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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
六章・反逆者はその名を『英雄』へと高める

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反逆者は監視者と共に『隊商荒らし』を撃破する

 



「…………まったく、遅かったじゃないか。

 随分と時間掛かっていたみたいだけど、まさか殺してはいないだろうな?

 幾ら無関係な人間だからって、サクッと殺っちまった、とか言うのは面倒だから止めて欲しいんだがな?」



「なによぅ!

 そう言われると思って、お姉さんだって面倒臭いのを我慢して、ちゃんと生かして無力化して来たんですからね!」



「おっと、そいつは失礼。

 …………しかし、『無力化してきた』って事は、やっぱり抵抗無いし反撃される羽目になった、って事で良いのか?」



「そうよぉ。

 予想通りでは在ったけど、どうやら距離を引き離しても効果に影響は無いタイプのモノだったみたいでね?

 アイツから引き離した私の事を敵だと認識したみたいで、襲い掛かって来たのよねぇ。まぁ、負けるハズも無いんだけどね?」



「そこは心配して無いから安心しろ。

 で、ちゃんと生かして無力化したんだろうな?一人二人程度なら殺っちゃっても事故で済むから~、とか思って死なせて無いだろうな?うん?」



「失敬な!

 ちゃんと、全員五体満足で生かしてありますぅ!

 取り押さえる時に抵抗されて、ちょっとイラッと来たから手足の一本や二本はへし折ったりしたかも知れないけど、ちゃんと全員生きてましたぁ!

 少なくとも、お姉さんがこっちに戻って来た時には、ちゃんと生きてたよ。まぁ、その後に魔物に襲われたりしてたとしても、流石に知らないけどね?」



「なら、まぁ良いか。

 じゃあ、さっさと元凶のコイツを片付けてしまうとするか」



「了解~!」




 合流を果たしたシェイドとサタニシスの間で行われた情報交換が終了し、揃って視線をハシラへと向けて行く。


 するとソコには、彼らへと片手を掲げつつ、絶望と憤怒と嫉妬とにまみれた視線を向けながら佇む『隊商荒らしキャラバンクラッシャー』ことハシラの姿が存在していた。



 何故、会話をしていただけの二人を横目に、逃げる事も攻める事もせずにいたのか?



 その答えは一つ。


 実は、既に両方やっていた、だ。



 そう、彼女がその姿を顕にした時こそは、シェイドへと向けて忌々しそうな視線を向けるのみであったハシラだったが、彼女との会話に意識が割かれている、と言う事を察知してか、半ば奇襲を仕掛ける形にて彼に向けて魔術を放ったのだ。



 当然、この世界の人間の事を見下し、自分こそが上位存在だ、と信じて疑わないハシラに『相手を殺してしまわない様に』と言う配慮が在るハズも無い。


 また、自らが『運命の相手(ヒロイン)』として認定しているサタニシスを奪った相手(だと勝手に認識している)であるシェイドに向けて躊躇いを抱くハズも無く、当たり前の様に人一人を殺して有り余るだけの威力を込めた魔術を、彼へと向けて発動して見せたのだ。



 …………しかし、その結果は語るまでも無いだろうが、アッサリと失敗に終わる事となる。


 何せ、彼が直接反応する素振りすら見せる事もせず、彼が無意識的に周囲へと放つ魔力圧によって展開されている疑似結界によって意図も簡単に受け止められ、ソレを貫く事すらも叶わずに消失する事となったのだ。



 ソレを愕然としながら眺める事となったハシラであったが、ならば直接攻撃を、と言わんばかりに短剣を抜き放って彼へと目掛けて突っ込んで見せたのだが、その次の瞬間には彼の手にしている刃が翻り、自らを肩から腰に掛けて袈裟懸けに両断する、と言う『幻覚』を見る羽目になり、咄嗟に飛び退く事となってしまう。


 あまりにもリアルな『幻覚』であり、シェイドの放つ『剣気』とでも呼ぶべき達人特有のソレを受けた事により、己の内に滑り込んだ鋼の冷たさすらも『体感』した様に感じる程に現実味の在り過ぎるソレを味わってしまっては、流石に天才を自称するハシラであったとしても自信を消失する事となり、死の恐怖によってそれ以上の接近は断念せざるを得ない状況となってしまう。



 それ故に、天才を自称し、この世界に於いて自身が最上の存在である、と自負しているハシラからすれば受け入れがたい事態であり、前回の様に『不利な状況を覆す為の一手』としての戦略的撤退では無く、ただただ『勝てない相手に背を向けて逃げ出す』と言った、完璧なまでの敗走を選択する事を余儀無くされてしまったのだ。



 自らに注意が向けられていなかったのを良いことに、ハシラは前回と同じく『スキル』によって従えていた巨大な狼型の魔物を呼び寄せる。


 いざと言う時の為の備えとして、比較的近間に待機させていたので、こう言う事が出来ている、と言えるだろう。



 そう言う意味合いでは、準備万端で充分に思慮深く事を進めていた、とも言えるのだろうが、ここでも予想外な出来事が一つ発生する事となる。


 …………そう、呼び寄せた魔物が、自らが飛び乗る直前に横合いから放たれた魔術によってその身を貫かれ、只の一撃で物言わぬ骸へとその身を変える事となってしまったのだ。



 唖然としながら、死体と化した狼型の魔物を、乗り込もうとしていた体勢のままで見下ろしていたハシラだったが、辛うじて目にしていた『魔物を貫いた魔術』の軌跡を辿って視線を回らせて見ると、その先には指先に崩壊しつつある魔法陣を浮かべていたサタニシスの姿が在った。



