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左京大良より御帰陣の事其弐
左京は、敵方が鉄砲に怖気づいて近づいて来ない事を見て取ると、悠然と船に乗り、川を渡りました。
それから間もなく、尾張の国の半国の領主で、上の郡岩倉の織田伊勢守安京が、美濃の斎藤新九郎真澄と申し合わせて、左京に敵対行動を取るようになりました。
清洲城の近くの下の郷(現在の愛知県西春日井郡春日町)という村を安京の兵が焼き打ちにしました。
その知らせを受けた左京は激怒し、すぐさま岩倉方面に軍勢を出し、近隣の知行地を焼き払い、その日のうちに兵を引き上げました。
このような事があったので、下の郡でも、その多くが左京に敵対するようになりました。
人望のなさが如実に表れていると思う地の文です。
「そういう事じゃねえよ!」
真相に迫ろうとした地の文に切れる嫌われ者の左京です。
「うるせえ!」
図星を突かれて更に切れる左京です。
「そうなんですか」
それにも関わらず、正室の樹里は笑顔全開です。
「ううう……」
左京は項垂れ全開です。




