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山城道三と左京御参会の事其肆
噂通りのふざけた格好をしてきた左京を見て道三のお付きの者は、
「それ見た事か」
口々に言い合いました。道三も左京のうつけぶりがまさに本物であったと思い始めてしまいました。
ところが、左京は寺に着くなり、周囲を屏風で囲わせ、髪を整え、どこに隠し持っていたのか、褐色の長袴を履き、知らぬ間に作らせていた見事な拵えの小刀を差しました。
猿のできあがりです。
「違う!」
どうしても西遊記を復活させたい地の文に左京は切れました。
それを見た道三のお付きの者達はあまりの変貌ぶりに肝を潰し、あのうつけぶりは全て偽りであったかと思い知らされました。
(どうだ、参ったか、美濃の蝮め)
左京はドヤ顔で御堂へ進みました。でも、本当は全部正室の樹里の授けた知恵なのは内緒です。
「頼むから内緒にしてくれよ!」
すぐにバラしてしまう地の文に血の涙を流して切れる左京です。
「そうなんですか」
遥か尾張の地で夫の左京の晴れ姿を思い浮かべる樹里です。




