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御後巻左京御入洛の事其壱
一月六日、美濃の国の岐阜城に三人のくノ一が到着しました。その日は稀に見る大雪でした。
三人は三好勢の御所急襲を伝え、更に守備隊の活躍も伝えました。
「そうなんですか」
樹里はそのように緊迫した話にも笑顔全開で応じました。
時を移さずに上洛するべき旨を配下に告げ、一騎だけでも大雪の中を突き進む覚悟で、早くも馬にまたがる元猿です。
「前々世の話はやめろと申したであろう!」
どこまでもしつこい地の文に切れる左京です。
馬借の者達が荷物を馬に着けながら、喧嘩を始めました。
左京は馬から降り、どの荷物も確かめ、
「皆同じ重さだ。急げ」
そう命じました。
これは、荷物担当の奉行に依怙贔屓でもあるのかと思ってした事でした。
とにかく雪の量が多く、気象庁が「百年に一度の大雪」と発表した程でした。
「きしょうちょうとは何だ!?」
意味不明の事を言った地の文に切れる左京です。失礼致しました。
下働きの者の中には凍え死んだ者もいたのでした。




