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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
六章・反逆者はその名を『英雄』へと高める

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反逆者は魔物の暴走に備えて指揮を取る《後》

 


『何か心当たりは無いか?』



 その問い掛けを受けたシェイドとサタニシスは、話を聞くだけでも何となく覚えが在った為に、思わず揃って顔を見合わせながら図った様に苦笑を浮かべる事となってしまう。



 意図せずとも、至近距離にて二人の仕草を見ていたフレスコバルディは、二人が何かしら知っていて、賞金首に関しても心当たりが在る、と言う事を確信し、視線と表情にて話す様に二人へと訴え掛けて行く。


 それに対してシェイドがサタニシスに



『…………どうする?一応話しとくか?』



 と無言のままに、視線と仕草にて問い掛けると、当のサタニシスも



『…………まぁ、一応は協力関係に在るんだし、アイツの能力考えればどうせ関与していると見て間違いは無いだろうから、教えるだけは教えておいても良いんじゃないの?』



 と、彼と同じく視線と仕草にて伝えて来た。


 その為、シェイドも話しておいても構わないか、と判断を下すと、そのままなんて事は無い、と言う風に口を開いて行く。




「まぁ、心当たりは在ると言えば在るな。

 聞いてるとは思うけど、俺達が訴え出て懸賞金を懸けさせたヤツが居ただろう?多分、ソイツだな。

 ついでに言えば、本当に発生の兆候を見逃していた、とか言う間抜けな事態でなければ、多分今回のスタンピードもソイツが原因だな」



「……………………え?」



「確か、名前は…………『キミヒト・ハシラ』だったかしら?

 ソイツ、稀人なんだけど、どうにも人の事を操る様な『スキル』と、魔物を従える事が出来る『スキル』を持っているみたいなのよねぇ~。

 私達、その両方を見せられちゃってるから、間違いは無いハズよ?」



「………………ソレ、本当かい!?」



「マジマジ、大マジ。

 何せ、俺達がこっちに来る途中で襲われた時なんか、ほぼ小規模なスタンピード、って言っても間違っちゃいないだろう魔物の群れをぶつけられる羽目になったからな」



「ねぇ~?

 全部吹き飛ばしてやったからアレだし、証拠になるだろう道なんかはここからそれなりに離れた場所だから今から見に行く、なんて出来ないだろうけど、一応は本当よ?

 それと、私にも例の『人の事を操る『スキル』』を使おうとしたみたいだけど、幸いな事に効かなかったみたいでねぇ。

 いやぁ~、我ながらシェイド君と敵対する様な羽目にならなくて良かった、と思うのよねぇ~♪」



「………………なんと……ソレは、本当かい……?

 じゃあ、パーティーを組んでポジションを固めていたのなら、受けるハズが無い致命傷を受けていた冒険者達は……」



「まぁ、十中八九ソイツの『スキル』のせいだろうな。

 ソイツで操られて、同士討ちを強要されたんだろうよ。もっとも、ソレ以外で裏切っていた、って可能性もなきにしもあらず、だけどな?」



「事前に何かしらの細工をされていた、って可能性も在ると言えば在るだろうけど、お姉さん流石にソレは無いと思うなぁ。

 アイツ、『天才』を自称していた割には頭回らなさそうだったし、純粋に言動が気持ち悪かったから、個人的にアレの口車に乗るヤツの気が知れないのよねぇ~。

 それに、アイツ言う程のカリスマも無い上に、言動その物が気持ち悪かったから、アイツ自身の魅力やら何やらで相手を口説き落とせるとは思えないもの。多分、『スキル』で無理矢理洗脳した、って感じなんじゃないかしら?」



「………………そう、か……裏切った訳じゃ、無かったんだな……」




 二人の説明を耳にして、安堵の声を漏らして行くフレスコバルディ。


 その表情は、先程のそれよりも幾分か明るくなっており、若干ながらも生気とでも呼ぶべきモノが戻って来ている事を窺い知る事が出来ていた。



 何かしらの理由が在っての行動だったのだろう、とはそれなりに顔見知りの関係に在った彼は思っていたのだが、その理由が分からず、あまつさえ普通に仲間を裏切って殺害するにまで及んでいたのでは無いのか?と言う疑念まで浮かんでいた彼にとって、彼らの言葉は福音にも似た安堵と安心をもたらすモノとなっていた。


 とは言え、他人の、しかも通常の魔術やら魔道具やらよりも強力である稀人の『スキル』によってもたらされたモノであったとしても、仲間を裏切って背後から襲い、その上で惨たらしく殺害してしまった事は事実に他ならないし、その事に関しての記憶やら罪悪感やらが残されていないとも限らない為に油断も安心も出来ないのだが、ソレは言わぬが華、と言うモノだろう。



 普段は読むつもりが無い為にしないが、今回ばかりはそう言った点を指摘すると話が拗れる、と察した為に敢えて口にする事をせず、何故か気を緩めてしまっているフレスコバルディへと向けてシェイドが再度口を開いて言葉を放つ。




「さて、じゃあ疑念が解消された処でそろそろ動いて貰おうか?

