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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
六章・反逆者はその名を『英雄』へと高める

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反逆者は監視者と共にギルドへと赴くが……

 


 シェイドとサタニシスがギルレインの工房を訪れた二日後、彼らの姿はギルドへの途上に在った。



 ギルレインに請求された金額を二つ返事でポンッと一括で支払って見せた事により、何故そんな大金持ち歩いてやがる!?そもそも、こう言うのは言い値じゃなくて多少は交渉するモノだろうがよ!?と何故か説教を食らう事に。


 しかし、彼としては絶対に盗まれる心配の無い『道具袋(アイテムバッグ)』に入れておく事こそが最大の防犯対策であり、言い値で支払ったのもギルレインの仕事に満足して感謝していたが為にそうしたのだ、と正直に説明した処、嬉しい様なそうでない様な、と言った微妙な表情を浮かべながら再度固まってしまったのはここだけのお話。



 そうして何やかんやと在ったものの、無事に『無銘』の代金の支払い並びにメンテナンスを依頼する事に成功したシェイドとサタニシスであったが、流石にこの日はもう遅いから、と以前泊まった宿に赴き、取り置き、と言う名目で借りておいた部屋へと入って就寝する事に。



 そして、その翌日に再度顔を合わせたシェイドとサタニシスであったが、流石に途中途中で休息を取っていたとは言え、『迷宮』での巨人との殺し合いやらギルドでのアレコレやら、と言う精神的にも肉体的にも色々と疲労が溜まる事が連続していた為に、この日は休養日に当ててしまおう、と言う意見がどちらからともなく出され、自然と採用される事となったのだ。



 その為、二人は普段と変わらぬ時刻に起き出してしまっていた為に部屋に戻って寝直したり、各自で使えそうな戦利品(種類が好みだったり、能力が予想出来たりしたモノ)の使い方の確認や試用をしてみたり、相手の部屋へと突撃を掛けたり(サタニシス→シェイドだが)、と言った風に半日を過ごし、もう半日は二人で連れ立って街中を散策したり店に入って食事をしたりと、揃って休養日を満喫していた様子でもあった。



 その後、就寝間際にサタニシスの手によって夜這い紛い(かなりスッケスケでヒッラヒラなウワァオ!な格好であった、とだけ明記しておく)な行動に出られる事になったが、結果的には本懐を遂げられる事無く一夜が明けた現在、彼らはギルドへの道を歩いている、と言う訳なのだ。




「…………しかし、こうしてまたギルドに行く事になるとはなぁ……。

 最初の予定だと、得物を作り終えた段階で、もうこの辺りには用事が無くなってたハズなんだがなぁ……」



「まぁ、仕方無いんじゃないの?

 まだ武器の整備は終わって無いみたいだし、この辺りのアレコレに関しては、もう昨日の時点で見回っちゃったんだし。

 そうなると、暇潰しも兼ねてギルドで依頼を探してみる、って言う位しかやることも無くなっちゃうって言うのも、当然の事なんじゃ無いの?」



「でも、だからってなぁ……。

 この先、余程の事が無い限りは、今回みたいな出費をするつもりなんて無いし、日々の生活に困る程に貧窮もしてない、と言うよりも暫くの間は働かなくても済む、なんて言葉じゃ足りない位にはもう持ってるからなぁ……」



「じゃあ、もう一日休む?

 もう、『迷宮』で溜まった疲労は抜けているし、確認しなきゃならない魔道具の類いは確認し終わったし、一通り観光の類いも終えちゃったから確実に時間が余るけど、それでもギルドに行くのを止めて休んじゃう?」



「…………それもそれで、何だかなぁ……まぁ、取り敢えずギルド行って依頼だけでも眺めてみるか。

 良いのが在ったら受けても良いし、無かったら仕方無いから酒場で何か頼んで帰れば良い」



「まぁ、それが妥当かな?

 お爺ちゃんも、あの様子だったら明日には出来ているだろうし、私達は荷造りの事も考えなくて済むし、取り敢えずはそうしましょうか!」



「まぁ、無理に受ける必要も無いからな。

 適当に行こうや」



「こらこら!シェイド君、ちょっと活気が足りてないよ?

 若いんだから、もう少し元気出さないと!」



「…………まだ『迷宮』を突貫作業で踏破してから数日も経って無いって言うのに、寧ろそんなに元気で居られる方がおかしいだろうがよ……」




 矢鱈とテンションが高く、数日前の疲労なんて欠片も残っていません!と言わんばかりの様子にて、足取りも軽く踊り舞う様に進んで行くサタニシス。


 それと対称的に、本人の言葉の通り未だに疲れが抜けきっていないらしく、生欠伸を噛み殺しながら歩くシェイドの姿は、到底数日前に『迷宮』を踏破した者のソレとは思えない程にシャンとしたモノでは在ったが、やはり見る者が見れば普段の調子とは程遠いモノとなっていた様子だ。



 端から見ていても、多少顔色が悪くて足取りが重い、と言う程度のモノであり、恐らくはサタニシス以外が目にしても『疲労が残っている』と判断する事は無いのだが、ソレを見抜かれてしまった情けなさを感じると同時に、そこはかと無い嬉しさも感じてしまったシェイドの足取りも、自然と軽くなってしまう。



 そうして、二人連れ立って道を進んでいると、それほどしない内にギルドの建物へと到着するシェイドとサタニシス。


 以前、このウィアオドス本支部を訪れた時とは性質の異なる熱気と活気に包まれているその建物を前にして、揃って僅かに首を傾けて行く。




「…………なぁ、ここって、こんなに活気が在る場所だったっけか?」



「……私も、閑古鳥が鳴いている、なんて状態じゃ無かったとは思うけど、それでももうちょっと大人しい雰囲気だったと思ってたんだけどなぁ……」



「何か在ったのかね?

