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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
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土岐頼藝公の事其弐

 道三は守護代の斎藤氏を稲葉山(現在の岐阜市)に住まわせ、土岐八郎をその麓に住まわせて、三日か五日ごとに一度は参上し、


「鷹狩りに出かける事相成りませぬ」


「乗馬など以ての外です」


 そのような事を言い募り、籠の中の鳥の如く扱いました。


 八郎はそれが耐え難かったのか、雨の夜、こっそりと逃げ出し、尾張を目指して馬で出奔しました。


 道三はすぐに八郎を追いかけ、追い詰めて切腹させてしまいました。


 八郎の父親である土岐頼藝は大桑の城にいましたが、天文十一年、道三は家老達を賄賂で抱き込み、主である頼藝を大桑から追放してしまいました。


 それを機に頼藝は左京の父である等京を頼る事になりました。


「そうなんですか」


 そんな凶悪な父親から生まれたはずの樹里はそれにも関わらず美しく、素直に育ちました。


 母親の由里もあれなのに、凄く不思議だと思う地の文です。


「何ぞ申したか?」


 由里にドスの利いた声で言われ、漏らしそうになった地の文です。

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