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公方様御憑み百ヶ日の内に天下仰付けられ候事其弐
万事調子がいい性格の足利義昭はくノ一の葵の囁きに乗せられ、左京と繋がりがある細川藤孝と和田惟政を呼び寄せました。
「余は上総介左京を頼りに思っておると申し伝えよ」
立場がよくわかっていない義昭は、あくまで上から目線で言いました。
「はは!」
それでも、樹里によく言い含められている藤孝と惟政は大仰に応じました。
「義栄はそう長くはない。さすれば、余がまさに公方となるのだ。左京にはその支えとなる事を命ずる」
将軍に就いたかの如く振舞う義昭を白い目で見る藤孝と惟政です。
(お前もそう長くはないぞ)
二人は思いました。
その後、義昭は自分の目論見通り、上洛した左京によって、第十五代将軍に就任する事ができました。
左京が越前の国に迎えの者を派遣して百日も経たないうちでした。
それは紛れもなく、全てを見通して采配した樹里の手柄でした。
「俺の手柄にしといてくれよ!」
内幕を全部バラしてしまう地の文に泣きながら抗議する左京です。




