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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
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土岐頼藝公の事其参

 そんな斎藤山城守道三の生き様が落首(誰が書いたのかもわからない歌)になりました。


しゅうをきり婿むこをころすは身のおはり昔はおさだ今は山城」


 おさだというのは源平の頃、主の源義朝を殺した長田忠致の事です。


 道三を皮肉ったものが街道のあちらこちらに散見されました。


 恩を受けたのに仇で返すような事をするのは鳥が巣を作った木を枯らすようなものです。


 結果的にそれは我が身を滅ぼす元となるのです。


 山城守道三は些細な罪でも牛裂きの刑にしたり、その妻や親兄弟に至るまで大釜で煮殺したりしました。


 まるで左京と同じだと思う地の文です。


「どこがだよ!」


 思ってもいない方向からの危険球を放った地の文に切れる左京です。


「義父上のなさりよう、ご自分に返らねばよいが」


 道三は樹里の父親なので、上辺は心配してみせる左京です。


「違う!」


 真実を見抜いてしまった地の文に動揺して切れる左京です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず樹里は笑顔全開です。

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