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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
六章・反逆者はその名を『英雄』へと高める

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反逆者は魔物の暴走に備えて指揮を取る《前》

珍しく前後編です

 



「…………さて、じゃあ協力してやるに当たってまず一つ。

『俺達が要求した事には従え』

 これは、必ず守って貰う。当然、いきなり『死ね』だとか『白金貨一万枚持ってこい』だとかみたいな、物理的に不可能な事を言うつもりは無いが、嫌だと言うなら、俺達はそこで即座に降りさせて貰うが、別に構いやしないよな?」



「要するに、私達の言う事には黙って従って貰う、って事。

 分かったなら、お返事しようか?」



「…………は、はい、分かりました……」



「宜しい。

 じゃあ、早速現時点でのスタンピードがどの辺まで迫っているのかを書き込んだ周辺地図と、大雑把で良いからそのスタンピードを形成している魔物の種類と特性、それと現在動員出来る冒険者の一覧と簡単な特技を纏めたモノを用意して貰おうか?

 可能な限り素早く、迅速に、な?時間は有限だぞ?」




 半ば無理矢理フレスコバルディに対して協力する条件を飲ませたシェイドとサタニシスは、早速、とばかりに要求を突き付けて行く。



 その、見方に依らずとも『機密』とされている情報を寄越せ、と言わんばかりの態度と口調に、半ば巻き込まれる形にて同室していた受付嬢が反射的に反論しようとするが、咄嗟にフレスコバルディが仕草にて制止し、辛うじて反発を口にせずに済んだ。



 二人のやり取りを無機質な視線にて眺めていたシェイドからの視線に促される形にて、自らの執務机の上に置かれていた複数の紙束と一枚の巻き紙を取り上げると、紙束を二人に渡して巻き紙を応接机の上に広げて行く。


 するとそこには、現在地であるウィアオドスの大雑把な形状並びに、周辺の地形が書き込まれた大判の地図が描かれていた。



 基本的に機密情報の塊であり、ギルドから貸与されるモノもかなり大雑把でかつ局所的(基本的に目的地の周辺だけ、と言ったモノが多い)で簡易的なモノばかりであるので、こうして比較的精密に作られたモノを目にする機会は余り多くは無い為に、好奇心と関心と興味とが入り交じった視線を向ける二人へと語りかける様にしながら、実際に地図を指差してフレスコバルディが説明をし始める。




「見て分かる通りに、このウィアオドスは最外部の外壁と、一般市民が暮らす都市部とを挟んだ内部に存在する王城近辺を囲む城壁との二重の防壁が築かれている造りになっている。

 ……本来なら、こう言う事態には城壁内部にまで市民達を避難させ、外壁付近で魔物を迎え撃って撃退する、と言う手筈になっていたハズなんだが、さっき言った通りの事情でソレは出来なくなっている。

 周辺の地形の方は、見ての通りに基本的に平原だ。森みたいな遮蔽物は無いし、スタンピードを起こしている魔物はそちらの山の方から来ているから、どのみち待ち伏せ等を仕掛ける事も難しいだろう。ちなみに、現在地としては、この辺りで溜まっているそうだ」




 そう言って、手にしたペンでウィアオドスを示す場所からそれなりに離れた場所に在る、山と見られる地形の記号のすぐ近くに×印を書き込むフレスコバルディ。


 ついで、とばかりにその近くから線を引っ張ると、何処か諦めた様な視線と声色にて




「ついでに言っておけば、魔物達は大体この位の広さに展開していて、数としては発見した斥候職の冒険者達が、数えるのを諦めて逃げ帰って来る程にウジャウジャといたらしいから、正確な数はこちらとしても把握は出来ていないよ。

 まぁ、少なくとも百や二百じゃ済まない位はいた、って話らしいけど、ね……」




 と告げて来る。



 ソレを聞いた受付嬢は、予め聞いていたハズなのに顔色を青ざめさせ、今にも気を失って倒れてしまいそうになる。


 …………が、ソレを直接的に聞いているシェイドとサタニシスは普段と様子を大して変える事も無く




「「ふぅん?まぁ、でもそんなモノじゃないの?

 で、こっちが冒険者のリストで良い訳?」」




 と、何故か息をピタリと合わせて言葉をハモらせる真似まで披露して見せながら、彼が手に取った紙束を無造作に捲って流し見て行く。



 その、適当にパラパラと捲っている様にしか見えない仕草に、受付嬢だけでなく二人に命運を託したフレスコバルディですら怪訝そうな視線を送って行く事となったが、一通り最初から最後まで捲り終えると、最初の状態と同じく表紙を下ろしてから二人へと問い掛ける。




「ざっと見た限りだと、例の上級以上の連中を除いたとしても、随分と稼働出来る奴が少ない様に見えたんだが?

 どうせ、アレだろう?名前の横に×印が入ってた連中って、居るハズなのに見当たらない奴ら、って事だろう?」



「…………あ、あぁ、その通り、だよ。

 普段なら、依頼を受けていなければ、このウィアオドスに留まっていたハズなのに、その姿が確認出来ていない、と言う状況に在る者達にはそうして印が付けられているが、知っていたのかい……?」



「……?いや、別に?

