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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
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武衛様御生害の事其壱

 天文二十三年七月十二日、尾張の守護である斯波義統の嫡男である岩竜丸(後の義銀よしかね)のお供をして、腕に覚えのある若侍達が全員川狩りに出かけてしまいました。


 清洲城の守護の邸には年老いた家臣達が数名残っただけでした。


 悪い奴らが悪い事をする絶好の機会だと思う地の文です。


 坂井大膳、河尻左馬丞、織田三位は、


「時は今雨が下しる五月哉」


 和歌を詠みました。


「違う! とことん違う!」


 時代を先取りし過ぎた地の文に切れる家老ズです。


 家老ズは四方から押し寄せ、義統の邸を取り囲みました。


 表広間の入り口では、うたいの名人である何阿弥とかいう同胞衆がまさに鬼神の如き強さで戦い、比類なき手柄を立てました。


 また、狭間(弓や鉄砲を射つための穴)を守っている森刑部丞兄弟も斬りまくって、数多くの敵に傷を負わせましたが、多勢に無勢力及ばず、討ち死にしました。


 兄弟の首は柴田角内が獲りました。


 その頃、左京は呑気にも樹里の膝枕を堪能していました。

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