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物の怪、最後の争いを仕掛ける事其弐拾弐
左京は樹里の言葉に目を見開きました。
(岐阜も攻められるのか?)
元猿は逃げようと思いました。
「前々世の話はやめろ!」
心の中を暴露してしまった地の文に切れる左京です。
「安土の守りは日向守と娘婿の細川与一郎忠興で十分でしょう」
樹里は笑顔全開で言いました。
「岐阜には武田信濃守勝頼、上杉越後守景勝を守りとし、そして内府の浜松城を北条相模守氏直が攻めます」
樹里の更なる言葉に左京は希望を見出しました。
(ああ、何と俺は家臣に恵まれておるのだ)
嬉し涙を流す左京ですが、全て樹里の家臣だと思う地の文です。
「かはあ……」
痛いところを突かれて悶絶する左京です。
「北条が背後から来るのではないか?」
徳川内府家康はそれを恐れていましたが、
「大事ありませぬ。何のために督姫様を嫁がせたのです?」
阿茶の局が言いました。
「そうであったな」
家康は関東を手に入れるために娘を氏直の正室としたのでした。
歴史が歪んできたと思う地の文です。




