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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
六章・反逆者はその名を『英雄』へと高める

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反逆者は王宮からの要請を嘲笑う

 



「……………………はぁ?」




 伝えるべき事を伝えたフレスコバルディに対して放たれたシェイドの言葉は、ただその一言のみであった。


 …………が、あくまでも()()()と言う注釈が付くモノであり、実際の反応としてはその程度で済むモノでは無かった。



 具体的に言えば、それまで一応は穏やかなモノであった彼の雰囲気が激化し、態度や視線には殺意が宿る様になり、その上で無意識的に抑えられていたハズの威圧と魔力が漏れ出してしまっているらしく、現在二人の居る執務室内部はソレを構築する空間事軋み始め、音にならない悲鳴を周囲へと響かせ始める事となった。



 そんな中であっても、周囲の変化に冷や汗を流しながらも、表情だけは悪戯が成功した子供のソレを保ったままでいるフレスコバルディへと対し、それまでとは比べ物にならない程に冷たく、親愛やら情やらを感じさせない声色にてシェイドが問い掛ける。




「…………なぁ、確か俺の記憶が正しければ、あの場にいた冒険者連中は全員『ギアス』を掛けておいたハズなんだが、違ったかな?」



「…………確かに、あの時、あの対スタンピード戦に参加していた冒険者達全員に対して君は、一度に『ギアス』による誓約を課して見せたよ。

 それは、間違いない」



「…………なら、何処ぞの馬鹿垂れが、誓約による制裁を受ける前提で口を滑らせたか?

 条件が比較的曖昧なモノになったお陰で、制裁も比較的温いヤツになっていたから、食らっても死ぬ事は無いだろう、とは思っていたが、まさか実際にやらかすカスが居るとは思って無かったよ。

 ここの冒険者共に、恩義に対する礼節、ってモノを期待した俺が馬鹿だった、って事か……」



「いや、そうやって失望するのは早計だと思うよ?

 確かに、君との間で私達が交わす事になった『ギアス』を破る事で課される制裁は『五感の内一つの喪失』だったし、それならば相応の覚悟さえ在れば破る事も不可能では無いだろうけど、それでもソレを為した、と思われる冒険者は、少なくともこの支部には居ない。

 ソレだけは、私が保証出来るよ。ソレに、君も分かっているんじゃないのかい?

 あの場には、君の事を口外したとしても君との誓約を破らずに済む者達も居た、と言う事にね」



「…………あ?そんな手落ちを、俺がするハズがねぇだろうがよ?

 自分の部下を庇いたいが為に、そんな下らねぇ冗談抜かすのは辞めて貰えねぇかな?あの場で全部見ていた知っていた、だなんてヤツを見逃すハズもねぇし、あんたの言う通りに冒険者連中が吐いてねぇって言うのなら、王宮所属の監視特化みたいな連中に覗かれてたのを気付いて無かったか、もしくは………………って、そう言う事か……」



「そう言う事、だよ。

 私も『まさか!?』とは思ったけど、念のために、と本人達に確認してみた処、アッサリと認めてくれたよ。

 …………今回、王宮から君との対面の打診、と言う名目での命令が来た原因は冒険者達じゃ無い。()()()さ」




 そこで一旦言葉を切ったフレスコバルディは、それまでも浮かべていた悪戯な笑みを一旦引っ込めると、多少の苦味を含んでいるが、それでも慈しむべき相手を想う様な表情を浮かべ直して行く。



 そんなフレスコバルディの様子を目の当たりにし、自身も苦々しい表情を浮かべつつ舌打ちを溢しはするものの、それでも席を蹴り倒して退室する訳でもなく、素振りと雰囲気にて説明の続きを促して行く。




「…………まぁ、彼女らも、悪気が在っての行動じゃあ無いんだよ?

 ただ、周囲が余りにも、自分達をあの稀人が見せてくれていた『悪夢』から解放してくれた君の事を口にしないのが不自然で、その上手柄の類いを冒険者ギルドが独占している形になっていたのを聞いてしまったモノだから、彼女達にも思う処が在ったみたいでね?」



「…………だから、そこら辺で俺の存在自体を吹聴して、ソレが王宮の側の耳に入る羽目になった、と?」



「そう言う事。

 だから、言っただろう?『冒険者達に『ギアス』を破った者は居ない』とね」



「………………そりゃあ、あの場には居なかった連中にまでは『ギアス』の効果は及ばないし、ソレを受けていない以上自由に口にする事に弊害は無いし、遮る事も出来ないが、な……。

 まさか、そこから漏れるとは思って無かったっての……」



「まぁ、彼女達も、君の考えをあの場で聞いていた訳では無いし、普通に考えれば冒険者が名声を求めたり自身の功績を広めたりするのは、当然の事だからねぇ」



「…………とは言え、その辺は俺の手落ちだから、まぁ、良くは無いが良しとしておこう。一応は、な。

 それよりも、王宮が俺の事を呼んでいる、だったか?あの、殻に籠るだけで何もしなかった王宮が、今更俺に、か?」



「そう、今更ながらに君に、ね。

 君も、その意味合いなんてモノは、とっくに理解はしているんだろう?」




 フレスコバルディからの問い掛けに、無言のままで凄みを増して見せるシェイド。


 それにより、何よりの答えだ、とフレスコバルディも口をつぐんでしまう。



 とは言え、これは然程想像し難い事柄では無い。


 寧ろ、こうなるのは、事の次第を知られた上では必然ですら在る、と言えるだろう。



 …………何せ、王宮は先のスタンピードに対して、()()()()()()()()()()()()()()と言う事が市民に広く知られてしまっている。


 咄嗟の判断として、国家の首脳部だけでもどうにか守りきろう、と言う決断を下したのだろうが、その判断が裏目に出る事となってしまった。



 その結果だけを見てしまえば、全てを知っていた王宮が一切の戦力を故意的に出さなかったにも関わらず、冒険者ギルドは単独にて発生しかけていたスタンピードを鎮めて見せた、と言う事になるのだ。


