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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
54/2152

織田喜六郎殿事御生害其弐

 左京の叔父に当たる織田光京は、清洲城の家老である坂井大膳から守護代になるように勧められ、その言葉に従いました。


 しかし、光京は実は左京と通じており、


「清洲城を騙し取るので、その代わりに尾州の下の郡のうち、於田井川おたいがわを境にして、東半分をくださらぬか」


 そんな密約を交わしていました。


 要するに尾張の国の下の郡を二郡ずつ領有しようという事なのです。


 天文二十四年四月二十日、光京は大膳が南櫓に来たら、討ち取ろうと待ち構えておりましたが、大膳は光京達の殺気を感じ取ったのか、途中で引き返し、駿河まで逃げ去って今川義元を頼り、戻ってきませんでした。


 策士であった大膳は光京達の企みを見抜いたのかもしれません。


 そしてその後、大膳は養成学校でお笑いの勉強をして、芸人としてデビューしました。


「全然違う!」


 途方もない脚色をしてのけた地の文に切れる大膳です。


「ついでに言うが、その吉本ではない!」


 まさしくついでに切れる義元です。

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