 この辺に、厄介か魔物でも出現したとか?」



「それとも、シェイド君があの『迷宮』を踏破したんだから、その辺の関連で何か在った、って感じじゃない?多分だけど」



「………………まぁ、考えても分からんモノは分からんのだから、考えるだけ無駄だろう。

 取り敢えず、中入ってみるか」



「そうしましょうか」




 何か在ったのだろう、と言う事で見解の同意を得た二人は、若干ながらも建物の内部を警戒しつつ扉を押し開いて内部へと足を踏み入れて行く。


 すると、そこに在ったのは、彼らの予想の通りにこの本支部では見た覚えの無い活気に溢れた光景であると同時に、あまり良い方向では無い熱気に支配されている空間でもある様に感じ取れる、そんな光景が広がっていた。




 焦燥に顔をひきつらせながら、建物内部をバタバタと走り回るギルド職員。


 恐怖で顔を青ざめさせながら、身体を小刻みに震わせている冒険者。


 絶望によって涙を浮かべ、呆然と床へと崩れ落ちて行く依頼人達。




 そんな、死屍累々を通り越した地獄絵図が広がるギルド内部の光景に、半ば反射的に開いた扉を閉ざそうとしてしまう。


 が、一体何が起きたらこうなったのか?と言う疑問がシェイドの思考に過った為に、僅かにとは言え動きが鈍って扉を閉ざす速度が遅くなり、真っ正直に位置する受付カウンターにて頭を抱えていたらしい受付嬢に来訪を察知されてしまう事となる。




「…………ま、待って!待って下さいシェイド様!?

 貴方様に、貴方様達にしか解決出来ないのです!どうか、どうかお願いします!?私達を助けて下さい!?!?」



「…………うわっ!?ちょっ!?

 いきなり、何なんだよアンタ!?

 助けて下さい、って、一体何の事だよ!?」



「ちょっと!?

 何いきなりシェイド君に抱き着いてくれてるの!?早く、離れなさいよ!!」



「お願いします!助けて下さい!?!?」




 …………若干名、変な方向で慌てている様子であったが、突然過ぎる突然の出来事に三者三様に混乱して行く。



 唐突に絡まれたシェイドはシェイドで説明を求めるが、ソレが聞こえていないのか、それとも最初から説明するつもりが無いのかひたすらに『助けてくれ』と叫びながら、決して逃してなるものか、と言わんばかりの様子にて抱き着いて離そうとしていない。


 一向に事情が見えず、かと言って力ずくでどうこうするのには、その受付嬢に対しての負の好感度(彼にのみ実装。その数値が低ければ低い相手程躊躇い無くより強大な力を振るう様になる)が足りていない為に、どうにかして怪我させない程度の力加減にて引き剥がそうと試みるも、ガッチリとしがみついてくれている為にどうにも剥がす事が出来ずにいた。



 しかし、流石に何の説明も無いのに、かなり困難な事柄を投げられるであろう状況であるにも関わらず、相手を宥める為だけに『yes』と言う訳にも行かないので、どうしたモノだろうか……と頭を悩ませ、最終的にサタニシスに頼んで引き剥がして貰えば済むのでは?と思い付いて依頼しようとした正にその時





「………………済まないが、君達がシェイド君とサタニシス君で合っているか?

 いきなりで大変申し訳無いんだが、君達に依頼したい事が在るんだ。とても困難な事で、君達にしか頼めない事でね。ここでは話せないことだから、悪いが着いてきて貰っても良いかな?」





 そんな、彼らにとっては聞き覚えの無い声が、ギルド内部の奥から投げ掛けられる事となった。


 それに釣られる形でサタニシス共々視線を向けて見ると、そこには立派な格好をした只人族の中年男性が佇んでいた。



 比較的柔和そうな雰囲気と口調であり、かつ下手に出る事で彼らを刺激しないように、との心遣いが出来る相手である、と一見受け取れる様に接して来ていたが、その実としては視線は鋭く力に満ちており、言葉の端々にも決して『逃がさない』『逆らう事は許さない』と言った意思が感じられるモノとなっていた。



 その為シェイドは━━━





「……そうですか。分かりました。

 ですが、別段俺達にはソレを受けなくてはならない理由は無いので、今回は遠慮させて貰いますね。

 では、これにて失礼させて貰いますよ」




 との言葉と共に、ギリギリ怪我をさせない程度の力加減にて絡み付く受付嬢を振り払って地面へと転がすと、以心伝心にて同時に踵を返したサタニシスと共にギルドの扉を今度こそ押し開けると、そのまま建物を後にしようとするのであった……。




主人公は『逃走』を選択!

果たして、成功するのか!?

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう時は、あの手ですな。とある世界を救った英雄の戦術………――― ―――逃ィげるんだよォォォォォ! 退けェ、モブ共ォ! [気になる点] 今までギルドのお偉いさんでシェイド氏に対して上…
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