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反逆無双の重力使い~『無能』と呼ばれて蔑まれた少年は、封じられた力を取り戻して『反逆者』へと至る~  作者: 久遠
五章・得物を手にした反逆者は、試し切りも兼ねて迷宮へと挑む

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反逆者は監視者と共に階層主へと挑む

 


 サタニシスに手を引かれながらも、シェイドは自らの腰にぶら下げられた『道具袋(アイテムバッグ)』へとチラリと視線を向けて行く。



 外観は、ごく普通の布で出来た小汚ない小袋でしか無いのだが、その実としては見た目の何倍もの内容量を誇ると同時に内部の重量を打ち消してくれる優れモノで貴重な魔道具の一種だ。


 しかも、彼が愛用しているソレは、内容量こそそこまで大容量なモノでは無い(それでも下手な物置部屋よりも多くのモノが収容できている)が、その代わりに内部に仕舞ったモノの状態を保つ機能が着いており、大容量型のソレと劣らぬ程の人気を誇るモノでもあった。



 そんな、ある意味彼の持ち物の中でも一番貴重なモノである、とも言える『道具袋(アイテムバッグ)』であったが、今現在は普段と様子を違える事となってしまっていた。


 …………普段であれば、多少モノが入っている小袋、と言う程度に膨れているが重さは特に感じない、と言った感じの状態であるのだが、現在はモノを詰め込めるだけ詰め込んだみたいにパンパンに膨らんでおり、自らの持つ重量にて腰にぶら下げている紐を限界近くまで引っ張る事となってしまっていたのだ。



 何故、この様な事態になってしまっているのか?


 それは、彼の持つ『道具袋(アイテムバッグ)』の許容量が、そこまで大きくない、と言う事に関係している。



 …………そう、身も蓋も無い言い方をしてしまえば、収容容量の限界間際に達してしまっているから、と言う事になる。


 普段から日用品の類いだけでなく、食料品や予備の装備品を収納していたのに加えて、今回この『迷宮』に潜った事で得られた素材や魔石と言った戦利品の類いも全て納めてしまっていた為に、元々持っていた収納許容量の限界に近い状態となってしまっていた。



 そこに、先程採取したアンテライト鉱石が満杯に詰まった小麦袋まで、追加で投入する事となってしまっていた。


 その為に、流石に、そこまで突っ込んでしまっては許容量の本当にギリギリのラインにまで達してしまっており、魔道具としての『内容物の影響を外界に伝えない』と言う効果が及ばなくなる、までは行かないまでも、その効果が僅かながらも減衰してしまう域にまで行ってしまっている、と言う事なのだ。



 なので、現在の彼の身体には、この『迷宮』に侵入するよりも前には感じる事の無かった重量が掛かると同時に、ほんの僅かなモノでは在るが重心が変化してしまっている状態に在るのだ。



 動作にも支障は無く、その上意識しなくては本人にも分からない程に僅かなモノでしか無い変化。


 …………しかし、だからこそ、そんな僅かで些細な変化であるからこそ、気にしてしまえば、一旦意識に登らせてしまえば、ソレ以降は気にせざるを得なくなってしまう状態となってしまっていたのだ。



 靴に紛れ込んだ小石は排除しないと気になり続ける様に、歯に挟まってしまったモノは歯磨きをする迄は何時までも気になり続ける様に、一度意識してしまえば果てなく気になり続ける事になる。


 これは、その手の厄介な類いの変化である、と言えるのだ。



 …………とは言え、そこは気にしない様にすれば、ギリギリ無視できる範囲の話。


 この『迷宮』探索行を終えて帰還し、その後に得られた戦利品を放出して中身を整理するなり、もしくは身銭を切ってもっと大容量の『道具袋(アイテムバッグ)』を買い求めるなり何なりとすれば良い話でしか無い。



 もしくは、この『迷宮』探索行にて新たなモノが手に入れば、ソレに乗り換える事も考えても良いが、流石にそれは確率的に難しいだろう。


 未だに人の手が多くは入っていない階層すらも荒らしている彼らにしても、今回の探索行では際低級のモノを一つ見付けた程度でしか無い、と言えばどれだけ手に入らないモノなのかは理解して貰えるだろうか?



 …………そうこうしている内に、寸前まで響いていた彼の採掘音によって構造を把握したサタニシスが彼の手を引く形で先導し、目的地として向かっていた目的地である階層主の元へと到着する。



 そこには、今まで彼らが見た事の無い、まるで金属系のゴーレムと巨人が合わさった様な巨大な存在が鎮座していた。



 パッと見た限りでは、普通の人族と同じ様に二足二腕の体型をしており、頭と思わしき部分も確認できる。


 ソレだけならば『人型の魔物か』で済む話なのだが、ソレは蹲った状態でも上の階層で出会った階層主のゴーレムと同等の大きさを誇っていただけでなく、その全身が鋼で出来ている様に見て取れたのだ。



 …………別段、体表が鋼で出来た『何か』で覆われていると言う訳でも、鋼で出来た全身鎧を着込んでいる為にそう見えている、と言う訳でも無い。


 いや、確かに鎧を着込んでいる様にも見えるし、それらを繋ぐ様に鋼の様にも見える『何か』で身を包んでいる様にも見えているのは確かなのだ。



 …………しかし、ソレだけではなく、それらの隙間から覗く『素肌』に当たる部分から、何かしらの道具の部品の様なモノが見えており、更に言えばソレが放つ雰囲気が『生きているモノのソレ』とは異なる様な感触が、彼に対して気配として伝わって来ていたのだ。



 文字通り、鋼で出来ている巨人、を目の当たりにしたシェイドとサタニシスは、その聳え立つ偉容を呆然と眺める事となってしまうのだが、暫くそうしていると、不意に蹲っていた巨人の両目に相当する部分に光が灯り、凄まじい軋みを立てながら巨人がその巨体を起こして行く。




『…………シンニュウシャ、カクニン……サイキドウ、セイコウ……タダチニ、キョウイヲハイジョ、シマス……』



「…………!?おい、今こいつ喋ったぞ!?」



「そこに反応したくなるのも理解できるけど、今はそんな事言ってる場合じゃないでしょうが!?

