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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
六章・反逆者はその名を『英雄』へと高める

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反逆者は嘲笑と共に交渉を纏める

 


 土下座に近しい体勢のまま、絶望と諦感に満ち溢れた虚ろな瞳をしたフレスコバルディへと向けて、呆れを隠そうともせずにシェイドが言葉を向けて行く。




「…………へぇ?冒険者ギルドって、国から切り捨てられた程度で、そこまで揺らぐ程度の組織だったんだな?

 正直、がっかりだよ。何のために、上級以上の冒険者を支部毎に所属させて縛り付けていると思っているんだ?そいつらを使えよ」



「………………彼らは、今はここに居ない……」



「………………は?」



「………………だから、彼らは、この支部に所属する上級冒険者十五名、特級冒険者三名は、今この場には居ないんだよ。残念な事に、ね……」



「………………馬鹿じゃねぇの?何のために、縛り付けて所属させてやがんだよ?」




 最早蔑みを隠そうともせずにそう言い放つシェイド。


 その視線は、そんな状況を作り出してのであろうギルドマスターであるフレスコバルディに対しての呆れと、肝心な時にその場に居ないにも関わらず、普段からデカい態度で優遇されていたであろう上級以上の冒険者達に対する嘲りに満ち溢れたモノとなっていた。



 こう言った事態に備えて所属先をハッキリとさせ、支部に縛り付ける代わりに特権を与えて普段から持て囃しているのでは無いのか?と言外に詰るシェイドとバカを見る視線を向けるサタニシスに対し、顔を上げたフレスコバルディも抗議する様に言葉を連ねて行く。




「…………それは、当然その通りだよ。

 でも、こうなったのには、君達にも少なからぬ責任が在ると私は思うんだがね。

 少なくとも、彼らがここに居ないのは、君達が原因なのだと言えるのだからね」



「…………はぁ?何を言ってくれてる訳?

 この状況を作り上げた自分の無能さを差し置いて、俺達に責任転嫁するの止めて貰えないか?殺したくなるんだけど?」



「私達は、あくまでも只の中級冒険者なんだけど?

 そんな私達が、例え所属する支部に縛られるのを厭っているから中級に留まっていたとしても、上級以上の人達をどうこうする理由も必要性も手段も何も無いんだけど?それは、どう説明してくれるわけ?」



「…………残念ながら、今回に関しては原因の大きな割合を君達が占めているよ。間違いなくね。

 ……何せ、ここに所属していた彼らが今この場に居ないのは、とある依頼をギルドから受けて遠出しているからなんだよ。君達が踏破したと報告して来た、ラビュリンテ近辺のあの『迷宮』が本当に踏破されたかどうかの調査、をね」




 そんな言葉と共に、シェイドとサタニシスの二人に対して咎める様な視線を向けてくるフレスコバルディ。


 余計な報告を、余計なタイミングで持ち込んでくれなければ、調査を確実なモノとする為に上級以上の冒険者達を総動員して戦力が手薄になる事も無かったハズなのに、とその視線は雄弁に語っていた。



 …………しかし、そんな視線を向けるフレスコバルディへと対してシェイドは、瞳に浮かべた蔑みの色を更に濃密なモノへと変化させつつ、確実に相手を下に見ている者の口調で彼の主張を一蹴してしまう。




「……ハッ!それこそ、バカ抜かすんじゃねぇよ。

 俺達が『迷宮』を踏破したせい?そこの調査に人員を割く羽目になったから?ふざけてんのか?

 俺達冒険者が『迷宮』を踏破する事は寧ろ推奨されている事なんだから、讃えられる事は在って然るべきでも非難されなきゃならない理由は欠片もねぇよ。それについて非難したきゃ、俺達の言葉を最初に疑って取り合おうとしやがらなかったラビュリンテの連中を恨むんだな。ハッキリ言ってお門違いだ。

 それに、調査隊に関しては完全にそちらの手落ちだろうがよ?幾ら『迷宮』に不慣れだからと言ったって、幾ら首都近郊だから比較的危険は少ないからと言って、だからって予備戦力を残らず派遣するだなんて、何を考えている訳だ?」



「………………そ、それは……危険性が伴う調査になると思われた為に、最大限動員出来るだけの戦力を集める事に……それに、こんな事態は完全に想定外で……」



「だからって、その対応を俺達に求められても困るんだけど?

 何せ、俺達は只の中級冒険者だからな。何の責務も負っていない代わりに、なんの特権や優遇も受けてはいないんだから、幾らギルドからの要望だとしても、ソレを受けてやらなくちゃならない道理は無いんだがなぁ?」



「…………な、なら!

 君達に対してギルドから緊急依頼を出させて貰う!

 これは、ギルドに所属している冒険者に対して強制力を持つ依頼だ!だから、君達はこの依頼を受けて事の終息に尽力しなくてはならない!そうしなくてはならない義務が在る!どうだい!?」



「はい、残念。

 話聞いてたのか?俺達は、お前らから何の恩恵も受けていなければ、寧ろこうやって不必要で余計な干渉を受ける羽目になってるんだぞ?なら、そんな義務を持ち出されたとしても、ソレに従わなきゃならない理由が何処に在るって言うんだ?」



「寧ろ、そうやって無茶振りばかりしてくれる訳なんだったら、私達がスタンピードを起こしかけている魔物に代わって君らを殺っちゃっても構わないわよね?

