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火起請御取り候事其参
左京はその場にいる者達を見渡して、
「俺が火起請の鉄を受け取る事ができたら、左介を成敗せねばならぬと心得よ」
そして、左京は真っ赤に焼けた鉄をがっちり握り、何事もなかったかのように三歩歩いて用意してあった棚に置きました。
左介ばかりではなくそれを擁護しようとしていた池田恒興の一党は全員顔が蒼ざめました。
左京は元石猿ですから、焼けた鉄くらいどうという事はないのです。
「前々世の話はするなと言うておろう!」
涙目になって地の文に抗議する左京です。
「見ての通りだ。わかっておるな?」
左京の有無を言わせない物言いに恒興達はぐうの音も出ません。
そして左介はまさに成敗されました。
凄まじいの一言の出来事でした。
(それにしても熱かったなあ。樹里様にフウフウしてもらおう)
実は涙が出る程熱かった左京です。痩せ我慢していたのでした。
「バラすな!」
口が軽い地の文に切れる左京です。
「そうなんですか」
それでも樹里は笑顔全開です。




