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備後守病死の事其参
織田等京の葬儀は盛大で、焼香の長い列ができました。
嫡男である左京はしかめっ面をしていつも通りの姿で、長刀と脇差を縄で巻き、髪は相変わらず茶筅に立てて、袴も履いていません。
それでは安心できませんね。
「ギャグじゃねえよ!」
時代考証を無視した地の文に時代を超えて切れる左京です。
(何故もう少し生きてくださらなかったのです!?)
左京は祭壇に飾られた等京の遺影を睨みつけました。
「この時代に遺影があるか!」
時代考証を続けて無視する地の文にもう一度切れる左京です。
「おお!」
周囲の者が目を見張りました。左京は抹香を鷲掴みにして、祭壇に投げつけたのです。
(何と嘆かわしい事を!)
それを見ていたお付きの家老衆は肩を落としました。
左京はそのまま立ち去りました。続いて焼香をしたのは、弟の行京です。
行京は仕来り通りに焼香をすませ、列席した人達の賞賛の眼差しを受けました。
「これで跡目は決まりであろう」
皆がそう思いました。