 その為に、現在王宮に対して向けられる一般市民の感情、と言うモノはお世辞にも良い状態である、とは言えないモノとなっている。



 何せ、彼らは一度守るべき一般市民(自分達)の事を見捨てる選択をし、事実ソレを行動に移していた。


 そして、最終的には被害が無い処か、そもそもスタンピードの発生以前に事が終息した為に杞憂として終わった訳だが、ソレは一般市民(彼ら)には関係の無い話。



 事実として彼らの内に残るのは、いざと言う時に守ってくれるつもりも無かった、と言う王宮への不満や不信感と、そんな状況に在っても逃げずに脅威へと立ち向かってくれた、と言う冒険者並びに冒険者ギルドに対する感謝と信頼、と言う事になる。



 …………そうなると、今度は王宮の方がヤバい事になって来る。


 何せ、一般市民に王宮に対しての不満が高まり、その上で担ぎ上げられる旗頭となりうる存在(冒険者ギルド)が既に在ると言う事は、多少乱暴な言い方をしてしまえば『いつ反乱が起きてもおかしくは無い』と言う状況に在る、とも言えるのだ。



 それもそのハズ。


 何故なら、自分達が安全を対価として得る為に日々働いて得た糧の中から税を払っていると言うのに、ソレを受け取っておきながら自分達の事を見捨てようとした(実際にはほぼ見捨てられていた)のだ。



 そんな上位存在(王宮)から、これまでの通りに敬意と畏敬の念を持って厚く敬え、と言われたとして、ソレに対して『喜んでさせて頂きます!』と答えられる狂信者が、どれ程の数この国に残っていると楽観的に考えられるのか。


 答えは、否。断じてそんな存在はいない、だ。



 故に、王宮としては市勢に広まってしまっている風潮を、『王宮はいざとなれば民の事なんて簡単に見捨てる』と言うモノを払拭し、その上でそうして広まってしまったモノを別の何かで上書きする必要に駆られている。


 …………そう、例えば、今回のスタンピードに対しての指揮は、実は王宮が取っていた、とか。



 王宮を閉ざしていたのは万が一に備えて。


 情報を伏せていたのも混乱を防ぐため。


 いざ冒険者ギルドが失敗した、となっていれば温存していた戦力を解放する予定だった。



 …………そして、ソレに加えて冒険者ギルドの急上昇する名声へと傷を付けて押さえ付ける為に、こんな風にもしたいのだろう。




 実は冒険者達の指揮を現地で取っていたのは王宮が派遣した人物であり、スタンピード鎮圧にも多大な貢献を果たしていた。


 しかし、冒険者ギルドはその存在を隠蔽し、彼が手にするハズだった名声や功績を全て自分達のモノとしている。




 そう言った風に情報を流し、冒険者ギルドに集まりつつある人望を自分達の方へと引き付ける為の駒として目を付けた相手がシェイドだった、と言う事だろう。



 実際に功績の類いを口外されず、讃えられる事もしていないシェイドを取り込み、実は彼こそが王宮側が送り込んだ人員であり今回の事件の最功績者だ!と大々的に発表すれば、少なくとも反乱の目が少なくなる事は間違いないし、上手く行けば離れつつあった人心や人望と言ったものも再び集める事が出来るかも知れない、と言う企みなのだろう。



 それ故の登城命令、と言う訳だ。



 …………まぁ、とは言え。


 着眼点としてはそこまで悪くは無かったのだろうが、目を付けた相手とソレを成そうとした際の態度や対応を鑑みてしまえば、彼がどの様な返答をするのか、だなんて事は容易に察する事も出来るだろう。



 そもそもの話として、彼の人となりを一切知らず、ただただ手柄を奪われた一介の冒険者に過ぎない、と認識して『命令』と言う形で刺激してしまった時点で、どうなるのか、だなんて事は火を見るよりも明らかな事だったのだろうが。



 ソレを見越した上で、変わらず悪戯を成功させたワルガキの様な笑みを浮かべながらフレスコバルディがシェイドへと問い掛ける。




「…………それで?結局、君はどうする?

 私達冒険者ギルドは、その決定を全面的に肯定しよう」



「そんなもん、一つきりしかねぇだろうがよ」




 そこで一旦言葉を切ったシェイドは、下に向けて突き出した親指で首もとを掻き切る仕草をしつつ、その口許に嘲笑を浮かべながら唯一無二の答えを口にするのであった……。





「死んでもゴメンだね。

 特に、権力の駒にされるのなんざ、殺されたって引き受けるかよ!」






次回、第二部のエピローグ的なモノを入れ、その次にお決まりの閑話と人物紹介的なモノを入れて第二部は終了する予定です

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