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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
六章・反逆者はその名を『英雄』へと高める

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反逆者は『隊商荒らし』に終焉を突き付ける

 



「…………やれやれ、ようやっと終わったか。

 矢鱈と手間取らせてくれやがったな?しぶといだけで、楽しくもなんとも無かったが、な」




 そう言いながら、血糊を振り落とした刃を鞘へと納めて行くシェイド。


 その視線の先には、変わり果てた姿となっているハシラが居た。



 手足を断ち斬られ、全身から大量に出血して行くハシラ。


 文字の通りに『血の池』を作らんばかりの勢いも在ってか、その顔色は既に青白く、小さくなった全身を細かく痙攣させている事が容易に見てとれていた。



 確実に、末期の痙攣を起こしてしまっているハシラの姿に、それまでは得物を手にしている事で相手を斬り伏せる事だけを優先していたシェイドの思考に、『この後』に関して考慮するだけの余裕が生まれ始めて行く。




「………………あ、ヤッベ、ちとやり過ぎた。

 このままコイツに死なれるのは、ちょっと不味いんだけどなぁ……」



「はいは~い!

 そう言う時は、お姉さんにお任せあれ!ってね!

 と言う訳で、はいバッシャーンッ!とね」




 多少の焦りを含んだ呟きが、誰に向けるともなく彼の口から溢れ出る。


 一応、この後の『予定』としては、今回の件の元凶たるハシラには生きていて貰った方が都合が良かったのだ。



 とは言え、別段『必ず生きていないと不味い事態になる』と言う訳でも無い為に、言葉の割には軽い雰囲気で溢されたその呟きにサタニシスが反応し、腰にぶら下げていた『道具袋(アイテムバッグ)』から小瓶を取り出すと、その中身をハシラへと目掛けてぶちまけて行く。



 念のため、と彼女が独断で購入しておいたポーションであり、その効果は彼が負傷した時の為を思って用意したモノでもあった為に、市販品の中ではかなり上位に位置するモノとなっていた。


 その為、専門の固有魔術である『回復魔術』を行使した時の様に、喪われた四肢が再び生え揃って行く、と言う事態にはならないながらも、その身体に刻まれた大小様々な傷口はあっと言う間に塞がれて行き、四肢の断面も新たな皮膚によって覆われて出血も収まって行く事となる。



 同時に、増血剤としての効果も含まれていたのか、それまではほぼ死人と変わらない様な顔色をしていたハシラの頬や肌にも赤みが差し、それと同時に閉ざされていた瞼が痙攣と共に押し開けられて再び外界をその瞳に写し込む事となった。




「………………あぁ、やっぱり、君は僕の、僕だけの『運命の相手(ヒロイン)』だ……こうして、悪辣な卑劣漢の洗脳にめげず、寧ろソレを振り払ってまで僕を助けてくれたのだから、君も心の底では僕の事を想ってくれていた、と言う事なんだね……?

 なら、話は早い。今こそ、僕と君とで手を取り合い、周囲に不幸せしか撒き散らさないそこの卑劣漢に天罰を下してやろう!僕と君との、二人で!!」



「………………え?無理。

 と言うか、なに勘違いしてくれてるの?流石に気持ち悪いんだけど……?」



「……………………え……?」




 意識を取り戻した途端に周囲の状況を理解した事は、天才を自称するだけの事は在った、と言えたかも知れない。


 故にハシラは、自らの治療をかって出た(間違ってはいない)と思われるサタニシスに対して微笑み掛け(本人(サタニシス)曰く『かなり気持ち悪かった』との事)、自身へと協力してシェイドを打倒する事を提案(命令)する。



『スキル』を発動させていた事と、行動から自身への好意を持っている、と確信しての行為であり、その為こうして汚物を見る様な視線にて、明らかに生理的嫌悪感を前面に押し出された様な反応をされる、なんて事は予想だにしていなかったので、思わず間の抜けた呟きが口から溢れ出る事となってしまう。



 が、そんなハシラの内面での混乱に興味を示す事も無く、考慮をする事も無く、声色にも嫌悪感を滲ませた状態にてサタニシスが言葉を続けて行く。




「……そもそも、前提からして私がアンタみたいな外道のクズに好意を持っているだとか、シェイド君に無理矢理従わせられている、だとかの勘違いをするの止めてくれない?」



「………………な、なななっ……!?」



「私がアンタを治療したのは、さっきの状態で死なれるとシェイド君が困るから。理由としては、ただそれだけ。

 そうじゃなきゃ、シェイド君が万が一の事態になった時に備えて買っておいたポーションなんて、アンタ程度に使って上げるハズが無いじゃない!」



「………………そん、な……!?それ、も……アイツに言わされている、だけなんでしょう……?ほら、さっきみたいに、頑張って本当の事を……!?」



「だから、ソレも無いから。

 そもそもの話として、私とシェイド君とは対等な仲間…………かどうかはちょっと置いておくとしても、少なくとも私としては『仲間』かソレ以上の関係性だと思ってるから行動を共にしているの。

