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安土の陣の事其玖
徳川家康は兵達に激怒しています。
「撃たぬなら、貴様らは打ち首だ! 覚悟致せ!」
家康は大刀を馬から降りて大刀を抜きました。
鉄砲隊の兵達はそれを見てざわつきました。
「殿!」
その時、阿茶の局が叫び、ある方角を指差しました。
「む?」
家康は妙に思ってそちらを見ました。
「はあ!」
武田信濃守勝頼、上杉越後守景勝、真田安房守昌幸が馬を駆り、突進して来ていました。
「徳川家康! 覚悟致せ!」
勝頼が大刀を振り上げて叫びました。
「阿茶の局! 諸悪の根源め! 退治てくれる!」
続いて景勝が叫びました。
「何!?」
阿茶は自分が狙われていると思っていなかったのか、目を見開きました。
「殿!」
そこへ本多平八郎忠勝が割り込みました。
「ここより先はこの平八郎が行かさぬ!」
忠勝は蜻蛉切を振り回しました。
「父上、邪魔立て致しますな!」
そこへ更に稲姫が割り込みました。
「ええい!」
家康は馬にまたがると、逃げ出しました。阿茶がそれを追いかけました。




