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御徒町樹里の信長公記(四百文字小説)  作者: 神村 律子
首巻 是は左京御入洛なき以前の双紙なり
156/2152

公方様御憑み百ヶ日の内に天下仰付けられ候事其弐

 万事調子がいい性格の足利義昭はくノ一の葵の囁きに乗せられ、左京と繋がりがある細川藤孝と和田惟政を呼び寄せました。


「余は上総介左京を頼りに思っておると申し伝えよ」


 立場がよくわかっていない義昭は、あくまで上から目線で言いました。


「はは!」


 それでも、樹里によく言い含められている藤孝と惟政は大仰に応じました。


「義栄はそう長くはない。さすれば、余がまさに公方となるのだ。左京にはその支えとなる事を命ずる」


 将軍に就いたかの如く振舞う義昭を白い目で見る藤孝と惟政です。


(お前もそう長くはないぞ)


 二人は思いました。


 その後、義昭は自分の目論見通り、上洛した左京によって、第十五代将軍に就任する事ができました。


 左京が越前の国に迎えの者を派遣して百日も経たないうちでした。


 それは紛れもなく、全てを見通して采配した樹里の手柄でした。


「俺の手柄にしといてくれよ!」


 内幕を全部バラしてしまう地の文に泣きながら抗議する左京です。

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