 アンタみたいに、手当たり次第に相手を洗脳して、自分にとって都合の良い『お人形さん』にしてる訳でも、されてる訳でも無くね!」



「…………そんな、バカな……!?さっき助けてくれたのは、僕の事を愛しているから、じゃ……?」



「はぁ?そんな訳無いでしょう?

 アンタが何をどうやって、そんな見当違いも甚だしい勘違いをしたのかは知らないけどね?私の想いは、もう既にたった一人に捧げてるの。

 ソレは、少なくともアンタなんかじゃない。アンタみたいな、他人を食い物だとしか思っていないような、外道の極みみたいなヤツじゃ無いのは確かだし、私はそう信じてるの」



「………………そんな、ハズが……この世界は、僕の、上位者の箱庭、なんだろう……?なら、ソコをどうしたって、僕らの自由なハズじゃないか……!?」



「…………そう言う、自分本意で身勝手な事しか言えないから、アンタは誰からも好かれないんだって分からないのかしら?

 シェイド君も言動は似てる処は在るけど、それでも彼はちゃんと他人の事を慮れる人だもの。故意的に考慮しない時も在るけど、そうでない時はちゃんと考えて行動してくれるのだから、ソコは大きな差だって言えるわよね!

 それから━━━━」



「………………はい、そこまでにして下さいねぇ~?」



モ、モガモガモゴ(シェ、シェイド君)!?」




 背後から彼女の口許を手で塞ぎ、強制的に言葉を封じるシェイド。


 その顔は、二人の無意味なやり取りに対しての呆れも多大に含まれていたが、サタニシスによる過大とも取れる称賛と、ソレをスタンピードの残党を処理し終えて戻って来始めた冒険者達に聞かれてしまった事への羞恥心により、若干ながらも赤く染まりつつ在った。



 そんな、恥じらいの表情を浮かべるシェイドの顔に、以前の泣きそうになっていた時以来のレアな表情であると言う事と、想いを寄せている相手の浮かべた恥じらい、と言う事で一気にテンションと興奮の度合いが高まり、今にも押し倒して野外にも関わらずに事に及ぼうとしている、と言う風にも見える勢いにて彼へとサタニシスが飛び付いて行く。



 …………獣人であれば、確実に耳や尻尾を振り回して興奮と親愛とを表現していたであろう彼女の勢いと様子に、周囲の冒険者達は『戦場での興奮も在っただろうから』とからかう様にしながらも、多少の呆れを含めた苦笑いを浮かべて見守る。


 そんな中、一人ダルマに近しい状況にて地面に転がされていたハシラは、彼女の言葉が真実のみを告げていた事を直視させられる事となり、絶望の表情を浮かべる事となる。



 何せ、自らが想いを寄せていた(一方的にだが)相手が、他の異性と共に在りながら、その顔に『女としての幸せの最中に居ます』と言う様な表情を浮かべると同時に、その中に一抹の『寂しさ』の様なモノを浮かべているのだ。


 ソレを間近で見せ付けられる羽目になったのだから、絶望の余り発狂したとしても、自害しようとしたとしても、何ら不思議な事で無いだろう。



 そうして、死んだ魚の目をしながら静かになったハシラに対して、動きを見せる影が一つ。


 それこそ、この場面に於いて()()()()()()()()()()()()()()()であり、かつこれから行われる事が如何に残酷な事なのかを唯一理解している存在であった。




「…………おう、どうした?

 威勢の良かったのは、もうお終いか?

 これから、漸くお前にとってのメインディッシュが始まるって言うのに、この程度で壊れられちゃあ、詰まらないんだがね?」



「………………メイン、ディッシュ、だと……?」




 自らの言葉に反応を示したハシラに対し、ニヤリ、と黒い微笑みを浮かべる事のみで返答して見せるシェイド。


 その右手には再び得物が握られており、ソコには確かに存在感を放つだけの魔力が込められていた。



 サタニシスやフレスコバルディを始めとした周囲の者達が、何をするつもりなのか?と言った不思議そうな視線を彼へと集中させて行く。


 そんな最中、左手にてハシラの襟首を掴んで持ち上げたシェイドは、先程まで『穴』が開いていた上空に得物の切っ先を向けると、丁度鍵穴に差し込んだ鍵を捻る様にしながら得物に込めた魔力を解放して見せる。




