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木枯らしリョウマはぐれ旅  作者: 謙虚なサークル
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勇者と冒険者②

 リョウマとアレス、急遽パーティを組む事になった二人はギルドを出る。

 アレスが酒が飲めないので、近くの喫茶店にて話しをする為だ。

 無論、エリザもそれについて行く。


「ちょっとリョウマ」

「んあ?」


 エリザはつかつかと詰め寄ると、耳を貸せとばかりにリョウマの手を引き屈ませる。


(本当にあの人と一緒に行くつもりなのですか!?)

(まぁな。依頼のこともあるが……単純にあいつ自身に興味がある)

(興味……ですか)


 勇者とは如何なる存在なりや。

 武芸者の類であれば、これほどに興味をそそられるものもないだろう。

 当然リョウマも例外ではなく、無意識のうちに先刻から口元が緩んでいた。

 尤も、それがエリザが面白くない理由なわけだが……リョウマにそんな事、わかろうはずもなかった。


(一体何を気にしてるんでぇ?)

(だ、だって私が半魔って知られたら……)

「あはは、その心配はありませんよ」


 かなり前を歩いていたアレスが、いつの間にか自分らの横にいた。

 驚き声を上げそうになるのを、エリザは何とか堪える。

 無垢な笑み、だからこそエリザには不気味に思えた。


「ボクには半魔の友人も多いから。エリザちゃんともきっといい友人になれるますよ」

「……っ! わ、私のこと……!」

「街の人たちの反応を見るに、相手の認識を歪めている……といったところですか。幼いのに素晴らしい魔術を使えるんだね」

「驚いた。ちびっこの事に気づいたのはあんた以外は受付の嬢ちゃんくらいだぜ」

「……でもリョウマさん、それだけではありませんよね」


 言うとアレスは、リョウマの胸元に顔を近づけてクンクンと鼻を鳴らし始めた。


「魔物……ジュエルスライムですか? 飼っているのでしょう」

「そこまでわかるか」

「あはは、無論誰かに言ったりはしませんよ。魔物を連れているなんて知れたら面倒ですしょうしね」


 魔物を連れ歩くのは危険な行為だ。

 小さな街なら特に、下手をすると処罰される事もありうる。

 それでも勇者であるアレスにとっては、子供のイタズラのようなものなのだ。


「魔物や半魔だからと言って毛嫌いする事はないと思うんですけどね。彼らの中にも話の通じる者はいますから」


 遠い目でそう語るアレス。

 どこか寂しげな横顔からは、様々な冒険が見て取れた。

 勇者とは魔物と最も関わりの多い存在であろう。

 いい者、悪い者……色々な魔物を見てきたに違いない。

 単なる嫉妬心でアレスを警戒していたエリザは、自分が恥ずかしくなる思いだった。


「彼らと仲良くしてるって事は、リョウマさんもいい人なんだね」

「そ、そうなんです! リョウマはとってもいい人なんです!」

「うん、そうだね」


 アレスの、全てを照らすような笑みにエリザはほんのりと顔を赤らめた。

 これが勇者、すげぇもんだとリョウマは思った。



「――――さて、依頼の話をしようじゃないか」


 アレスが広げた依頼書には、街の場所と推定される敵の戦力が書き込まれていた。


「えっと、スケルトン、生ける屍、それに下位の悪魔が数種類目撃されてるみたいですね。それを統べるのは恐らく上位魔族でしょう。しかし目撃証言はなし、か。単なる推測なんですね」

「ま、ちっちぇえ依頼なんてのはこんなもんさ。確認する者だって命は惜しいさ」

「違いありません」


 場所はともかく敵の戦力などどんなものかわかろうはずもない。

 時間、事象によって増減するのは当然なのだから。

 アレスのような国単位で受ける依頼であればより正確なものもあろうが、そこらの冒険者が受ける依頼となると、その情報もないよりはマシ、程度である。


「乗っ取られたのはカイザの街ってとこらしいね。二人はどこだか知ってるかな?」

「結構遠いぜ。山も超えないといけねぇから、ここからだと数日はかかる」

「大丈夫! ボクは転移の魔術が使えるのでひとっ飛びですよ」


 勇者の持つスキルの一つ、ポータル。

 これを使えば世界各地、どこにでも移動出来るのだ。


「実際に行った事がある人が一緒にいないとダメですけどね」

「直接行った事はないが、近くの山なら少し前に依頼で行ったっけか」

「丁度いいですね。街に直接、だと魔物に囲まれるかもしれないですから」

「異論はねぇ。では各々準備して明日に出立でいいか?」

「ボクはそれでいいですよ」

「決まりだ」


 早々に話をまとめると、解散となった。


「リョウマさん、ちょっと待ってください!」

「んあ? どうした?」

「ボクはこの街、よくわからないんですよ。少しでいいので案内、頼めませんか? ここ、奢りますから」


 屈託のない笑みを浮かべるアレスに、リョウマはため息を吐く。


「……はぁ、しゃあねぇな」

「ありがとうございます」


 普段ならば「自分の事くらい自分でなんとかしやがれ」とバッサリなのだが、アレスに言われるとどうも調子が狂う。

 これが勇者の人徳というやつなのかもしれないとリョウマは思った。


「ふむふむ、ここが道具屋なのですね」

「あぁ、一番大きいところだ。もういいかい?」

「まぁまぁ、もう少しいいじゃないですか。そうだ! リョウマさんも一緒に準備しましょう。うん、それがいい!」

「……」


 確かに、準備ならここでも出来ると考えると、特に断る理由も見当たらなかった。

 もっと言うと勇者の使う道具にも興味があった。


「結構いい品揃えですね」

「ここで揃わなきゃ、取り寄せするしかねぇな」

「そこまではしなくて大丈夫ですよ。簡単な物しか買いませんしね」


 アレスが手に取っていくのは、本当にただの日用品ばかりだ。

 石鹸に着替え、タオル……庶民の使うレベルである。

 リョウマは火薬と薬袋をいくつか購入し、店を後にした。


「ふぅ、どっさり買っちゃった」

「本当に普通の日用品ばかりだったな」

「えぇ、遠征続きだったものですから」


 日用品をアイテムボックスに仕舞うアレス。

 ちらりと見えたアイテムボックスの容量は、リョウマの比ではなかった。


「あ、そうだ」


 ごそごそと、取り出したものを隠しながら、アレスはエリザの方を向く。


「どうかしましたか?」

「ふふふ、エリザちゃんにいいものを上げようと思ってねー……どうかな?」

「これって……」


 エリザの髪に留められたのは、鮮やかな色の髪飾り。

 暗色であるエリザの髪に、とてもよく似合って見えた。


「うん、すっごく可愛いよ!エリザちゃん」

「髪飾り……アレスさん、これ……」

「あげるよ。プレゼントさ」

「……あ、ありがとうございます!」

「うんっ」


 にっこりと笑うアレスに、エリザは思わず顔を赤らめる。

 天然タラシのような行動にリョウマは苦笑すると、エリザの頭をぽんと撫でた。


「よかったじゃねぇか。ちびっこ」

「あの、リョウマ……似合っていますか……?」

「おう」

「……! え、えへへ!」


 上機嫌な笑みを浮かべると、エリザはくるくると回りだす。

 余程嬉しかったのだろう。

 それを見るアレスとリョウマは、微笑を浮かべていた。

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