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安土の陣の事其弐
阿茶の局が徳川家康を連れ去ったので、左京は慌てました。
「彼奴ら、安土へ向かったのでは?」
左京は震えながら樹里に尋ねました。
「そうですね」
樹里が笑顔全開で応じたので、左京は引きつり全開です。
「想定内だよ、左京ちゃん」
由里がウィンクして言ったので、左京は更に顔を引きつらせ、横にいた璃里は半目で由里を見ました。
「家康ちゃんは阿茶の局に取り込まれているようだね。縁を切らせないと、終わりだよ」
由里は愉快そうに言いました。
安土城下にはすでに誰もいません。残っているのはくノ一達と小者だけです。
「僕は小者じゃないにゃん!」
また地の文に切れる吏津玖です。
「思ったより兵が多いですね」
藍が言いました。
「何の。蹴散らしてくれる!」
鎧兜に身を包んだ細川与一郎忠興が言いました。
「婿殿、蹴散らしてはならぬ。あくまで敵は家康と阿茶の局のみだ」
同じく鎧兜姿の明智惟任日向守光秀が言いました。
「はは」
忠興は畏まって応じました。




