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公方御構御普請の事其壱

 樹里の提言を受けた左京は、


「これからは、公方様の正式な御所がない事には始まらぬ」


 尾張、美濃、近江、伊勢、三河、五畿内、若狭、丹後、丹波、播磨十四カ国の大名達を都に呼び寄せ、二条の古い邸(斯波武衛家の跡を継いだ斯波義廉の邸)の堀を広げさせました。


 永禄十二年二月二十七日、辰の一点(午前七時半頃)に御鍬始めの儀式を行いました。


 四方に石垣を内外から高く築きました。


 大工奉行には村井民部貞勝、島田所之助秀満が就きました。


 洛中洛外の鍛冶、大工、製材業者を集め、隣国隣郷から材木を取り寄せ、それぞれに担当を決め、怠りなく進めさせたので、程なくできあがりました。


(そうだよ、左京。どんどん天下取りを進めろ。最後に笑うのはこの俺だからさ)


 工事の進み具合を見ている左京を物陰から見ているのは通称「馬」の木下馨です。


「違う!」


 意図的に間違えた地の文に切れる馨です。


 その馨を見ていたくノ一の三人は目配せし合い、消えました。

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