 取り敢えず、現在地からスタンピードを形成しつつ在る魔物の群れが動いていないか、動き始める兆候を見せていないのか、逐次報告させる様にシステムを組んで貰おうか。これは、必要最低限の要求だから、拒否は許さんよ」



「あ、可能性として、例の『隊商荒らしキャラバンクラッシャー』が近くに居るかも知れないから、至近距離で観測する斥候職には魔力が一定以上で精神力に自信が在って、その上で対人での隠密行動にも慣れている人をお願いね?

 ソコでヘマして、アイツに気付かれてこっちの準備か整っていないのにスタンピード開始、とかになられたら目も当てられないから、ね?」



「それは、当然としても……その、本人の戦闘能力だとかは、重視しなくても良いのかな?

 奇襲を仕掛けて、少しでも数を減らしておく、とか……?」



「いや、ソイツは無しだ。

 下手に刺激して、暴発されても困るからな。今回送るのは監視優先で戦闘能力に関しては二の次三の次だ。そんなヤツが居るのなら、これから展開する防衛線の方に全力で回しておけ」




 少々不安そうな声色にて提案してくるフレスコバルディに対してシェイドは、断言する形でバッサリとソレを切り捨てる。


 下手に刺激して暴発されても対処が面倒に過ぎる(出来ない、とは言っていない)事になるので、送り込むのであればそうなる可能性が少しでも低い人員にするべきだ、と渡されたリストをパラパラと捲り、コイツとコイツとコイツ、後コイツを送り込んで探らせろ、とシェイドが指示を出して行く。



 そうして提示された名前を聞いたフレスコバルディは、覚えが在るモノだけでもその方向に特化していると記憶していた名前ばかりであり、ギルドマスターとして活動していた自分ならばともかく、ついさっき任せられた彼の口からそれらが出てくるとは思っておらず、咄嗟に反応出来ずに数瞬返事が遅れてしまう事となる。



 そんな彼の反応に頓着する素振りを見せる事もなく、目の前に広げられた地図へと視線を落とすシェイド。


 彼の視線の先に在るのは、現在スタンピード予備軍が溜まっている場所とウィアオドスとを結ぶ場所であり、簡単ながらも幾つかの地形が書き込まれている部分であった。



 幾つか記されている地形の内の一つを、彼が指差す。




「…………俺としては、この辺りに引き込んで一発デカいのを叩き込んでやる方が良いと思うんだが、どうだろうか?」



「私としては、寧ろこっちに誘導してから、高低差を利用して一方的に叩いてやるのが良いんじゃないかな?と思うんだけど」



「…………いや、そっちは脇から溢れる可能性が在る。

 仮にも、人間の知性が指揮として入るのなら、そっち側から溢れさせようとするハズだ。

 そうなったら、地形の関係で逃げ場が無くなる事になるから、逆にこっちが追い込まれる事になりかねない。安全性を考慮するのなら、止めておいた方が良いんじゃないのか?」



「でも、そっちは私達で塞いだりだとか、その手の事が得意な冒険者を多く振っておいて耐えさせるだとか、やり方は色々と在るんじゃないの?

 それに、こっちの方がそっちよりも手っ取り早く終わるわよ?多分だけど」



「だが、ソレって攻撃側の連中の練度が一定以上である事が前提になってないか?

 実際にその辺を把握していない俺達にとっては、人数さえ揃えられればどうにかなる見通しの立てられるこっちの方が良いと思うぞ?

 持久戦になりやすいだろうが、その分不測の事態にも対応しやすいからな」



「………………う~ん、じゃあ、これから来るハズの魔物の情報でどっちにするのか判断するのはどうかしら?

 どっちかと致命的に噛み合わなさそうな種類が多かった場合、もう片方に切り替えて立案して行く、なんてどう?」



「おっ!それ良いな。

 じゃあ、取り敢えず情報待ちして、それから詰める形で行くか。

 どっちの案で行く事になったとしても良い様に、ある程度はそれぞれで事前に考えておけば、今はそれで良いだろう」



「んふふ~♪

 どう?お姉さんの意見、採用して見るモノでしょう?

 その調子で、本作戦の案も、お姉さんのヤツにしちゃいなよ~?」




 そう言って、嬉しさを隠そうともせずにシェイドへと絡み付いて行くサタニシス。


 未だ対立意見では在るものの、ある程度以上は正当性も確実性も認めてくれている、と言う事実にテンションが上がり、普段は余りしないように、と心掛けていた行動にも踏み切る形となったのだろう。



 そんな彼女からの攻撃(?)を華麗に回避しつつシェイドは、少しでもより良い形にてスタンピートを撃滅出来る様に、と周辺の情報を少しでも多く把握するべく資料の類いを読み進めて行くのであった……。




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― 新着の感想 ―
んー、今更『それは、本当なのかい…?』ですか。無能すぎませんか冒険者ギルド並びにマスター。 とりあえず稀人はろくでもないんだ、という風潮はちゃんと生まれて欲しいですね。この世界のガンなのだと。
[良い点] 終焉(クラッシャー君にとって)の始まりですな。 [気になる点] 事実をギルマスに言ってたら、それこそ再起不能にでもなっていましたかな? [一言] このようなギルマスがシェイド氏の地元に居れ…
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