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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
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おどり御張行の事其参

 鳴海城には、山口教継を入れておきました。


 この人は音に聞こえた武篇者ですが、さかしい人物でした。


 左京に逆心を抱いて、駿河衆を引き入れ、それに加えて、大高城、沓掛城の両城も調略を以って乗っ取りました。


 この三城は例えてみれば、かなえ(煮炊き用の器)の三本の足のようで、互いの間は共に一里でした。


 鳴海城には、駿河衆の岡部五郎兵衛元信が城代として立て篭り、大高城と沓掛城にも番兵をたくさん動員しました。


 それからしばらくして、吉本さんは山口教継と教吉の親子を駿河に呼び寄せ、忠節の褒美を与えるどころか、腹を切らせてしまいました。


 さすが、ブラック企業だと思う地の文です。


「その吉本じゃねえし、ぶらっくきぎょうとは何ぞや!」


 気の利いたジョークを連発する地の文に切れる今川義元です。


「公家気取りの気色の悪い奴が、ふざけた事を!」


 左京は義元の汚いやり方に腹を立てましたが、


「そうなんですか」


 それにも関わらず樹里は笑顔全開です。

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