 私達には、君達の言う事を聞き届けた場合に得られる利益は無いんだし、事の成り行きや証拠やらは魔物達がキレイに消してくれるだろうから、後々裏目に出る事になる、なんて事も心配しなくても大丈夫だろうし、ね?」



「……………………」




 あんまりと言えばあんまりなサタニシスの言葉に、流石のギルドマスターも唖然として言葉を喪失してしまう。



 それもそのハズ。


 何せ、これ以上ガタガタ抜かすのならスタンピードに紛れてぶち殺すぞ?と言外に匂わせる事も無く、ストレートに脅し付けて来てくれたのだ。しかも、表情や仕草、雰囲気から本気であると予想できる迫力も感じられるのだから、怯まず毅然としていろ、と言う方がどうかしているだろう。



 当然の様に、そう言い放った彼女のパートナーであるシェイドからの助けは期待出来ない。


 まるで、ソレは名案だ!と言わんばかりに微笑みを浮かべながら深く頷いて見せている事を鑑みるに、確実に一度決めれば全力で殺りに掛かって来るだろう。



 …………現在、ギルドマスターとして普段は席を温める事となってしまっているフレスコバルディも、元々は現場に出る冒険者であった為に、腕に自信が無い、と言う訳では勿論無い。


 大層な二つ名こそは頂く事は無かったが、それでも一度は特級まで登り詰めた以上、多少衰えたとは言え充分にその実力は未だに『超人』と呼ばれるのに相応しいだけのモノが在る、と言えるだろう。



 が、そんなフレスコバルディをもってしても、目の前で気勢を『一層の事サクッと後腐れ無く殺っちゃう?』と言う方向に持って行きつつある二人を相手にして、実際にやり合った場合に無傷で切り抜けられる自信は欠片も持ち合わせてはいなかった。


 むしろ、やり合った結果、自身が生きていられる確率が、然程高くは無いのであろう事を瞬時に悟る程であったのだ。



 幾ら第一線を退いてそれなりに経っており、最低限のトレーニング以外は戦闘から遠ざかっていたとは言え、そんな事が有り得るのか!?と驚愕するも、相手は『迷宮』を踏破せしめて見せた実績の持ち主であり、その上圧倒的なまでの魔力圧を放って見せている存在でもある。


 そんな存在相手に、例え片方ずつで掛かって来てくれたとしても、例え嘗めきって手加減してくれていたとしても、とてもでは無いが生き残れるとは思えない、と予感させられてしまっていたのだ。



 …………その為、そんな存在からの協力を、状況的に何がなんでも得たいフレスコバルディは、再度その場で床に膝を突き、額を擦り付けると二人に向けて真摯に懇願し始める。




「…………お願いします。どうか、協力して、下さい。

 私を殺したいのでしたら、抵抗は致しません。貴方達が罪に問われない様にも取り計らいます。報酬も、私の権限の中で確約出来るモノでしたら、事前に用意しておく事をお約束致します。

 ……ですので、どうか。どうか協力して下さい。この街には、まだ何も知らない一般の人々が大勢いるんです。幾ら外壁が在っても、それでも無事で済むとはとても思えないですし、本来彼らを守護すべき王城は戦力と共に引きこもる事を決めてしまいました。ですので、どうか。見捨てられる形となってしまっている人々を守る為に、協力して下さい……」



「……………ふぅん?」



「……続けて、どうぞ?」



「……お二人にとって、いざ事が起こってから、最低限親しい相手のみを襲い来る魔物を蹴散らしながら逃がす事なんて容易い事かも知れません。ですが、私を始めとした他の者達はそうでは無いのです。ここで、踏み留まって愛しい人々を守る事しか出来ないのです……。

 ………………スタンピードを一掃して欲しい、とは言いません。それに、最後まで戦って欲しい、とも言いません。ですが、どうか、どうか最初の一当てだけでも協力しては頂けませんか?

 お願いします!どうか、私達に、家族を、知人を、仲間を守りきれる可能性を、ほんの僅かな可能性にすがる事を許して下さい。どうか、どうか……!」




 血を吐く様な真摯な声色にて、床へと額を擦り付けながら、蔑む様にして視線を投げ掛けて来る二人に対して懇願するフレスコバルディ。


 そんな彼の頭部に向けていた視線を横へとずらしたシェイドは、同時に同じ行動を取っていたサタニシスと共に、揃って黒い笑みを浮かべながらフレスコバルディへと向けて口を開いて行くのであった……。





「…………そこまで言うのなら、協力してやろうか?

 もっとも、報酬は確り払って貰うがな?俺達が望むままに、可能な限り最大限の便宜を図りつつ、な……!」





 ………………その言葉を耳にしたフレスコバルディは、強大な戦力へと協力を取り付けられた事に安堵すると同時に、この二人と契約してしまった事に一抹ならぬ不安感と後悔を早くも抱き始める事となるのであった……。




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― 新着の感想 ―
[一言] 前のギルドでの行いはそれまでに積み上がっていたものがあったから理解できることだったけど、ここでのこれは主人公の難癖にしか見えない。 正直ただのチンピラに見える。
[気になる点] 意外ですな。ギルレイン氏が居ることですし、シェイド氏なら無理矢理自分を納得させようとするのだと考えたのですが…。 [一言] 原因ではなく、一因なのは確かですな。
[一言] 我が道を行くジェイドはやっぱり好きですね。
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