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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
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村木ノ取出攻めらるるの事其伍

 西の搦め手の方は、左京の叔父である光京が詰め寄り、外丸に六鹿という者が一番乗りました。


 東の大手門には水野忠元が攻め寄せていました。


 城内の駿河衆の働きも目を見張るものでしたが、左京方の兵達の勢いが勝り、城内の死傷者が次第に増えていき、無人になる箇所もあり、遂に駿河衆は降参しました。


 樹里から皆殺しを固く禁じられていた左京は、こちらも尋常ではない被害を受けているのもあり、敵方の詫びを受け入れ、戦後処理を忠元に一任し、樹里の膝枕を目指そうとしたのですが、さすがに総大将がすぐに戦場を去ってしまう訳にもいきません。


 左京のお小姓衆もその多くが負傷あるいは討ち死にし、目も当てられない状態です。


 辰の刻(午前八時前後)から攻め始めて、さるの下刻まで攻め続けて、思った通りの決着をみたのでした。


 元猿だけに申の刻とは素晴らしいと思う地の文です。


「うるさい!」


 チャチャを入れるのが何よりも大好きな地の文に切れる左京です。

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