 こんな状況で、しかも意味深に印なんて付けられていたら、誰でもそう予想するモノじゃない?」



「寧ろ、真っ先にソレを連想するモノじゃないか?

 と言うか、それよりもそうやって×印が付けられている連中が、揃いも揃って戦力として期待できそうな中堅処で、しかもその内の大半が斥候系統の職能を持っていやがる連中だった、って方が問題だろうがよ。

 本当に、そいつら見付けられ無かったのか?酔っ払って、路地裏でゲロにまみれて爆睡してました、とかじゃ無いんだろうな?」



「………………それについてなんだが……」




 大変言い難そうにしながら、フレスコバルディが口ごもる。


 何かしら言えない理由が在るのかも知れないが、そう言った『言わない方が良い情報』として秘匿されている場所にこそ重要な情報(ブツ)は眠っているモノである、と相場は決まっている為に、多少の苛立ちと共に『さっさと吐け』とばかりにシェイドから視線を向けられる事となってしまう。



 多少とは言え殺意に近しいモノが込められた視線を向けられる事となってしまった事もあり、どうにか宥めようとして両手の平を彼へと向けつつ、全力で、話したく無かった、と表情にて訴えながら重い口を開いて行く。




「………………その、まだ混乱を酷くしたくなかったから黙っていたけど、ソコの×印が付けられていた冒険者達は、ただ単に『音信不通』と見られている、って訳じゃ無い、とギルドとしては判断していてね。

 簡単に言うと、もう死んでいるか、もしくは連れ去られているんじゃないのか、と思っているんだよ。正直な話をすれば、ね……」



「……へぇ?じゃあ、そう判断をするに足るだけの証拠が在る、と見て良い訳?

 例えば、死体が出ている、とか?」



「………………」



「あらら?

 この反応、もしかして冗談が冗談じゃ無くなっちゃったんじゃないかしら?シェイド君」



「…………かも、なぁ……で?なんでまた、こんなに斥候系統の連中ばかり?

 無謀にも、物見遊山でスタンピードの温床にでも突っ込んで行きやがったとか、そんな事は言わないよな?」



「まさか!そんな、愚かな真似をする様な連中じゃ無かったよ……。

 …………彼らは、路地裏で見付かったのさ。見るも無惨な状態で、ね。

 事情を知っている者からの話だと、なんでも『ボロい賞金首が出たから追い掛けて狩ってやる』と息巻いていたそうだから、そいつに返り討ちにされる事になったんだろう。

 …………ただ……」



「…………ただ……?」




 シェイドによる先を促す声に従う形にて、渋々言いたくは無かった、と言わんばかりの態度にて途切れさせた言葉を繋げて行く。




「………………ただ、気になる点が二つ程在ってね。

 一つは、発見された死体の数。

 聞き込みによれば、死体として発見された連中はパーティーで動いていたハズなんだ。なのに、発見された時にはパーティー全員分のソレが出てきた訳じゃ無いし、生き残りが助けを求めて、って情報もまだ上がって来てないんだよ。

 それと、不自然に偏りが在るんだ。何せ、死体として発見されているのは全部男性で、女性冒険者の死体は一つも発見されてない」



「……そんなの、その賞金首に捕まって奴隷にされてるか慰み者にされているか、もしくは返り討ちに遇って全滅しました、だなんて面子に掛けて口に出来ない、みたいな事なんじゃないのか?」



「…………そこで、気になる点の二つ目さ。

 当然、発見された死体を調べたんだけど、その死因が変なんだよ」



「変、と言うと?

 どう言う風に変な訳なのよ?」



「…………当然、中には真っ正面から戦ったのだろう、って致命傷を負っていた者や、逆に仕掛けるつもりでいた奇襲の類いを受けて殺られたんだろう、って死体もあったんだが、数体とは言え()()()()()()()()()()()()()()()()()()だとか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だとかした死体も出てしまっていてね。

 おまけに、中々特徴的な得意技を持っている事で有名な冒険者のモノと思われる致命傷が見られたり、そいつも他の女性冒険者と同じ様に行方知れずになっていたり、と言った事態になっていてね。これで不審がるな、と言う方が無理だとは思わないか?」



「…………へぇ?じゃあ、あんたはこう言いたい訳か?

 何故か冒険者達が同士討ちをする様な羽目になっていて、生き残っていると思われる連中は賞金首の方に着いている、と?」



「………………まぁ、忌憚の無い言い方をすれば、そうなるかな?

 お陰でこっちは、その賞金首の事も気に掛けながら、スタンピードに対して足りない戦力で対応しなくちゃならなくなって困り果ててた、って訳なんだよ。

 …………でも、裏切ったと思われる冒険者達も、この街でそれなりに長く活動していた様な連中ばかりだったから、そんな事をするメリットは無いハズなんだが……君達も、何かしら心当たりは無いかな?外から来たばかりなのだから、それなりに新鮮な情報を持っているだろう?なにか、知らないかな?」




…………そう、言った本人も期待はしていない、と言わんばかりの様子にて放たれた一言に対して、話を聞く限りでも何となくだが心当たりの在る、在ってしまう二人は視線を合わせて苦笑いを浮かべながら肩を竦める事となるのであった……。



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