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左京入洛十余日の内に五畿内隣国仰付けられ、征夷将軍に備へらるるの事其弐
昨年、左京は美濃を支配したので、このたびの合戦では、美濃衆を先鋒として派遣するだろうと、美濃の者達は覚悟しておりましたが、そんな事は関係なく、左京はお馬廻り衆だけで箕作山を攻めました。
美濃三人衆の稲葉伊予守一鉄、氏家卜全、安藤伊賀守守就は、
「思っても見なかった事だ」
不思議に思ったそうです。
この采配も樹里の発案なのは、明確にしておきたい地の文です。
「明確にするんかい!」
開き直った地の文に切れる左京です。
その夜は、左京は箕作山に居陣し、翌日、六角義賢の居城である観音寺山へ攻め上る算段でしたが、六角父子はすでに逃亡した後でした。
十三日に観音寺山を制圧し、残党が降参したので、人質を取り、しっかりと監視させて、城はそのままにしました。
近江一国を平定したので、義昭に固く約束した通り、お迎えとして、不破河内守光治を義昭の待つ立正寺に遣わしました。
「そうなんですか」
それを聞いた樹里は笑顔全開で応じました。




