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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
32/2152

深田松葉両城手かはりの事其肆

 深田城からは三十町(およそ三・三キロメートル)ほど出張ってきて、三本木の町に布陣しました。


 これといって要害となるものがないところであったので、あっという間に攻め落とされました。


 伊東弥三郎、小坂井久蔵など屈強の武将達三十人程が討ち死しました。


 そして、勢いを増した左京の軍は、深田城と松葉城に攻め寄せました。


 敵はたちどころに降参して城を明け渡し、清洲へと逃げ帰りました。


 上総介左京は、清洲勢を押し詰めて、田畑の農作物を全て刈り取ってしまいました。


 それが、城の取り合いの始まりとなりました。


「そうなんですか」


 左京の正室の樹里は左京の勝ちを知り、笑顔全開で応じました。


(早く帰って、樹里様の膝枕で一眠りしたい)


 左京は気持ち悪い笑みを浮かべ、馬を走らせました。


 スケベ根性丸出しだと思う地の文です。


「うるさい!」


 はっきりものを言う地の文に切れる左京です。


「左京様、お気張りなさいませ」


 樹里は笑顔全開で言いました。

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