 視線すら向けずに、自身ですら倒すことは出来ず、ギリギリの処でどうにか洗脳して配下にする事に成功した、特級にカテゴライズされているであろう魔物を、視線すら向けず、意識すら大して割く事もせずに、只の一撃にて葬られる事となってしまう。


 その事実に加え、自らがこの世界に於いて自身の最愛、運命の片割れであると認定してやった(一方的かつ勝手に、だが)『運命の相手(ヒロイン)』であるハズのサタニシスによってソレが為されてしまった、と言う現実を突き付けられてしまい、その結果として逃げる事も抗う事も出来ずに、様々な感情をない交ぜにしながら彼の事を睨み付ける事しか出来ていなかった、と言う訳なのだ。



 とは言え、そんな事情が在ったとしても、彼がどんな心境に在ったとしても、ソレをシェイドとサタニシスが酌んでやらなければならない道理は存在していないし、そもそもその辺の事情を酌量してやるつもりが欠片も無い為に、当初の予定通りにハシラへと向けて敵意と殺意とを剥き出しにした状態で大きく一歩踏み出して行く。



 一応とは言え、会話中に回復しつつあった魔力を身体を回復させる事に注力していただけの事は在り、普段の通りの動作であれば問題なくこなせる様になっていたシェイド。


 案の定、その剣閃は普段通りの鋭さを取り戻しており、寸前までのソレとは比べ物にもならない程の速さと重さを兼ね揃えたモノとなっていた。



 容赦も遠慮も呵責も無しに繰り出される剣技の数々を、自らに授けられた『スキル』を頼りにして必死に回避して行くハシラ。


 既に『スキル・全回避』として定められている許容量を越えているのか、ソレまでの様に紙一重とは言え完全に回避する、と言う事も出来てはおらず、その身体に一つ、二つと朱線を増やす事となって行く。



 が、腐っても流石は稀人と言うべきか、それとも本人が自称していた通りに『天才』だったからかは不明だが、辛うじて回避行動に取って致命的な一撃を手足に受ける事も無く、また即座に落命に至る様な負傷を負う事も防ぐ事が出来てはいた。



 そうして、辛うじて拮抗状態に近しいモノが出来上がりつつ在ったのだが、得物を振るうシェイドの横から掛けられたサタニシスの一言によって、ソレはアッサリと崩れ去る事となる。




「ねぇ、そろそろ確認はもう良いんじゃないの?

 あんまり遊んでいると、後が面倒になりそうだからお姉さん的にはあんまりオススメは出来ないかなぁ~?」



「………………まぁ、それもそうか。

 アレレベルをぶっ放した後の身体の具合とそうなった際の体感覚、どれ位経過したらどの程度回復するのか、のデータが欲しかったから引き伸ばしたけど、欲しい情報はもう大体掴めたから、そろそろ終わらせるとするか」




 ………………まるで、今の今まで本気を出してはいなかった、と言わんばかりにも聞こえるシェイドのセリフに激発しかけるハシラであったが、その次の瞬間には彼の持つ『スキル』の反応速度すらも上回る程に鋭く早い剣閃が繰り出される事となり、瞬時に背筋を凍えさせる事となってしまう。



 どうにかして大きく身体を捻り、『スキル』によって強制される動作だけでは無く、この世界に飛ばされてから僅かながらでも培って来た『勝負勘』の様なモノも併用する事で、辛うじて致命的な負傷を負うこと無く回避に成功する。


 が、ソレはあくまでも『次の攻撃を回避するのに致命的な部分』の事であり、本来の意味合いとしての『致命的な負傷』とは異なる為に、本当に無傷で切り抜けられた、と言う訳では勿論無い。



 その証拠に、シェイドの握る得物の刃には、まだ真新しい鮮血がベッタリとこびりついて滴っている状態となっていたし、それと対面するハシラの身体には、長く大きな袈裟懸けの裂傷が刻まれる事となっていたのだ。



 元の世界に居た時から今に至る迄を合わせたとしても、初めて受けるその大怪我に、思わず地面へと膝を突いて脂汗を垂れ流しながら喚き散らしたくなるハシラであったが、彼へと初めてクリーンヒットが成されたと言う事にも関わらず、ソレに頓着する様子を欠片も見せないシェイドの容赦ない追撃の刃と魔術の嵐を前にそんな事はしていられない、と『スキル』によって無理矢理身体を動かされて行く事となる。



 回避する度に悲鳴を挙げて行くハシラ。


 しかし、それと対峙するシェイドには、その程度で情けを掛けてやろう、と思うだけの慈悲の心は存在しておらず(少なくとも事の元凶たるハシラは対象外)、より苛烈に剣術と魔術とを駆使して彼を追い詰め、確実に負傷を増やして行く。



 時折、上手く回避出来た、と言うタイミングを狙い澄ました様にして、サタニシスから放たれた、その一撃では死にはしないし動作が取れなくなる訳でも無いが、確実に動きは鈍って行く、と言う程度のダメージを与える魔術が放たれた、ハシラの体力と気力とを鑢に掛けられたかの様にして削り取られて行く。



 …………そうして、二人掛かりにて、確実に、されど一息には決してせずにハシラの事を嬲る様にして追い詰めて行く事暫し。


 彼らの攻防は、ハシラがその四肢の全てを喪う事で、漸く一時の終演を迎える事となるのであった……。




(戦闘は)これにて終演!


次回、リザルト回にしてざまぁ(?)回!(予定)


お楽しみに!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 自称天才の無双が漸く終わるww
[一言] なんだ、四肢を斬り落としただけか。 (´・ω・`)モノタリン
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