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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
34/2152

簗田弥次郎右衛門御忠節の事其弐

 簗田弥次郎右衛門は、自分の身を捧げて、那古野弥五郎に取り入りました。

 

 本当は実際に弥五郎に惚れていたのは内緒です。


「当時はそれが普通だったんだよ!」


 地の文の下衆の極みな憶測に切れる弥次郎右衛門です。


 確かに当時は、女も男もという武将は多かったようです。


 これ以上突き詰めると場所を変えなければならなくなると思う地の文です。


 弥次郎右衛門は弥五郎に、


「清洲城内を分裂させて上総介様のお味方になり、知行をお増やしなさい」


 囁き戦法で勧誘しました。要するに元猿の手下になれという事です。


「だから、前々世の話はやめろ!」


 粘着質な地の文に切れる左京です。


 弥五郎を垂らし込んだ弥次郎右衛門は、更に別の家老達も抱き込み、欲に駆られた者達が次々に賛同しました。


 首尾よく事をなした弥次郎右衛門は左京のところに戻り「ご忠節を尽くします」との趣旨を内密に申し入れました。


 左京は思った以上に事が上手く運んだので、小躍りして喜びました。

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