 来るわよ!構えて!!」




 他の場所よりも天井が高くなっていたその場所で巨人が立ち上がると、正に『人と虫けら』程の体格差が浮き彫りとなってしまうシェイドとサタニシス。


 その上、基本的に一部の例外を除いては人の言葉を解するハズが無い魔物が喋った、と言う事実に彼が気を取られていると、遥か頭上から巨人の拳が彼へと目掛けて振り下ろされて行く。



 先に感付いていたらしいサタニシスからの警告を受けるよりも先に気付いてはいたシェイドは、咄嗟にその場で得物を抜き放ち、両手で掲げて巨人の繰り出した拳をその場で受け止めて見せる。


 …………が、当然の様に高所から振り下ろされた大質量の攻撃の威力は凄まじく、受け止めて見せた彼の両足が地面にめり込むのと同時に、彼を中心としてクモの巣の様に放射状に地面がひび割れて行く。



 あまりの衝撃に、攻撃を直接受け止めた得物こそは無事な状態に在ったが、ソレを支えた彼の肉体までもが十全な状態では在れ無かったらしく、身体の各所から吹き出した鮮血が周囲の壁やら床やらを紅く染め、地面に真っ赤な水溜まりを作る事となってしまう。



 ソレにより、僅かながらとは言え確実に苦鳴を漏らす事となってしまうシェイドと、彼の事を心配して悲鳴に近い声を挙げるサタニシス。





「シェイド君!?

 この、鉄屑風情が!!!」




 怒号に近い悲鳴を挙げた彼女が、自らの身体から溢れ出させた闇色の魔力により、巨大な魔法陣を急速に構築して行く。


 展開された魔法陣は、人類であるシェイドには見た事の無いモノであったが、充填された魔力によって空間が歪み、バチバチと音を立てながら周囲に放電しながら物理的な圧力を放って見せている事により、生半可なモノでは無いのだろう、と言う事が容易に想像する事が出来ていた。



 コレが魔族の魔術(正確に言えば人類が体系化して平均化しながら編纂した『魔術』では無く、ソレ以前の個人の資質に頼りきったムラっ気の強く強弱も激烈に存在している『魔法』なのだが)なのか、と目にするのは二度目故に構成やら何やらに視線を奪われそうになるシェイド。


 しかし、このままぶっ放されては自身の安全も保証は出来ないな、と判断してか、回復に回りつつあった魔力も急いで身体能力強化の方へと回し、未だに自らを押し潰さんとしている巨人の拳を、強制的に筋力にて押し返しながら力の向きを真横へと無理矢理変化させる。



 ソレにより、ほぼ全体重を彼へと目掛けて掛けていた巨人は急に力の向きを変えられてしまう事となり、拳の向きを調整する事も出来ずに地面へと拳をめり込ませる事となってしまう。



 タイミングを同じくして、巨人による縛めを脱したシェイドが、置き土産だ!と言わんばかりに地面へとめり込んだ拳の上、手首に当たる部分から覗いていた鎧の隙間に刃を突き込み、内部を幾らか断ち斬ってから転げる様に脱出して行く。




「今だ、やれ!!」



「言われなくても!!」




 地面を転がる様にして巨人から距離を取ったシェイドが叫ぶと、ソレに呼応する形でサタニシスも怒鳴り返し、展開していた魔法陣へと最後の起動の為の魔力を流し込む事で『待機』状態から『発動』状態へと変更させ、闇色の奔流を鋼の巨人へと向けて解放する!!



 ソレなりに巨人とは距離を取っていたハズのシェイドだが、体勢が悪かった上に地面もあまり良い状態では無かった事もあり、ソレが放たれた衝撃と至近を通って行った事による風圧等の要素が重なり、その場から再度吹き飛ばされて壁際まで追いやられる事となってしまう。



 その為に、常時張っている気配感知の為の魔力ソナーは中断され、元々ボロボロに近かった身体には無数の打ち身や打撲が追加される事となってしまう。


 が、ソレと引き換える様にして、至近を通っただけで地面を焼き焦がし、ソレ属性間違えてない?と突っ込みを入れたくなる程に強大な熱量を秘めた闇色の奔流が巨人を直撃すると同時にその巨体を吹き飛ばし、彼らがいるのとは反対側の壁へと叩き付け、押し込んで行く。



 ソレにより、本来『壊れない』と言う特性が付与されているハズの『迷宮』の壁が割れ砕け、溶解し、土煙とも取れないモノが周囲へと充満する事で、巨人の姿を覆い隠してしまうのであった……。




……やったか!?(フラグ)




なお、鉱脈が露出していたりする場所はあくまでも『採取可能な場所』として設定されているので、『迷宮』的には『壁ではない場所』となっておりますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 祝、100話ですぞ! [一言] 鋼鉄のゴーレム、一つ目、熱線、………、ハッ! ザ〇ですな!? ジ〇ン軍かザ〇トが潜伏していたのですな! ホ〇イトベースのア〇ロか、アー〇エンジェルのキ〇君…
[一言] 100話おめです!!
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