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左京、樹里との離別を惜しむ事其肆
樹里は左大臣亜京の前に座り、
「どうか息災でいてください」
亜京は顔を赤らめて、
「はい」
頷きました。すると渚が、
「勘九郎、本当の事を言っていいんだよ」
亜京はハッとして渚を見ました。
「いいんだよ」
渚は微笑んで言いました。亜京は小さく頷いてから樹里を見て、
「ずっとお慕い申しておりました、樹里様」
樹里は笑顔全開で、
「存じておりましたよ。忝う存じます」
亜京は顔を真っ赤にして俯きました。
「瑠里達を頼みます」
樹里は亜京の右手を取りました。
「はい」
亜京は涙ぐんで応じました。
「じゃあね、亜京ちゃん」
由里が言いました。璃里は涙目になりながら、亜京に頷きました。
「それでは」
樹里達は渚を伴い、式神で飛び去りました。
「つらいなあ」
渚が言いました。
「そうだね」
由里も涙ぐんでいます。鬼の目にも涙だと思う地の文です。
「うるさいよ!」
細かい地の文に切れる由里です。
「そうなんですか」
樹里はそれにも関わらず笑顔全開で応じました。




