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公方様御生害の事其弐
勢いに乗る三好方は、二番目の弟の鹿苑院周暠にも、平田和泉を追っ手として差し向け、周暠も義輝公とほぼ同じ頃に自害しました。
供回りの者達がことごとく逃げてしまったにも関わらず、日頃から目をかけられていた美濃屋小四郎は、若干十五、六でしたが、追っ手の大将である平田和泉を斬り殺し、主君の後を追うように切腹しました。
その高名には比べられるものはない程でした。
将軍家の破滅は、天下万民の悲嘆、これに過ぎるものはありませんでした。
義輝公の一族の最期は、細大漏らさず、くノ一の三人によって、樹里の元に知らされました。
「そうか」
上辺だけの男である左京は、さも悲しそうに応じました。
「心の底から悲しんでるよ!」
口さがない地の文に涙を流して切れる左京です。
「そうなんですか」
樹里も真顔全開で応じました。
「ご苦労でした。引き続き、都の事、調べてください」
樹里は笑顔全開で告げました。
「は!」
くノ一はスウッと姿を消しました。