 …………すると、ソレにより、再び胸が悪くなる様な異音を立てながら、彼の手によって閉ざされたハズの『穴』が開き、再びその冒涜的な色合いの謎空間を衆目の元に晒け出す事となったのだ。




 呆気に取られながら、ただただその光景を見詰めるのみしか出来ずにいる皆の中、同じく呆然とソレを眺めていたハシラの耳元へと彼からの囁きが吹き込まれる。




「…………さて、これからがメインディッシュだ。

 具体的に言えば、俺はこれから、あそこにお前を放り込もうと思ってる」



「……………………は……?」



「自分で開けて於いて何だが、流石に俺も『向こう側』がどうなってるのかは知らないし、持っていかれた魔物がアイツらにどう言う風にオモチャにされているのかも知らない。

 精々が、一回開けた場所であれば、閉じたばかりなからこんな風に規模を拡小して短時間だけ開け直す、って事が出来る程度だ。

 ………………だが、ソレは、あくまでも()()()()()()()()、だ」



「………………そ、それって、まさか……!?」



「はっはぁ!そう言う事さ!

 俺が閉じてしまえば、他の誰かさんが同じ様に一から術式を組み上げて魔術を発動させて『向こう側』にお前を迎えに行くか、もしくは『向こう側』から無理矢理抉じ開けるしか、お前がこっちに戻ってくる方法は無いって訳さ!

 まぁ、もっとも?空間干渉系統の『スキル』は持っていないみたいだし、魔術の素養も闇属性は無いみたいだから、戻ってくるのは諦める事だな。もっとも、もしかしたら『向こう側』が送り返してくれたり、元居た世界に帰してくれたりするかも知れないが、ソレを期待する事だ。

 それまでは、精々アイツらのオモチャにされるのを愉しんでくれたまえよ!ハッハッハッハッハッ!!!」



「………………い、嫌だ……それは、ソレだけは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!?」




 絶望の叫びを周囲へと響かせるハシラの襟首を掴んで引き摺るシェイドは、彼の抵抗を意に介した様子を見せずに高笑いしながら『穴』の下へと移動する。


 そして、その先にて、最初と比べると随分と小さくなりはしたものの、それでも人一人程度であれば問題なく通過出来る程度に開けられた『穴』の向こう側から、またしても『腕』がこちら側へとその姿を露にする。



 見ているだけで精神が不安定になりそうな冒涜的な姿を前にしても、特に動揺した素振りは見せず、ここぞとばかりに暴れもがくハシラを片手で掲げて見せると、故意的に注意を引くように左右に大きく揺り動かして見せる。



 すると、『腕』の方でもどうにかしてソレを察知したのか、彼らの方へと不定形に蠢く指を開閉させながら、凄まじいまでの速度にて伸ばされて行く。



 …………が、シェイドがそうして伸ばされた『腕』へと目掛けてハシラを投げ付けた事。


『腕』が反射的にハシラを掴んで止まった事。


 その隙を突き、空かさず先程と同じ様に闇属性の魔力によって編まれた縄にて『腕』を拘束し、同じ様に『穴』の向こう側へと引き戻す。



 それらが、まるで予め決められていた動作の様に自然に嵌まった事により、掴まれたハシラが周囲に悲壮な叫びを響かせながら『穴』の方へと引き寄せられて行き、最終的にはそのまま『腕』ごと向こう側へと引き込まれ、この世界から姿を消失させる事となった。




 …………それにより、一人の稀人が引き起こそうと画策していたスタンピードは、その規模からは考えられない程に少ない犠牲にて、稀に見る速度によって終息する事となるのであった……。





最後は別の世界へと没シュート!


……え?死んでないじゃないか?


生きたままで謎生物(?)共のオモチャにされる方が、一息に死ねるよりも余程無惨な最後だとは思いませんか?(黒い微笑み)



なお、後数話程度でこの章&第二部も終了する予定です


第三部以降のストーリーがどうなるのか、については楽しみにしていただければ幸いですm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴミ(キミヒト)はゴミ箱(異界に続く穴)へ捨てる。当然の事だよね♪向こうでも元気にやれよ、最も「生きていれば」の話だけどねWいやぁ彼は本当に良い道化だったよw……(急に真顔になる)しかし奴が…
[気になる点] 物足りないな…… もっとこう、生きたまま骨を金属ヤスリで削るような、神経に針金ぶっ指すような、何度も何度も死の恐怖を与えてストレス掛けまくるとか、色々やって欲しかったな……(´・ω・`…
[一言] もう1回穴開けるとか、ホントにとんでもないな
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