っては我らからもたらされる報告は『完勝致しました』以外には有り得ぬからなぁ。

 これで『負けて戻って来ました』となる可能性は、事前に潰せるならば潰しておくに越した事は無いからなぁ」




 …………まるで、人類が行うソレと酷似した会議模様を侃々諤々と続けて行く無数の影達。



 会議は踊れど、されど定まらず。



 そんな様態を呈していたその場だが、遅れてやって来た影が放つ言葉により途端に空気をガラリと変化させて行く。




「…………なに?それは、本当なのか?ズィーマよ」



「よもや、流言蜚語の類いでは無いであろうな?」



「…………心配無用。

 某が、現在この場で唯一、直接陛下からお言葉を頂けるとは言え、そのお言葉を偽る程に、不忠者でも不届き者でも無い、と心得ている。

 故に、先の言葉は、『事を進めて構わない』と言う言葉は、間違いなく陛下から賜ったモノである事に偽りは無い。ソレは、某の命に懸けて誓える事でも在る」



「…………なれば、これ以上の議論は無用。

 彼の地を目指し、一心不乱の大行進により、全ての人間共の住まう地を平らげるのみ」



「うむ、ソレで良かろうよ。

 …………漸く、漸くだ。漸く、陛下の無念を、一方的に侵略し、ソレでいてもなお歩み寄りを見せた陛下を騙し討ちし、封ずる等とふざけた真似をしてくれた外道共に、復讐する機会が巡って来た。

 此度は、ワシが出る。精々、止めてはくれるなよ……?」



「…………まぁ、アンタならそうなるだろうよ。

 だが、アンタ一人で平らげるだなんて、贅沢は辞めてくれよ?そうでねぇと、他にも溜め込んでやがる連中が、何しでかすか分かりゃしねぇんだからな?」



「…………それと、常々陛下が仰られていた事を、お忘れ無き様に。

 幾ら憎きモノであれ、既に当事者その者では無い、と言う事をお忘れ無き様に願いたい……」



「ふんっ!その程度、ワシとて弁えておるわ!

 既に降った者の首まで取ってしまっては、流石に心優しき陛下に対し、要らぬ心傷を負わせる事態になりかねん故な。

 …………ワシ個人としては、是が非でも族滅してやりたいとすら思っておるが、事はワシの命一つでは済まぬであろう以上、流石にやれぬよ」




 …………そう、最後に感傷にまみれた呟きを溢した『竜』は、その場に咆哮を一つ残すと、巨駆を翻してその場を後にするのであった……。






 ━━━━そして、その会議が開かれてから僅かな時間の後、人類の認識に於ける全世界へと一つの報せが走る事となるのであった。





『クロスロード国、陥落』





 その、唯一にして絶対的な報せが……。




いきなり事を動かし過ぎましたかね?


次回からはシェイド達の方に戻ります


時系列も、もしかしたら違ってくるかも……?

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