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いなは山御取り候事其弐
人質も到着していないにも関わらず、左京は突然軍勢を率い、稲葉山の並びにある瑞竜寺山に駆け上がりました。
「一体どうした事だ? あれは敵か味方か?」
美濃勢が混乱しているうちに素早く町に火を放ち、たちどころに稲葉山城を裸城にしてしまいました。
その日はいつにも増して風が吹いていました。
翌日、普請の分担を指示し、稲葉山城の四方に鹿垣を結い回して囲みました。
そこへ美濃三人衆が駆けつけ、事態に酷く驚きながらも、左京にお礼を言いました。
左京は、このように非常に軽々と何事もやってのけてしまうのでしたが、樹里が指示したのは内緒にしておきたいと思う地の文です。
「しておけよ!」
結局は白日の下に曝してしまう地の文に切れる左京です。
(星一族はいずこへ?)
くノ一の三人は周囲を探りましたが、星一族はいませんでした。
「星一族は美濃勢を見限ったようです」
首領の葵が樹里に伝えました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じました。




