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観世大夫、金春大夫立合に御能の事
四月十四日、公方様の御所が落成したお祝いとして、観世大夫、今春大夫が立ち会っての能の会が催されました。
一番 玉の井 観世
二番 三輪 今春
三番 張良 観世
四番 芦刈 今春
五番 松風 観世
六番 紅葉狩 今春
七番 融 観世
地謡は生駒外記、野尻清介。大鼓は伊徳高安、大蔵虎家、彦三郎。小鼓は彦右衛門、日吉孫一郎、久二郎、三蔵。太鼓は又二郎、与左衛門。笛は伊藤宗十郎、春日与左衛門でした。
見物人は飛騨の国司の姉小路中納言卿、伊勢の国司の北畠中将卿、三河の徳川家康、畠山昭高、一色義道、三好義継、松永弾正久秀。
他に摂家、清華家の人々、畿内、隣国の大名、武将などが集まり、晴れがましく見物しました。
左京は将軍に、
「高い官位に就いたら如何か。朝廷に取り次ぎますぞ」
しかし元猿なので受けませんでした。
「それは関わりない!」
前々世の話を持ち出す地の文に切れる左京です。
左京は三献の礼を受けた上、将軍自らのお酌を受けました。
この上なく名誉な事でした。




