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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
85/2152

左京大良より御帰陣の事其弐

 左京は、敵方が鉄砲に怖気づいて近づいて来ない事を見て取ると、悠然と船に乗り、川を渡りました。


 それから間もなく、尾張の国の半国の領主で、上の郡岩倉の織田伊勢守安京が、美濃の斎藤新九郎真澄と申し合わせて、左京に敵対行動を取るようになりました。


 清洲城の近くの下の郷(現在の愛知県西春日井郡春日町)という村を安京の兵が焼き打ちにしました。


 その知らせを受けた左京は激怒し、すぐさま岩倉方面に軍勢を出し、近隣の知行地を焼き払い、その日のうちに兵を引き上げました。


 このような事があったので、下の郡でも、その多くが左京に敵対するようになりました。


 人望のなさが如実に表れていると思う地の文です。


「そういう事じゃねえよ!」


 真相に迫ろうとした地の文に切れる嫌われ者の左京です。


「うるせえ!」


 図星を突かれて更に切れる左京です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、正室の樹里は笑顔全開です。


「ううう……」


 左京は項垂れ全開です。

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